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□隠がみんな"ああ"だと思わないで下さいね
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『急げッ!隊士達は既に回収した!鬼に警戒しろ!





撤収だ!!』








我々は鬼殺隊の事後処理部隊、"隠"と呼ばれる存在である。鬼殺隊の隊士が戦った痕跡を消す為、負傷した隊士を回収する為、我々は隊士と鬼の交戦後に現地に派遣される。


そして現在、現場に鬼が現れたと烏からの情報が入り事態は緊迫している。






本来は隊士が鬼を斬った後に派遣される為、我々が鬼と鉢合わせる事は無い。若しくは隠と共に隊士が動き近辺を警戒してくれるのだ。


だが、生憎今は近辺警戒をしてくれる隊士は居ない。







恐らくこの鬼、先程までこの現場でやっていたであろう戦いには出ずに、ずっと隠れていたんだろう。もしかしたら、隊士と鬼の交戦後に我々が動くと知っていたのかもしれない。







鬼を斬れない我々が。








「カァー!南西!南西!!鬼ヲ確認!一名ノ隠ヲ襲撃!」


『後藤!こっちの指揮を一任するぞ!』


「はっ!」




急いで南西の方向に向かう。


『…上手く逃げてろよ!』




襲われている隠が上手く逃げおうせている事を願いながら、走る、走る、走る。




すると前方に鬼を捉えた。今まさに一人の隠が襲われそうになっていた。


慌てて地面に転がっていた石ころを掴み、鬼に向かって投げつければ、鬼の頭に見事的中した。突然の衝撃に鬼の口から「ヴッ!」という呻き声が聞こえた。


我ながら素晴らしい的確性だ。


「…あ……た、たいちょ…」


襲われていた隠は、恐らく死を覚悟しただろう。でも大丈夫。何とか間に合った!



さぁ、鬼。お前に頭に石を投げつけた人間だぞ。こっちに視線を寄越せ、さぁ!



「…テメェ!よくもやりやがったなァ⁉鬼狩りでもねェ分際でェ!」









こっちを見たな?








俺は体と声を震わせる。



『や、やめろ!鬼め!…た、例え鬼殺の隊士で、無くとも、戦えると証明、してやる!』


「あぁん?威勢の割には随分と怯えてんじゃねェかァ?震えてるぜェ?」





そういうと鬼はニマニマと気持ちの悪い笑みを浮かべてこっちに向かって歩いて来た。そんな鬼を見て思う。この鬼頭悪いな?と。現に、無駄に威勢を張って、それとは逆に小鹿の様に震えて顔を青褪めさせれば、それ見た事か。馬鹿な鬼の加虐心を簡単に刺激する事が出来る。そうすれば、自然と標的は俺にすげ変わる。



それを確認して、襲われていた隠に目配せをする。





今の内に逃げろ、と。





襲われていた隠は震える体に鞭打って立ち上がると、こちらを心配そうに見詰めてから、静かに走り去った。




良かった、逃がせた。





「なんだァ?自分を餌にして仲間を逃したのかァ?」





あらま、バレてら。だが問題無い。バレていようがいまいが、お前が俺に標的を変えたなら何だって良い。





「バカだなぁ?どうせ最後は全員纏めて俺の腹の中なのによぉお?」





確かにそうかもしれない。でもそうでもないかもしれない。ただ、俺がお前相手に粘れれば、既に飛ばした烏が隊士を連れて来てくれる事だろう。今俺がやる可き事は一つ。





少しでもこの場に鬼を留め、隊士の到着を待つ事!






一般人への被害回避を念頭に、一人でも多くの隠が遠くまで逃げられる様に。









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