遠い日の約束〜完結〜
□十七章
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「やよい…久し振りだね」
「タジマさん…思い出したの?どうやって…」
「最初は忘れていたよ…でも、徐々に思い出した。やよいはまだチャクラコントロールが上手くできてなかったからか中途半端にかかった感じでね…」
きっと仏間もそうだろう…
「マダラは…イズナはどうですか?」
「気になるか?」
「大切な友達です…」
「…マダラとイズナは思い出せないみたいでな…しかし、思い出そうとしてるよ…」
二人は今は無事だ…
タジマの言葉を聞いて安心した。
「やよい…その子を渡しなさい」
タジマは目を赤くしやよいに近づく…
嫌な予感がする…
「何故ですか?この子は子供で生きてます」
「敵である千手を私が逃がすとでも?子供であろうと女であろうと、武器を持てば敵。」
「本気ですか?」
タジマは刀を抜きさらに近づく。
やよいは喉がカラカラだった…
本気でこの子を殺す気だ…
させてなるものか…
やよいは子供を急いで担ぐ。
後退りし間合いをとる…
「もうこんな悲しいことやめませんか…傷つきあい、大切な人が死んでいくなんて…こんな事間違ってる!!」
「…私も……やよいの立場なら一緒の事を思っただろうね…しかし、もう私は…」
戻れない…一族を守らなくてはいけないから…
やよいは顔を歪ませた。
そんなに悲しい目をしているのに…なぜ…
「この子は私が守ってみせます!!」
「させるとでも?」
やよいは子供を抱き抱えながらその場を素早く去った。
「!……ぷっ…くく」
タジマは驚き、笑いがこぼれた。
やよいの成長に驚いた。先ほどの治癒力といい、チャクラコントロールといい、今も上手く気配を消せている…
この短期間死に物狂いで頑張ったのだろう…
やよいのその姿が目にうかんだ。
「…可愛らしく…聡明に育ったな…やよい」
やよいの名付け親としてこれほど嬉しいことはない…
さて…
「小手調べといくぞ…やよい」
タジマはやよいが逃げたであろう方へ向かい地を蹴った。
はぁ…はぁ…
やよいはひたすら逃げた…
しかしこのままだと追い付かれる…
やよいはこの子が助かりそうな所を必至で探す。
「!あそこは…」
木から降り、岩が沢山ある所に身を隠した。
急いで子供を岩の穴蔵に隠した。
「ごめんね…必ず助けに戻るから…」
やよいはその場を去り、森に入った。
自分を追ってくる気配にやよいは少し安心した…
後ろを確認した瞬間、目の前にタジマが現れ、やよいの腹部めがけ叩き込んだ。
ドゴォ
鈍い音が鳴りやよいは地面に叩きつけられた。
「…!げほ!!」
息がつまり涙目になる。
やよいはふらつきながら起き上がった。
「あの瞬間に腕で防いだか…少しはできるようになったね…やよい」
タジマは木にもたれながらやよいを見下ろした。
「守りたいなら全力で守ってみせろ…」
タジマは姿を消した。やよいは神経を集中しチャクラを探す。
「!!」やよいは右からの攻撃を避け距離をとる。
しかしタジマはそれを許さないよう攻撃を続け完全にやよいは押されていた。
「この程度か…少し残念だ」
タジマの刀がやよいの手を貫通し、やよいは痛みで呻いていた。痛さに涙がでる。
「…っ…ぐっ…タジマさん…貴女こそ…」
気を許しすぎです
やよいは貫通した手にチャクラを集中し、タジマに向かい鋭い結晶を繰り出した。タジマは反応が遅れた。
ギリギリかわしたが鎧を貫通し右脇を掠めた。
「晶遁だと!?…」
タジマは距離を離すが次はやよいが攻めた。
あまりの猛攻でタジマは再び驚いた。だが、やよいの目は本気で人を殺そうとしていなかった。
平和を願う真っ直ぐな目をしていて綺麗な緑色をしていた。
もっと君の成長を見てみたかった…
これが最後になるだろう…
「私も本気で応えよう」
やよいは構えた。
ー
ーー
「ゲホ!!……くぅっ…っ」
「ここまでとは…少し甘くみていた」
タジマは軽く息が乱れていたが、まだまだ余裕があった。
やよいはボロボロだった…傷だらけでチャクラは少ししかなかった。
やよいも攻めたが、うちはの長であり、写輪眼を有し、大人の男…実力も分かりきっていた。
「もう限界だろう…さっきの子供はどこだ?」
タジマはやよいに刀を突き付け再度聞いた。
「言いません…」
「やよいは頑固だな…」
タジマはため息をはき、刀を鞘に戻した。目も赤から黒に変わった。
「タジマさん?」
「あの子供は岩に隠したんだろう?知っていたよ」
「!なんで…じゃあ」
やよいは嫌な汗が一気に吹き出た。
「心配しなくていい。千手の子供より、やよい…お前の力を見ておきたかった」
「試したんですね」
「君には、いつも驚かされる…」タジマは笑った。
やよいも、少し気を抜いた。
少しの間二人で話をした。やよいの力の事やマダラやイズナの事…
「今の君の力はマダラやイズナに近いかもしれないな…」
「!ありがとうございます…でも、私は友を守れるぐらいの力がいるんです…タジマさんとの闘いで自分はまだまだだってわかりました…」
やよいは悔しくて拳を握った。
「君にはまだ時間がある。大切に使いなさい」
タジマは立ち上がった。
「行くんですか…」
「皆待っているからね…
やよい…最後に君に出会えて良かった
マダラとイズナをよろしく頼む」
「!!最後だなんて「やよい」」
タジマはやよいの目線の高さにあわせて背をかがませた。
「最後に、お父さんと言ってくれないか」
やよいはタジマに抱きつき言った。
お父さん
やよいはタジマの服を握りしめ、タジマはやよいを抱き締めた。
タジマとやよいは別れた。
最後と言わないで欲しかった…
やよいからしたら自分に名前をつけてくれた人だから親も同然だった。
次会う約束をしたときタジマは何も言わずただ穏やかに笑うだけだった。
やよいは岩場に行き、子供の体調を確認して、担ぎ上げその場を去った。
やよいは扉間を必至に探した。
チャクラはないに等しく、体力も限界だった…
竹からとった水分も二人で分けるとあっというまになくなった。
やよいの視界がぼんやりと霞む…
担いでた子を草むらや岩の陰に下ろした。
子供を守るように、やよいは倒れこんだ…
「と…びら…ま…」
やよいは体が動かなかった… 目も重い
近くに人がいる…敵か…
やよいは守るように抱き締めた。
「もう大丈夫だ…」
やよいはその声を聞き、安心して意識を手放した。