刻の学園

□転校生sideL
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目を開くと、人の顔が映った。
「よかった、気が付いた。」


―――紫色。


紫色の目を持つ人は少ないのだそうだ。
赤と青の混合の反射で現れる。
アルビノや、肌の白い人に現れるらしい。
目の前の人の目は紫色。
でも、髪は白くない。
でも、肌は白い。
「大丈夫?」
「…はい。」
私はその人の問に頷き、立ち上がる。
「…なら、よかった。」
辺りを見回すと、オイニタタンと言う狐型の魔物が横たわっていた。
どうやら倒してもらってしまったらしい。
「キミは…たしか生徒会長さん、だね?」
「…恥ずかしい所を見せてしまいましたが…そうです。」
少し落ち込む、初対面でこの状態とは。
そしてふと、先生の用事を思い出す。
目の前の人には見覚えが無い。
「あの、キュービットさんですか?」
「そうだよ。僕がキュービットだ。」
キュービットさんはこくりと頷いた。
そして、キュービットさんは首を傾げる。
おそらく、何故私が此処に居るのか不思議に思っているのだろう。
「あの、コゴロウ先生が、心配してましたよ。一匹狼気質が…どうとか…って。」
まだそこまで見知らぬ相手に緊張しつつ、身振り手振りを付け加える。
「…コゴロウ先生がぼくを?ぼくが一匹狼?」
キュービットさんは不思議そうな顔をしながら、首を傾げる。
心配される理由があまりわかっていないような、そんな顔だ。
そして、ふふ、と微笑み。
「心配ないよ。僕は上手くやっている。クラスメイトとも仲良くするよ。約束しよう。」
と、キュービットさんは居う。
だが、何故だろうか、その微笑みが不安に感じる。
不安定な、そんな感覚。
「こんな所まで態々済まなかったね。ありがとう、生徒会長さん。…名前は?」
こんな所、と言われれば私は身を縮めた。
気絶し、挙句助けられるとは。
名前を尋ねられ、私は「レイ、です。」といつもの通りに答えた。
「…レイ。いい名前だね。ところでキミは、黒い月というのを知っているかい?」
名前を褒められた後突然質問されて驚く。
私はメモ帳をめくったり思い出そうと頑張ったりしてみたものの、何も引っかからなかった。
ふるふると首を横に振る。
「…そうか、知らないか。では、世界の卵は?或いは繭でもいい。」
そんな大層なものは聞いたら忘れ無いだろうから聞いてないだろう。
思い当たる節が無くて首を横に振った。
「…いや、知らないならいいんだ。気にしないで。」
と、キュービットさんは何処か残念そうに言った。
「……最後にもう一つだけ。鍵は?」
私は首を傾げる。
学生寮の鍵と生徒会長の鍵くらいしか持ってい無いが、どちらかが必要なのだろうか?
どちらかと言えばどちらも必要とされたくないが。
「知らない、か。…いや。すまない。もう学園に戻るよ。どうやらここには、心配症が多いらしいからね。キミは帰還札を使うといいよ。」
私は立ち去るキュービットさんの背中を見送りつつ、帰還札を取り出した。
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