Novel

□不機嫌な彼 〜 BL ver.
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なんて、自分のミスは棚に上げ、
そんなこと思ったりなんかしてたんだ。


ベシッ!

「痛ッ!」

「翔、…お前分かってんの?」


叩かれて、ハッとしたら目の前には
大きな目。クリックリの。


――あ、亮太の目、やっぱキレー…


ムギュウ!

「イッ、痛ぁーーっ!」


痛い痛い…ッ!
本気で抓られてる俺の頬。

目の前にはギラリと亮太の本気の怒りで
光った目。…こ、これはマズイ、かも。


「…………お前今、何考えてた。」

「え、亮太のコ…」


でも、つい。

亮太のキラキラの目を見てたらポロリと
口から漏れた本音。


「いや! やっぱいい! 何も言うな!
お前はただ黙って聴いて反省しろ!」

「亮太…それはあまりにも横暴じゃ…」


困った顔で亮太を嗜める一磨。
…やっぱ一磨って良い奴…。
そんなことを思ってたら。


「じゃあ何? 一磨は翔の今日のミス、
アレはOKだって?」

「や、そう言う訳じゃないけど…。」

「じゃあ、この翔のすっ惚けた反省の
見えない顔、見てて平気だって?」

「や、そう言うつもりじゃ…」


亮太に畳み込まれて、あまりの迫力に
タジタジの一磨。亮太に誰も敵わない
のはいつもの事だけど、でも俺は…
そんな事より、一磨にそんなにも
顔を近づける亮太が気に入らない。


「翔、兎に角謝れ。一磨に飛び火した。
余りにも一磨が哀れだ。」


一歩離れて様子を見ていた義人が俺の
後ろからそう言ってトン、と押す。


でも俺の口を突いて出たのは。


「ねぇ亮太、クリスマスんなると
…何で亮太は不機嫌なの? しかもさ、
誕生日なのに。」


「翔っ?! 」
「…!」
「ッ! ……翔ちゃん、すげー心臓。」



「……は? 何言ってんの、翔。」


途端にギュウゥゥゥッてシワの寄る、
亮太の形の良い眉間。


「だってさ、亮太この時期んなったら
すっげーナーバスじゃん。いつも。
俺、亮太の事は何でも知りたいんだ。」


一磨に近いとか、この時期の不機嫌は
何で? とかって考えてたら、思わず
言ってしまった心の内全部。
だってずっと考えてたから。
クリスマスの度に。
誕生日の度に。


「馬…ッ?! 何言って…っっ」

「……ヒュ〜♪ 翔ちゃんやるぅ〜!」

「公開告白か。」

「…え、……………って、え……?! 」

「違…ッ! 一磨、違うから!」


俺の眼の前でバババ!って真っ赤になる
亮太。…あ、亮太のこんな顔、皆には
見せたくない。こんな、可愛い顔。

咄嗟にグッと引き寄せる。


「まーまーまー…俺らは場の空気読んで
ここで撤収するから。翔ちゃーん、
お手柔らかにー。」

「って、え、…まさか、マジで…?」

「…行くぞ、一磨。」


京介に荷物を持ち出され、義人に背中を
押されて一磨がまん丸な目で俺らを見た
まんま出て行く。



バタン。



残されたのは静まり返った楽屋に俺と
亮太の二人。


亮太は力が抜けたように楽屋の床に膝を
つき、俺の手をすり抜け…沈み込んだ。


「亮太?」

「マジか、お前………。」

「うん? 俺、マジだよいつも。
お前の事…」

「馬鹿かッ! 言うなっ!
お前何考えてんの?! メンバーの前で!
これからどうするつもりだよ!」

「え、どうするつもり…って…
亮太と幸せになるつもりだけど?」

「……………はぁ…………?」


――え、何その反応。


「亮太?」

「…何言っちゃってんの、お前。」

「何って、俺の気持ち。
もう何度も亮太に言ってるじゃん。」

「ぅわ、アタマ痛……。」

「え、どうした? 風邪?」

「ああ! お前に寒気してるよ!」

「うん? じゃー温め合おっか。」

「はァッ?! 」

「だってクリスマスだよ? 恋人同士は
ピッタリくっついて温め合わないと。
冬だし、寒いし。」

「その前に俺の誕生日だっての!
そんな日にんなことしないって!」

「じゃあ、誕生日だから、
俺が亮太をあっためるね。」

「わッ、お前何脱ぎ出してんだ!
バカッ! 冗談じゃないっ!!」

「生憎俺も冗談じゃないよ、亮太。
ここんトコ忙しくて、全然亮太と一緒に
居られなかったんだから、限界。」


ダッシュで手荷物引っ掴んで廊下へ
飛び出していこうとする亮太に先回り
して、扉を塞ぐ。そして、その長くて
程良く筋肉も付いてんのに細い腕を掴み
再び引き寄せる。


ドッ…

俺の胸に当たる亮太。
久々の亮太の匂いと甘いケーキの匂い。


「亮太、イイ匂いする…。」

「待て! サカるな!」

「…もう遅いよ。」

「待……ッ、」


抱き寄せてキスして。
亮太を壁ドンで抱き締めながら思いきり
貪って。

最後は受け入れてくれんのに、いつも
初めは抵抗してみせる天邪鬼な亮太を、
奥の奥まで貪って。

最後の最後は『イイ…ッ』って言わせる
この快感。


ねぇ、亮太。
少しずつでイイからさ、亮太の全部
俺に教えて。

感じるトコロも、スキなトコロも、

…それから、辛かったコトとかも
あったら全部。

何が出来るかとか、俺に亮太の何を
分かってあげられるとか、そんなの
そんな簡単には言えないけど、


俺は亮太の全部が欲しい。


今日の亮太の誕生日には
俺を全部やるからさ、

俺の誕生日には亮太をくれよ。


そんで、亮太が嫌いなクリスマスには
二人でくっついて、温め合おう。

心からヌクヌクほっこりするまで。

それって俺得かな。
亮太にもこの気持ち良さ、
伝わるといいな。



願わくば
亮太も心から温かくなって。


冬の寒空、
雪だって降りそうな今日だけど
ポカポカお日様陽だまりみたいに
暖かく。


俺が亮太と居るとそうであるみたいに






Happy Birthday RYOTA!
2015.12.24 xxx








end.

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