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□僕が貴方を望むから
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『……う、ここは…?』






次に目が覚めた時は屋内でした。さて、ここは一体何処なのでしょう?







「目が覚めたか」







聞き慣れない男性の声。声のする方に顔を向ければ、そこには目の下に濃い隈を携えた男性が1人。20歳くらい、ですかね。






『……貴方は?』


「俺はこの海賊船の船長だ」









ん?海賊?海賊って、あの海賊?









『…海賊…。船長さん…ですか』







なんて事でしょう。彼は海賊らしいです。そしてここは海賊船。だからそんな異様に長い刀をお持ちなんですね。と言うか、そもそも今時海賊なんて居るもんなんですね。あ、さては例の大海賊時代ってヤツですか?








「お前、たった一人あんな小さな船で何してやがった」


僅かに目を細めて問われる。


『何、と言われましても…漂流していた、としか言えません』


そもそも気付いたらあの状況だった訳ですし。


「質問を変える。何故、漂流していた?」


僅かな苛立ちを露わにして更に問われる。


『その疑問に関しては僕が一番知りたいです』


切実ですよ、これ。


「…だったら誰かが寝てるお前を船に乗せて海に放ったとでも言うのか」


『……強ち間違った意見では無いかと』


と言うか最早そう言う事でしか説明出来ない状況なんですよね。いやまぁ、そうされても不思議じゃない環境で生活してはいましたがね。でも、それでは腑に落ちない部分が出てくるんですよね。


『僕の船に新聞が一緒にあった筈です。アレは僕に馴染みの無い言葉の羅列でした』


そう。カモメから貰った新聞(いや金貨は渡したし、買ったって言っていいんですかね?)アレにはよく分からない単語ばかりが書いてありました。それに、海賊だの海軍だの内容はまるでマンガや映画のそれ。


「…どういうことだ」


『グランドライン、悪魔の実、ワンピース。そんな言葉は初めて見聞きしました。極め付けは大海賊時代。僕にとってはそんなものは絵空事(フィクション)に他なりません。こんな非常識な常識、僕は知りません』







まるで世界そのものが変わってしまった様な感覚。…いや、違う世界に来てしまった様な感覚、と言った方がしっくり来るかもしれない、と言うか、多分それが正解。







僕の言葉に目を丸くして驚く男性を見て悟る。






























あぁ、やはり異常なのは僕の方。









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