刻の学園

□転校生と先生。
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―――月。


空に浮かぶそれを見つめた。
目を閉じ、今までの事を思い返す。
「役者が一人足りない…でも、これ以上は巻き戻せない……か。」
だからこそ、呼ばれた。
その為に、呼ばれた。
この世界に、巻き戻している青年の変わりに。
しかし、あの青年の代わりを務めるのはすこし無理がある。
性格的な意味で。
だからこそ、運命を弄り、あの3人で一人分を補った。


―――それでも、1人掴み損ねた…アイツの存在は世界にとってどれだけ重要だったんだか。


ふと、近場に気配を感じる。
その気配に振り返れば、今居る朽ちかけた遺跡の様な場所の入口の蔦が枯れている事に気付く。
そして、そこに紫帯びた水色が現れた。
水色の髪は、とある知り合いを思い出す。
しかし今は関係ない、と振り払った。
「…先生。夜にこんな場所に来るのは危ないですよ。」
と、微笑みながらいう青年。
影が浮かぶその顔を見る。
「……確かに、危ないな。けれどそれはお前も同じだろう。」
青年の顔は影を帯びたままだ。
月で照らされる物理的な影ではなく、心にある、精神的な影。
過去に有る、精神的な、影。

青年は答えず、一度目を閉じ、神妙な顔を作った。

「先生は、黒い月をご存知ですか。」


その問に答える。
「ああ、知っている。」

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