遠い日の約束〜完結〜

□十四章
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やよいは自分がよく知っている所に現れた。あたりを見ると、自分の家近くの川の上に佇んでいた。

一歩一歩岸に向かう足が重い。
泣いて赤く腫れ上がった目からボロボロと大粒の涙が溢れながれる。

これが夢であってほしい。
マダラや柱間に夢だと言ってほしい。

「キュー」
足下に綺麗な毛並みの狐が心配そうにやよいを見上げる。
やよいは狐を抱き締めて、声に出して泣いた。

あれからどれくらいたったか…
悲しいけど涙が出ない、目が痛々しく腫れていた。
気づけば外は雲っていた。
何も考えず、ふらりとあの場所へ向かった。

いつもの川だった。しかし、そこにはいつもの三人の声が聞こえない。
やよいは只ずっとそこに立っていた。
やがて、雨が降り始め、きつくなる。
しかし、やよいは動かなかった。


扉間はあの三人がいた所を見に行った。
父には魚を取ってくると言った。兄者も行くと言ったが、前のこともあり、父に止められた。
「扉間だけ…ずるいぞ…」
「自業自得だろう…」
父が許しても、最初から兄者を絶対連れて行かないつもりだった。

川にきた時には雨が降り始めていた。きつくなる前に帰ろうとした。
「…!あいつ…」
いたのだ。白い服を着て、足下は裸足でどろどろに汚れ、全身びしょ濡れで立っていた。顔が髪でよく見えない。
扉間は近くに行った。

「…居なくなっちゃった…みんな」
やよいは振り向かず、前を向いたまま言った。
「楽しかった…三人で今まで…たくさん夢を話した。絶対…強くなって叶えてみせるって……なのに」

なんでこうなったの……

「……これが、現実だ。…あいつも兄者もお前も考えが甘い「なら!!」」
「なら!!どうしたらいいの!?相手が死に絶えるまで殺しあわなきゃいけないの?殺して殺されて、このままじゃ何も変わらないわ!!
私はあなたみたいに諦めたくない!!」

「なら…試してやる」

お前がその夢を語る資格があるか…

扉間はやよいにクナイを素早く投げつける。
「!!」
寸での所でかわすが、扉間がその隙にやよいに接近する。やよいは扉間の本気を感じ、扉間の蹴りを受け流しながら距離をとる。
しかし、扉間が素早く次を仕掛けてきて間合いが取れず、押される一方だった。
「所詮口先だけだな…」

やよいは息が上がってあちこち傷だらけだった。白い服は所々血がにじみ出て足は爪も剥がれていた。
激痛に耐えながら、扉間を睨み付ける。
来る!!
扉間が身構える前に、やよいが扉間に向かって結晶を繰り出した。
「!!晶遁だと…」
扉間が回避したからか串刺しは免れた。が、両頬、顎を負傷した。
やよいはその事に動揺した。相手を傷つけたのは初めてだった。

扉間がやよいの動揺した隙を狙いやよいに迫る。やよいも気付き、素早く水の壁を作る。

雨がザーザーと叩きつけていた。

やよいは背中を川につけ、扉間はやよいに馬乗りになり刀を首に突きつけていた。

「…殺さないの?」
「…殺されたいのか?」
「…そうかもしれない…」
「……そうか」

扉間はやよいから体を起こし刀をしまった。
「………!!?」
扉間がやよいを抱き上げ、駆けていく。
やよいはなにがなんだかんだかわからず扉間を見上げた。
やよいが何でと言おうとした。
「お前もあいつも、兄者も…まだ諦めてはいないだろう…」
俺もだ…

やよいは目を見開き扉間を見る。
扉間も同じ夢を持っていたのだ…
そして、遠回しに簡単に諦めるなと言ってくれてる気がして、やよいは扉間の服を掴み、声を殺して泣いた…

ありがとう…
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