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□赤の愛語詠唱
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*日常なんてそんなもん*









とある一隻の海賊船が朝日がキラキラと照らす海面をゆっくりと進んで行く。船内では食堂に居合わせたクルー達が平和な時を過ごしていた。












『はぁ〜。平和だなぁ。こんなに平和だと……アレだ、なんだ?うん、なんかアレだよなぁ』


「イヤもうなに言ってるか分かんねぇよ」


「違いない」





ガチャーーー


『あぁん!お頭ぁ!おはようございます!今朝はコーヒーにしますか?紅茶にしますか?それとも…わ・た・s「コーヒー」はぁ〜い!今すぐにぃ!!』


「相変わらず通常運転だな」


「違いない」










私は葉月!お頭こと【ユースタス・キッド】率いるキッド海賊団のクルーの1人!数年前にお頭に一目惚れして仲間に入れて貰い、それ以来身も心も全てお頭に捧げ今日も今日とてせっせとお頭の為にコーヒーを淹れるのはこの私だ!…え?最後まで台詞を言い切れてない?フンッ!今更だな!いつものことだ!そんなことでめげる私じゃないんだよ!!嗚呼、眠そうな顔で私の言葉も大して聞いてはいないであろうお頭…今日もカッコいいです、素敵です…!





『お待たせしました、お頭!コーヒーです!』


「…あぁ」


『はぁん!寝起きのお頭ってどうしてこんなにも色気を撒き散らしてるんだ⁉ねぇ⁉ヒート‼キラー‼』


「俺にフってくれるな」


「違いない」








眠そうな目に掠れた声…まだ覚醒仕切ってないからなのか、ユラユラと僅かに動く頭。な、なんて色気‼けしからん!もっとやれ!俺得である。…あぁ、そうそう。さっきから私に対して冷たいのがヒートで 違いない しか言わないのがキラー。ヒートはさっき私に対して通常運転だと言ったがコイツ等もこれが通常運転。いや、キラーに関してはただ面倒臭いだけだろうな。テキトーに相槌打ってやがる。大体コイツ等はいつもいつm…





バァンッーーー


「頭ァ‼前方二時の方角に海軍の船を発見‼どうしますかっ⁉」


おいコラ、まだ私が喋ってんだろーが、心の中で。でも海軍か!丁度暇してたし、ヒートもキラーもやる気満々って感じだし?…うん!悪くない!てゆーか寧ろ…寧ろ!その報告を聞いてニヤリと口角を上げるお頭が素敵過ぎて…‼それだけで私ご飯3杯はイケる‼








「どうするか だァ?んなもん当然…沈めるに決まってんだろォ!」



「「『オオォオ‼‼』」」





お頭の言葉を引き金にしてその場にいた皆が意気揚々と食堂を出て行く、ので私もそれに続いて出て行…こうと思ったけど、その前にちょっとパンのひとつでも食べてこ。朝食の途中だったんだよ、実は。…にしてもどーもこの船には血の気の多い輩が多い。まぁ海賊船なんてそんなもんか。え?私?私はどうだろう?私は基本的にはガーッと突っ込んで宝と言う宝を持って帰って来るよ?お金大事だし?何よりお頭が喜んでくれるしィ?べ、べつに、あの大きな手で優しく頭を撫でられたいとか思ってないよ!思って無いから!……ウソです。思ってます。イヤでも機嫌が良い時は頭撫でてくれるんだって!まぁ、優しくはないけどね。効果音付けるなら グシャッ だけどね。でもそれがまたヨシ!お頭こそ世界の中心ですが何か?…つーわけで!私もいっちょ暴れますかー‼











『ってオイオイ、ほぼほぼ終わってんじゃねーか。私の出る幕無しか。無しなのか。』


「葉月、遅いぞ」


『女のコは準備と買い物に時間が掛かる生き物なのだよ』


「違いない」


『ここまで来てもテキトーか。それ以外の返しないの?ねぇ?』










折角気合い入れて来たってのにもう海軍の船黒い煙上げてんじゃん。モクモクじゃん。マジで出る幕無ェじゃん。アレか?パン食べてたのがダメだった?タイムロスだった?イヤでも腹が減ってはなんとやらって言うじゃん?








「フン、暇潰しにもならねェ」


『全くですね!お頭!』


「テメェなんもしてねぇだろうが」









ベシッと後頭部を叩かれました。痛いです。だがこれは愛故だ。そう思えば痛みすら感じない。寧ろ喜ばしいっ!…オイ、決して私はMじゃねぇ!









「ハッ、流石に砲弾返してやったくらいじゃ沈まねェか。オイ‼‼乗り込んで来っぞォ‼‼返り討ちにしてやれェテメェ等ァァ‼‼」


「「「オオォオ‼‼」」」


『あぁぁあぁ…!勇ましいお頭が素敵過ぎて…私は苦しいです‼』


「オラ、葉月!テメェもさっさと行って、来いっ!」


『ぐえっ』


投 げ ら れ た ! 折角勇ましいお頭に悶えていたと言うのにっ…!イヤでもまぁ、投げたのお頭だし!私ってば許しちゃう!…もしこれやったのお頭じゃなかったら許すまじ。だって首グーンッてなったかんね。乙女らしからぬ、カエルの如き声が出たよ。あそこはアレだな…。キャアッとか乙女チックな悲鳴を上げるとこだったな…。……でもムリじゃね?首しまったら皆カエルみたいな声出るんじゃね?きっとどんな美女でも出るよ。うん、出るってことにしとこ。




そんなこんなで横付けされた海軍船に見事に着地。あらら、一番乗り。キラー達何やってんのさ。あ、うちの船に乗り込もうとしてる海兵海に落としまくってるわ。…ぶっちゃけ海軍船ってお宝乗っけて無いからやる気はイマイチ…。でも懸賞金上がるとお頭喜んでくれるしな…!お頭が私を投げ込んだって事は私期待されてるって事だしな…!全てはお頭の為っ!お頭こそ世界の中心ですが何か?…アレ、これさっきも言ったな…。まぁ、いっか。










『そーゆー訳で!』


「「「どーゆー訳だ!!」」」


『おぉう、ナイスツッコミ。お前等海兵辞めて芸人にでもなった方が良いんじゃね?…まぁその前に…



















ひとつ絶望でも見てけば?』















そこからはもう速いのなんの。バッタバッタと海兵を沈めに沈めてる内に、気付けばうちの奴等殆どコッチ来てた。お陰であっという間に海兵ほぼ全滅だよ。ん?アレ?うちの船もぬけの殻じゃないよね?流石にそれはダメだよ?あ、ワイヤーいんじゃん。空気読んでちゃんとうちの船に残ってんじゃん。エライな、お前。尊敬するよ。ちょっとだけだけど。プチトマトくらいだけだけど。











「まぁ、こんなもんか。おいテメェ等!テキトーに物色してズラかるぞ」


「「「了解」」」







『お頭お頭!お疲れ様の一杯はコーヒーにしますか?紅茶にしますか?それとも…わ・た・s「島が見えた。葉月、後でキラーと俺の部屋に来い」









ポンーーー











う、うぉぉぉぉおい‼‼見たか⁉今見たか⁉お、お頭が私の頭をポンっと優しく…‼‼しかもニヒルな笑みまで浮かべてェ‼…海軍の船沈めて島まで見えて…気分は最高潮ですか⁉最高潮ですね⁉お陰で私も最高潮です‼あざすっ‼海軍お前ら良い仕事したよ!お前らのお陰だよ!お前らの事は忘れないよ!…はぁん…さっきのお頭の表情カッコ良かったなぁ…。もっかい見たいなぁ…。まぁどんな表情も素敵なんだけどねー‼うふふふふふ…‼









「おい、キラー!葉月の奴イッちまってるがどうする?」


「どうもこうも持ち帰るしかないだろう。後が煩いしな」


「…だな」








結局私ははキラーに抱えられ船へと戻ったらしい。まぁなんだかんだで世話を焼いてくれる仲間達。見た目はアレだが実は皆結構良い奴等。












こんな日々が私の日常。






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