刻の学園

□転校生と兄。
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「はい。みんな揃ったみたいだね。」
と、ベック先生は笑顔になる。
視線を動かすと、ミノリとアランの姿も確認できたアランは誰かと話しているようだが、ミノリはこちらに気付いて手をひらひらり、悪戯っぽい笑みを浮かべて振っていた。
機嫌は直ったらしい。
「今日の授業はテストをさせてもらうヨ。」
「て、テスト〜!?」
「!?」
周りの生徒が一斉に同じタイミングで同じ言葉を言ったことに驚く。誰かの背中に隠れたいところだが、誰の背中にも隠れられない。
「いいねえ。みんな、息ピッタリだネ。テストの内容は、マラソンだヨ。」


―――確かに息はピッタリでしたけどそれで片付けちゃっていいんでしょうか…?


そして、マラソン。
走るのは苦手ではないが、あまり好きではない。
けれど、テストだし、授業だからやらなくてはならない様だ。
「マラソンか……。冒険者は体が資本と言う事だな?」
と、やたらと体格のいいディアボロスの男子生徒が言った。
成程、体力的にちゃんと鍛えなさい、と。
「だが、オレには必要ない。さぁ、この美しい筋肉を見てk」
「残念だけど、このテストの狙いはそこじゃないヨ。」
どうやら違うらしいです。
ふと、視線をずらすとアランが笑いを堪えて腹部を抑えているのが見えた。
「勿論、ただのマラソンじゃないヨ。走るのは塹壕オブリオンの中だからネ!!」
ダンジョンの中をマラソン…敵を薙ぎ払いながら進む事になりそうだ。
そんなことは自分に出来ないけど。
「一番奥にコゴロウ先生が待ってるから、スタンプを貰ったら、戻ってきて報告してネ。」
と、先生は満面の笑みだ。
しかしその先を言おうとした瞬間さらに笑みになる。
何故か恐ろしいと感じる。
「制限時間は設定してるけど教えないヨ。一時間かもしれないし、丸一日かもしれない。でも、なるべく早く動いた方がいいヨ。」
制限時間切れになったらどうなるのかは恐ろしいので考えないようにした。
何故なら、
「一等賞には花丸を上げるからネ。遅れた人には…ぷぷっ。」


―――ぷぷって何ですか、なぜそんな怪しい笑みを浮かべてるんですか


「まぁ、遅れないように頑張ってよ。」
頑張らないと何をされるのかわからない。
生徒達の心はひとつにまとまった。
制限時間内に必ず帰り着くと。
「先生。まだテストの狙いというのを説明してもらっていません。」
と、手を挙げたのはマープルだった。
それは考えていなかった。
私は質問の答えを聞こうとメモを持ってベック先生を見る。
先生は笑いながら言った。
「それを考えるのもテストの一環だヨ。ちなみにもう時間を計り始めてるからネ。」


―――!?


マープルは驚いた様な顔になった。
恐らく私も同じ顔をしているだろう。
ミノリを見た、ニヤニヤしている。
アランを見た、ポカーンとしている。
周りを見た。


―――早いですね。


既にいなかった。
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