遠い日の約束〜完結〜

□二十四章
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やよいから一気にチャクラが吹き出した。マダラは構わずやよいに切りかかったが、跳ね返された。
マダラにイズナが駆け寄る。
「兄さん…あれ…」
「…」
二人はやよいを見た。
先程のチャクラより禍々しく、威圧的なチャクラだった。
体を包むよう金色に輝き、尻尾が九本生え、目は瞳孔が縦長になっていた。

「なかなか面白いやつだな…柱間だけだと思っていたが…」
「兄さん…今回は引こう…」
「イズナ…お前は下がれ。俺が相手する。」
さあ…楽しませてくれ

マダラの目の模様が変わり本気で来ることを感じ、やよいは構える。

互いの術が炸裂した。
木々は倒れ、地は抉れ、二人の周囲は焦げくさく、何もない荒れ地と化した。
「まだ、終わらせてくれるなよ」
「くっ…」
マダラはやよいをよく分析していた。
女と男の力の差は当然ある。
やよいが九尾のチャクラを完全に使いこなせていないのもわかっていた。

「やよい…チャクラの使い方が雑だ!すぐにへばるぞ!!」
「クラマ…わかってる」

「何故本気で殺しにこない…」
「あなたを傷つけても意味がないからよ…マダラ…もう…この戦乱の世を終わらせよう…千手とうちは…柱間とマダラが手を組めば出来ることでしょ?」
「黙れ…余所者に何がわかる…」
「…わかるよ」
やよいは寂しい目でマダラを見た。
「…あいつと俺は敵だ…親兄弟や一族の仇だ。手を取ってもたかが知れている…一族の長なら一族を守る事だ。それだけだ…」
「その守るべき一族を戦に出しては意味がないじゃない!!千手もうちはも…ここで終わりにすべきよ!」
「何も知らない小娘が…綺麗事をほざくな!」
「…この」
分からず屋が!!


ーーー
「兄さん!!しっかりして!」
イズナの声でやよいは目がさめた。
「マダラ…」
やよいは愕然とした。
イズナの腕の中でマダラが血を吐きはぐったりしていた。よく見ると胸のど真ん中に結晶が突き刺さっていた。
やよいは血の気が引き、無我夢中でマダラに走り寄った。
「来るな!化け物!!」
イズナはマダラを守るよう抱き締め、憎悪の目でやよいをみた。
やよいは悲しく思ったが、今はマダラだ。
「マダラを治させて。御願い!!」
「信じられるか!!」
「このままだとマダラが本当に死んじゃう!!イズナ…御願い…」
マダラを死なせたくないの…
やよいが弱々しい声で嘆願した。

「…兄さんを殺せばお前を殺す…」
「いいわ…」
やよいはマダラを寝かし、巻物から必要なものを出した。水分をとり少しでもチャクラを溜めた。

必要な処置を素早く行った。
麻酔薬や造血剤を飲ませたかったが、ぐったりしているマダラを見て、やよいは口移しで与えた。
薬が効いたのを確認し、両手にチャクラを集め、止血をしながら刺さっているものをゆっくり抜いた。
血は少し出たが上手く止めている。
やよいは更に集中した。

「なんで助けた?」
「助けたくなかったの?」
「そうじゃなくて…俺達は君を殺そうとした。なのに…」
「助けるのに敵味方はないよ」
「君は不思議だね…」
「私…やよいって言うの…」
「やよいか…」
君の目は汚れなく真っ直ぐで惹き付けられる。
見つめられると、何か大切な事思い出せそうなんだ…きっと兄さんも感じた筈…
「イズナ…」
「何?」
「私ね夢があるの…子供が戦に出なくてすむ、人々も安心して暮らせる里を作るの…そこは一族とか関係なく、互いに手を取り合い、協力し合い、助けあっていく里なの。」
「…絵空事だ…そんなの出来やしない」
「する前に諦めてたら叶うものも叶わない…それに、これは私一人の夢じゃない…私は夢を語り合った二人の夢の支えになりたいの…諦めてほしくないから…」
その為にはなんだってする…

「だったら…叶えてみ……」
イズナは違和感を感じた…前にも同じやりとりをしたような…
イズナは忘れていた事を思い出してきた。
幼かった頃、可愛いらしい女の子にあって、同じ事を話をしていた。
その子は綺麗な赤茶の髪で、綺麗な緑の目をしていた。よく笑う女の子だった。
やよいとその子が重なる。

「やよい…前に「ぐぅっ……」兄さん!?」
「はぁ…はぁ…」
やよいを見た。
体や顔がどんどん子供になっている。
額には脂汗が浮かび、チャクラを纏う両手が小さくなっていく。
このままだとやよいが危険だった。
「やよい…兄さんどう?」
「止血や最低限のことはしたわ…あとは傷口を治すだけなんだけど…」
「わかった…」

イズナはマダラを抱え起こし、やよいをかつぎ上げた。
突然のことでやよいはびっくりした。
「大丈夫…このまま集落に向かう。」
「それは…」
「やよいも限界だろ?それに兄さんを診て貰わないと…側にいたほうがやよいも安心するしチャクラも回復しやすいでしょ?」
やよいはイズナの態度というか空気が変わったのを感じた。
「イズナ…もしかして」
「まだ完全ではないけど…やよい、可愛らしい女の子になったね…」
やよいは目を見開いた。
そして、涙を浮かべながら微笑んだ。
「久しぶり…イズナ、マダラ。」
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