遠い日の約束〜完結〜

□三十章
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「ん…」
うっすらとやよいは目が覚めた。
外は朝日がでていた。
寝汗をかいたのか全身ベトベトし、気持ち悪い…
風呂に向かおうと布団から出て、隣りを見た。あどけない寝顔をしたマダラがすやすやと寝ていた。
撫でたかったが、起こすのは忍びない…
やよいは静かに部屋を後にした。


ーー
「はぁ〜さっぱり♪」
やよいは庭に出た。風が気持ちいい…
「やよい…」
「イズナ!おはよう」
「おはよう」
やよいとイズナは縁側に腰をかけ、体調はどうか、目はどうかと聞いた。
「お陰で体調も目も大分落ち着いたよ…後は歩く練習しなきゃ…」
「手伝うよ!」
「それじゃ練習にならないよ…」
イズナは困ったように笑った。
「やよい…本当に…ありがとう…」
「イズナ…」
「…まだ受け入れられないんだ…千手が憎い…憎くて堪らない…」
「うん…」
「でも…
兄さんの足糧にいつまでもなってはいれないから…
俺は、兄さんの支えになる…
千手には少しずつ…嫌だけど…」
「それで充分だよ」
互いにふっと笑った。
「そういえば…昨日どこで寝たの?」
「ん?ん〜…;」
「兄さんの匂いがする…」
「え!?嘘!?」
「ぷっ…くくくっ…嘘だよ。
兄さんの部屋だったんだ?」
「ぐ…やられた…」
「で?どうだったの?」
「教えない!!何もなかったよ」
「へ〜…お風呂に入るぐらい汗かいたんでしょ?やっぱり兄さん手が速いな♪」
「違っ最後までしてないもん!!」
「なら近い事はしたんだ…」
「…」
「ごめんごめん」
イズナは笑ってやよいの肩を叩いた。
地味に痛い…
「…本当は…マダラに言わないつもりだった…」
「そう…」
「でも、他の女性と一緒になるって聞いて…」
「兄さんもいい年だからね…
話はちょくちょく来てるんだ。
兄さんはずっと拒んでるけど…」
「そうなんだ…」
柱間の婚儀の話を聞いた時は素直に喜んだけど、マダラの口から聞いた時は辛く、悲しく、心が抉られるように痛かった。
嫌だった…思いが溢れてしまい言ってしまった。
悔いがあるかと言えば、何とも言えない…

言わなければ…
私はどちらにもつかないと言っていたのに…なのに…

「やよい…血がでる…」
イズナはいつの間にかやよいの前にしゃがみ頬を撫でた。
「やよいも素直に慣れないんだね…」
「イズナ…私…どうしたらいい?」
「俺がこうだと言えばやよいは従うの?」
「…」
「もっと自分に自信をもたなきゃ…
俺は、兄さんとやよいを応援するよ。互いに思ってるなら尚更…
兄さん不器用だけど、やよいの事…大切に思ってると思うよ?あまり待たせないであげてね。」
イズナは笑いながらにやよいの頭を撫でた。
「まあ…千手に取られはしないと思うけど…ねぇ…兄さん」
「へ!?」
やよいのすぐ後ろにマダラがいた。
全然気づかなかった。
「笑止…」
「え…まさか…」
「僕は少し外歩いてくるね。すぐ帰るから」
イズナは立ち上がり、去っていった。

「「…」」
気まずい…
「俺の昨日の言葉忘れるなよ?」
「う…はい…」
「よく寝たか?」
「あ〜…お陰様で」
「そうか…」
「?ひ!?」
「俺はあまり寝れなかったんだが…何故かわかるか?」
冷や汗がでるぐらいマダラの目が恐ろしかった。
「ごめ…ごめんなさい!!」
「何に謝る?」
やよいが後退した分マダラもやよいに近づく。
「もう少し…俺は寝たいんだが…」
マダラがやよいに手を伸ばし、頬を撫でた。マダラの顔が近づき、もしかしてと思い目を瞑った。

ペタッ…

ん?ペタッ?
目を開け腕を見ると、両手首を合わせた上に「封」の紙が張られていた。
全然動かない…
「…うそ…」
「ぷっ…気抜きすぎだ…くっ…」
「ちょ…笑い事じゃ…わっ!?」
マダラはやよいを担ぎ上げ、歩き出した。
「離して!!マダラ!」
「離すさ………寝室でな」ボソッ
「誰かーー!!!!」
「マダラ様…」
「ヒカク!!」
「何だ…用なら後にしろ」
マダラはやよいを担ぎ歩き始め、顔が青くなる。
「申し訳ありません…客人が…」
「誰だ…」
「………千手扉間です」
「チッわかった。」
やよいは下ろされマダラは扉間の待つ部屋に向かった。
「ありがとう!ヒカクさん!!あと…これを…」
やよいの腕の札をペリッと剥がした。
ホッと安心する。
「次は私とて助けれませんので、頑張って下さいね」
「そんな…」
やよいの肩を落とす姿にクスリと笑った。
「そういえば…扉間の用事って何だろう?」
「一週間後には新しい住まいに皆移るという内容でしたけど…」
「本当!?なら行って聞いてみよ!!」
やよいの去って行く後ろ姿をヒカクは見ていた。
「…邪魔しなかったら良かったかな…そしたら…」
ヒカクもイズナと同じくマダラの味方である事をやよいは知らないまま、扉間とマダラの方へ向かった。
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