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□赤の愛語詠唱
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またもやオリキャラが出張るよ。気を付けて。
「オイラを船に乗せてくれよ‼︎」
目の前には10歳前後のガキンチョがいる。そんでキラーに向かって喚いてる。今この現状を説明するには少し時間を遡る必要がある様だ。読者よ、ちょいと付き合え下さい。メタ発言乙。
ーーー
『それにしても随分と寂れた街ですねぇ。活気を感じないと言うか生気が無いと言うか……あ、どっちも意味ほぼ一緒か』
「ああ、シケた街だぜ、なんの面白味もねェ」
『全くです』
おいおいおい、やっと島見つけて上陸して、折角お頭とデートだってーのになんだよ、この寂れた街はよぉ‼︎瓦礫ばっかだし‼︎最早街と言って良いレベルじゃねぇわ…。私はもっと素敵な街でお頭とキャッキャウフフなランデブーを楽しみたかったのにっ‼︎
『人も疎らですしねぇ……ねぇねぇ、おじいちゃん!』
まぁでも取り敢えずは情報収集しなくちゃな。とゆー訳でその辺をトボトボ歩いてたオジイに突撃インタビュー‼︎
「…なんじゃ?」
『この島の事について少し聞きたいんだけど…』
「……島の事?特に代わり映えも無い普通の島じゃよ」
…いやー、マジで生気無いわぁ。もう直ぐ死ぬんじゃね?って顔してるわぁ。なんかもうちょっとテンション上げられないの?私ばっかりテンション高いとなんだかちょっと、ちょっとだけだけどアホみたいじゃん。…まぁ全然アホとかそんなんじゃないけど?うん、マジでマジで。いやほんとマジで。
「普通ねぇ…。それにしちゃア随分としみったれた島じゃねぇか。どいつもこいつも死にかけた魚みてェな目ェしやがってよォ」
「ふん、余所者のお前達に何が分かる。もうこの島には何もありはしないんじゃ。この島は''全てを奪われた島''じゃ」
「…どういう事だ?」
「半年前にこの島は壊滅したのじゃ」
…………なんか身の上話的なの始まりましたけど?このオジイ最初普通の島ですぅって言ったよな?なのに突然''全てを奪われた島''ですぅって言い出したんですけど。え、なにそれ?じゃあなんで最初普通とか言ったよ?意味不過ぎんだろ。ボケてんの?
「もとより海賊がこの島に来る事は少なく無かった。じゃが海軍屯所があったお陰でそこまで派手に暴れる様な海賊は殆ど居らんかった。騒ぎが起これば直ぐに海軍が捕まえてくれたのじゃ」
うんうん、在り来たりだわ。在り来たり過ぎるくらい在り来たりだわ。普通過ぎる。………はっ!まさか‼︎このオジイが最初普通ですぅって言ったのはコレの事か⁉︎まさかこんなところに繋がってるなんて流石の私も予測出来なかったわぁ!普通にもうボケ始めたオジイかと思っちゃてたよ、マジで。なんかゴメンな?
「じゃが半年前。とある海賊がこの島で暴れ出したのじゃ。その時海軍は……ワシらを助けてはくれなんだ…!助けるは愚かっ、一緒になって武器を向けてきたのだっ‼︎‼︎」
「『!』」
「買収されたか…」
「そして奪われたのじゃ…。家も、歴史も、伝統も、信頼も、愛する家族もっ…‼︎………今尚この島に残っている者はそんな過去を背負った者達だ。…悪い事は言わん。直ぐにこの島を去れ。あの悲劇を思い出させてくれるな…っ‼︎」
悲痛に歪んだ顔。縋るような、それでいて拒絶する様な声。その悲劇は島の人間の心に消える事の無い傷痕を残したのだろう。
結局私とお頭はそれ以上追求する事無くオジイの元から立ち去り、船に向かって歩きだした。島の内情は聞いたし、特にこれと言って興味を引く情報も無さそうだし。なによりこの島なんも楽しくないし。コレなら船でコーヒーでも飲みながらお頭と優雅な時間を過ごした方が実に有意義である、まる。
『…にしても、正義を謳う海軍が海賊と手を組むなんて、世も末ですね〜』
「買収されたか、もしくはお互いに何か有益な事があったか…。どちらにせよ、もうこの島は終わりだ。行動を止めた奴等にゃァ現状に文句を言える様な資格は無ェ。自分の心臓の音聞いて死ぬ。それで終わりだ」
あぁん!ワイルドォォオ‼︎‼︎同情とか憐れみとか一切無い感じが溜まんないよォォオ‼︎悲劇話されても口元笑ってらっしゃる‼︎ブレませんよ‼︎うちのお頭は‼︎こんなだから極悪海賊とか言われちゃうんだろうね!でも、違うんだよ‼︎別に人の不幸を喜んでるとかそんなんじゃないんだって‼︎ただ…
「やられるだけやられて泣き寝入りとは…実に呆れるなァ。くくっ」
そう!呆れてるだけなんだって‼︎つか、呆れながら笑ってる姿テライケメン‼︎最早呆れながら笑うってゆーか、見下すように笑ってるけど、それがまたイイっ‼︎……え?悲しみに染まった島でそのテンションは不謹慎なんじゃないかって?知るか!私は海賊だい!好きに生きて何が悪い⁉︎そもそも私の世界はお頭を中心にして回ってんだから、お頭こそ最優先事項。オーケー?
『アレですね!この島の人間は恐らく''ガラスのハート''が標準装備なんでしょうね!きっとメンタル弱い人間の集まりなんですよ!私なら返り討ちだな!倍返し?いやいや3倍で返してやるわ』
「ふっ、それくれェの気合いが有りゃア、あのジジイ共の未来は変わってたかもな」
ぐしゃりと頭を撫でられました。
『フォォォォオオ‼︎‼︎撫でられました‼︎撫でて頂きました‼︎おかわりお願いします‼︎‼︎』
嬉しくて思わず頭を差し出しおかわりを要求したらスパァンとやられました。そう、スパァンと…。我ながら良い音する頭だよ、全く。そんなこんなで船に戻って来たと思ったら声が……
「オイラを船に乗せてくれよ!」
こうしてようやく冒頭に戻るのであった。
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