書庫

□灰の○○○○
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「おいモヤシ!そっち行ったぞ‼」

「アレンくん!気を付けて!」

「破壊します!」









今俺の目の前には黒服に身を包んだ3人の子供。いや、子供と言う表現は的確では無いのかもしれない。正確に言うなら十代後半くらいの【大人になりきれない子供】だろうか。まぁつまり子供。



そして更に…



「…コ、殺ス」




フヨフヨと漂うボールに顔がはめ込まれたような機械人形が多数。













それはエクソシストとAKUMAの戦い。これは戦争。









余りの既視感に溜め息が出た。














俺は葉月夜神。性別男。年齢18歳。好きな事は寝る事。嫌いな事は面倒事。家は極々普通の一般家庭で村暮らし。そして俺も極々普通の一般人…だったら良いのになぁ。残念なお知らせだが俺は普通とは少し違う。何がどう違うって?一言で言えば前世の記憶がある、という事だな。しかも前世がエクソシストだったと言うね。…これ何て悲劇?







命尽きる事で戦争漬けの毎日から解放されたと思いきや、まさかの記憶キャリーオーバーって聞いてないんだけど。そんなこんなで前世の記憶を持ったまんま18年間生きて来たワケ。お陰で精神年齢だけなら最早50過ぎのおっさんだよ。泣ける。ガキの頃は小さい脳みそで混乱しまくって周りの人達に色々言ったりしてたけど、年を重ねれば言って良い事とか言うべきでは無い事の判断が付く訳で。今となっては昔はよく分からない事を言う変な子だったわねぇ、って事で丸く収まってる現状。






折角生まれ変わったんだ。もうあんな戦争の事なんてどうでもいいじゃねぇか。平和に暮らしたっていいじゃねぇか。俺は十分戦ったっての。頼むからもう俺を巻き込まないでくれ。…そう願いながら日々を生きて来た。








あんなにも願っていたと言うのに…







「うわぁぁぁぁあ‼‼」

「な、なんなの⁉あの化け物は⁉」

「イヤだ‼殺さないでくれェ‼‼」









村にAKUMAが現れた。まさかまたAKUMA(こんなもの)を見る日が来るとは…。近くにイノセンスがあったなら怪奇現象が起こっていた筈。だが村にそんな様子は見られなかった。だとすれば…村近辺で怪奇現象があったのかもしれない。それがイノセンスでそれを求めてAKUMAが集まりそれらが村まで流れて来た、と。まぁ仮説に過ぎねェけど。





『…はぁ』






生まれ変わってもまたこの戦争が原因で死ぬのか、俺は。そんなに俺が憎いかチクショー。静かに見渡せば俺が18年間生きて来た村はあっという間に無残な姿に変わり村の人達も最早全滅。どうあってもカミサマは俺から全てを奪いたいらしい。AKUMAが俺に弾丸の照準を合わせた。せめて…せめて来世でこそ幸せになれます様に。そう願い俺は目を瞑り次に来るであろう衝撃を待った。











筈だった。









いつまでも来ない衝撃。聞こえる会話。瞑った筈の目をゆっくり開ける。俺に照準を合わせていたAKUMAは破壊されていた。







そして漸く冒頭に戻るのだったーーー











嗚呼、この世はホント何でこんなにも理不尽なんだよ…。決めた、俺来世は海藻になるわ。どこまでも自由に漂ってやるからな、このヤロー。













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