遠い日の約束〜完結〜

□三十六章
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テンテンテンテン…

夜になり、賑やかなお囃子が鳴り響き、お酒を飲んで笑う男達やはしゃぐ女達の声が屋敷に響き渡っていた。

「柱間殿」
そう言われ顔を上げると、柱間の前に酒を持った男が上機嫌に立っていた。
昼過ぎの会合でやよいを誘った火の国の大名だった。
「どうぞ此方へ」
「では遠慮なく」
二人は盃をかわし互いに飲んだ。
「うむ、うまいな!この酒は」
「代々千手に納めて頂いている珍しい酒です。よろしければ持ち帰りできますが、いかがです?」
「かたじけない。一本頂こう」
それからは二人でたわいのない話をしていた。
「そういえば、昼の会合ではうちはマダラ殿に御会いできなかったのだが…やよい殿もいずこに?」
「マダラは多忙でしてな。この席にはくるはず…お!!」
マダラ!と柱間が手招きをしマダラを呼び、マダラもそれに気づき柱間の元へ歩み寄り、横へ静かに腰を下ろした。
「いや〜 、うちはの頭領に千手の頭領がこうして揃うといささか迫力があるな!!」
いきなり豪快に笑う男に柱間は愛想笑いし、マダラは無表情だった。
それに気づき柱間はマダラの脇を軽く肘で小突き、マダラは柱間に鋭い視線を放った。
「(マダラ!笑顔ぞ!!)」
「(黙れ、死ね)」
「Σガーン」
落ち込む柱間を余所に大名は話始めた。
「昼の会合で、この里も大きくなったから代表者、火影を誰にするかと柱間殿と話をしていたんだが…マダラ殿は如何様に思う?」
「…柱間が適任かと思っている」
その言葉に柱間がマダラを勢いよく見た。柱間の非難の眼差しを無視し、手にしていた酒を煽った。
「ふむ…柱間殿はマダラ殿を、マダラ殿は柱間殿をか…いやはやどうするべきか…」

突然お囃子の音色が変わり、襖が静かに開いた。
綺麗な着物に化粧を施された女性が静かに部屋に入り、マダラ達に手を床に付き頭を下げた。
あまりの女性の美しさに皆が息を飲む。
テテン…テテン…
お琴の繊細な音に合わせ、女は優雅に妖艶な笑みで舞う。
大名は勿論柱間も釘付けになった。
マダラは酒からちらりと女を見、女もマダラを見た。
互いにうっすら微笑む。
女は嬉しそうに舞続けた。

舞が終わると割れんばかりの拍手が上がり、女は再度両手を付き頭を下げ、マダラ達の所へ向かった。
再びお囃子が鳴り響く。
皆はチラチラ女の方に視線を向けていた。

「失礼致します」
「!!やよいか!?」
「なんと!」
「あら、マダラは気付いてくれていたのに…」
「す…すまない、あまりにも」
「あまりにも?」
「美し過ぎて気付かなかったんぞ…」
「普段美しくなくてすみませんねー」
「いや…そうじゃなくてだな」
「柱間、もう黙れ。やよいもだ」
「むー」
「やよいすまん…」ズーン
「やよい殿の舞実に美しかった!また見せて頂きたいぐらいだ!!」
「ありがとうございます!!」
やよいは三人に酒を注ぎ、後は様子を見ながら大名のみに注ぎ始めた。

時刻が次の日になった頃、屋敷の中はドンチャン騒ぎでカオスと化していた。
よくみれば、大名も大分酔いがきているのか顔は赤く、目が座っている。
やよいは少し服をはだけさせ、大名にそっと体を寄せた。
大名はやよいの仕草が嬉しいのか、自分の方へやよいを抱き寄せた。
お酒を注ぎながら、やよいは甘える声で大名に尋ねた。
「大名様、この度どうしても御願いしたいことがございますの…」
「ぬ!?聞いてやらんでもない。話せ」
「大名様、この里はまだ出来て間もなく、赤ん坊も同然。赤ん坊とは何かとお金がかかるものです。大名様のお力添えを頂きたいのですが…」
「ふむ…では四割でどうかな?」
やよいは微笑み男の胸元をツッ…と指で撫でる。
「ふ…三割にしよう」
「ありがとうございます!!では、此方に署名を…」
「しかし」
「!ぁっ!!」
「「!!」」
やよいは腕を引かれ男に倒れ込み、男はやよいを自分の下半身を跨がせるような体勢にし、やよいのお尻を撫でる。
やよいはお尻も勿論、下半身に当たっている物に鳥肌が立ち、嫌悪感で顔が歪みそうになった。
ぶん殴りたい気持ちを抑え全力の笑顔で平静を保つ。
「只とはいかん。マダラ殿…やよいをお借りできるか?」
「………やよい」
「では、此方に署名を御願い致します。私は湯あみを済ませて部屋にてお待ちしております。」
やよいは立ち上がり、部屋を後にした。
署名を終え、巻物を柱間に渡し席を立った。
「今宵は楽しませて貰おう、悪く思わないでくれ、マダラ殿」
「……」
部屋を出ていく男をこれでもかと言うぐらい射殺さんばかりに睨み、目を深紅にさせていたマダラを柱間は宥めていた。
「こちらは上手くいったが…やよいは大丈夫かの?」
「てめぇが蒔いた種だろうが…この借りはでかいぞ、柱間」
「そう怒るな、これも里の為ぞ」
「はっ…くだらねぇな」
マダラは席を立ち部屋からでて行った。
柱間は巻物を懐に入れ、酒に口をつけた。

「(やよい…)」


ーーー
「(確かヒカクさんは此方の部屋だったはず)」
やよいは急ぎヒカクの元へ走っていたが、何かにぶつかり転びそうになった。
「やよい殿、どうされたかな?」
「!!」
予想外の男の行動の速さにやよいは固まっていた。
「まさか、逃げようなど考えてはいまい?」
男はやよいの腕を掴みその場に立たすが、些か腕が痛くやよいは僅かに顔を歪めた。
「逃げるも何も…貴方様を待たせては行けないと急ぎお風呂へ向かっていたのです。咎められては傷つきますわ…」
明らかに傷ついたと言わんばかりにやよいは着物の裾で顔を覆う。勿論嘘だ。
「それはすまない。どうか気を悪くしないでくれ」
「では、湯あみをしてきます」
やよいは男の前を通りすぎようとした瞬間、腕を引かれ近くの部屋に放り込まれた。
布団の感覚にやよいは急ぎ体を起こそうとしたが、着物が邪魔して動けず、うつぶせのままやよいは男に組み敷かれていた。

「風呂なんぞ後でいい」
「汗て体も汚いですか、らっ!?」
男は乱暴に着物を左右にずらし、やよいの白い背中をなめ上げた。

気持ち悪い!!

「嫌!!やだっ待って!嫌だ!!」
「大人しくしなさい。約束を反古にしてもいいのかね?」
「っ!」
「いい子だ…」
男はやよいに覆い被さり、下半身を擦り付け、やよいは体が強張った。

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!
誰か!!

「マダラ」

「大名様?やよいです…入って宜しいですか」
「「!」」
襖が静かに開けられた先にやよいが立っていた。
「これは…どういう事だ?やよい殿が二人?」
組み敷かれていたやよいは服を体に寄せ、立っていたやよいは大名に甘えるように凭れかかる。
「どちらでもいいではありませんか…さあ、大名様。楽しみましょう」
顔を大名に近づけ妖艶に微笑む。
「あ…あぁ…そ…だな」
大名がグラリと体を傾け布団に倒れた。
深紅の目をしたやよいはやよいに安心させるように微笑むとボフンと音を立て消え、変わりにヒカクが現れた。

「遅くなりすみません。やよい大丈夫ですか?」
「平気…ありがとう、助かったわ」
平気だとやよいは言ったが僅かにカタカタと体が震えていた。
ヒカクは安心させるようにやよいを優しく抱き締めると、マダラが現れた。
「間に合ったな、大丈夫か?やよい」
「大丈夫…」
やよいはヒカクから離れマダラに抱きつき、マダラもやよいを抱き締めた。
マダラの匂いと暖かさに安堵する。
「御苦労だったな、ヒカク」
「いえ、間に合って良かったです」
ヒカクは宴会場へと向かって行った。

「…何もされてないか?」
「背中を舐められた…」
「風呂に行くぞ」
「へ!?」
マダラはやよいの着物を脱がせ大名が寝ている部屋に置き、肌着姿のやよいを抱き上げ風呂に向かった。

「あの…マダラ」
「安心しろ。俺がしっかり洗ってやる」
「!」

次の日、疲れきり声を枯らし項垂れるやよいを余所に、御機嫌のマダラと、これまた里の為に上手くいったと御機嫌の千手兄弟がいたとか。
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