遠い日の約束〜完結〜
□二十八章
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「只今戻りました。」
「?」
二人は夕刻過ぎになんとかうちは邸に戻った。辺りは暗くなりつつある。
戻ったというのに静かだった。
マダラは出掛けたのかと思いきや中から人の気配がする。
やよいとヒカクは顔を見合わせイズナの部屋へ向かった。
ー
ーー
「兄さん…いる?」
イズナは呼吸を乱しながらも必死に兄を呼んだ。
「!イズナ!?ここだ、大丈夫…すぐよくなるから「兄さん…」…イズナ」
マダラはイズナの手を優しく、安心させる様に握った。
「兄さん…俺の目貰ってくれる?」
「何を言ってる!?」
「僕自身の体は自分がよく分かってる…だから僕が生きてるうちに、兄さんにあげたいんだ…」
マダラは目に涙を溜め必死で頭を左右に振り拒否の意を示した。
「イズナ…諦めるな…まだ助かる見込みはある…だから」
お願いだ…
諦めないでくれ…
目とかどうでもいい…
お前は俺にとってたった一人の家族なんだ…
「泣かないで…兄さん…」
イズナはマダラの頬をそっと触れた。
「きっと助かっても、僕は兄さんに目をあげているよ…早いか遅いかだけだ…」
イズナは自分の目に指を持って行った。
マダラは止めさせようと手を掴もうとしたが、イズナに阻まれた。
「目見えてないでしょ…兄さん。
一族の長がそれでは、皆に示しが付かない。
僕のこの目で一族を守ってほしい…
お願い…」
「……分かった…」
「ありがとう…兄さん」
兄さん一人に背負わせてごめん…
二人は抱き締めながら泣いた
1つの目を移植され、もう1つの目に指が触れた時、バタバタと廊下を走ってくる音が聞こえ、襖が勢いよく開いた。
「!」
「!イズナ様!」
ヒカクはイズナに近付くより早くやよいがイズナに向かい次の瞬間
パァン!!
イズナの頬を叩いた。
「!っ…」
「「!」」
突然の事にヒカクとマダラは驚きやよいとイズナを見た。
やよいはイズナの胸ぐらを掴み目を合わせた。
「イズナ!!何て事するの!!あと少しだったのに…なんで待ってくれなかったの!?そんなに…そんなに信用できなかったの!?」
「やよい…」
「やよいさん…」
「やよい…聞いて…」
イズナはやよいを抱き寄せた。
「ごめん…でもね…遅かれ早かれ俺は兄さんに目をあげていたよ。やよいの力でも兄さんの目はもどせなかったんだ…なら残された方法は一つしかない。やよいならわかるよね?」
「…」
やよいはイズナの服をきつく掴み顔を埋めた。
そんなやよいにイズナは困ったように笑った。
「兄さんはうちはの長で一族を守っていかなくちゃいけない…
俺の目は兄さんの目になって一族を守る…こんなに誇れる幸せな事は他にない。
やよい、頼むから分かってほしい…」
やよいはイズナの腕の中で微かに頷いた。
「ありがとう…」イズナはやよいの頭をポンポンと優しく叩いた。
「残りの目の移植…私がさせて貰うよ?いいね?」
「分かった。」
「ヒカクさん、包帯と薬草をする道具を下さい。」
「はい…」
ヒカクはその場から離れ取りに向かった。
「イズナ…私は絶対諦めないから!!助けてみせるからね」
「ならやってみせてよ」
二人は昔みたいに笑いあった。
ー
ーー