氷の姫と呼ばれ…

□1 捕獲
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アンティーク調に飾られた部屋も、お姫様が眠るような天蓋つきのベッドも、私には自身を縛る鎖に見える。
手首につけられた、いつも変えられる質のよい生地で作られたリボンも。
でも、何より気に食わないのはその私を縛る鎖のように感じる物、ではなくベッドに横たわった私の長い髪をいとおしそうに触る吸血鬼、フェリドだった。
この10分ほど、彼が私の髪を触るのを黙っていたがさすがに我慢も限界だった。私は無言で身を起こすとそのままベッドから降りる。
身を飾るフェリドが選んだフリルだらけのドレスはうっとうしい限りだった。
「あれ、透ちゃん。どこ行くの?」
「フェリド、服をよこせ。私用のものだ」
「ん?クローゼットにた〜くさん入れてあるじゃない。言ってあったでしょ?どれでも好きなやつを着てって」
「お前の趣味は私には合わない。もっとシンプルなデザインのものを用意しろ」
フェリドの趣味はフリルがたくさんついた所謂物語に出てくるお姫様が着るようなもの、が好きらしい。できるだけ柄がなく、地味な服を好む徹にとってはその服を着るだけで大きなストレスとなっていた。
「まったくわがままだなぁ」
「貴様ほどではない」
「僕はふりっふりの服を着た君の姿がすきなんだけどなぁ」
「なら、早急にシンプルで地味な服を用意しろ。私は貴様に嫌われたい」
「ひどいなぁ。僕はこんなに君を愛しているのに」
「知らなかった。支配することと愛することはイコールになるものなんだな」
「それ、いやみ?」
「ほかにどんな意味に聞こえる」

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