Novel

□楽屋協奏曲
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【 楽屋協奏曲 】



「なぁって…!」

「翔、ウザいっ」


バシッ!
俺の肩に乗せられた(正確には掴まれた)
翔の手を弾き落とす。

途端傷付いた様な顔をする翔。


――お前大概にしろよ?!

一度(回数は一回じゃ無かったけど)寝た
からって、別に俺ら相思相愛のカップル
でも何でもないだろ!

言うなれば、酔ったイキオイ。
その場の流れ、何かの間違い。

そんなもんだっつのに。

アレから翔は事ある毎に俺にベタベタ
してきて。俺としては気が気じゃ無い。

現に京介は何か勘付いてるみたいで。
俺を見てニヤニヤ。


――お前、そのチェシャ猫みたいな顔、
どうにかしろよ!


一磨は前回俺が翔を送ってった事で2人
ナカヨクなったんだと思ってる。

それは…まぁ、当たらずとも遠からず
なんだけども。残念ながら一磨が思う程
天真爛漫じゃないって言うか、もっと
濃い事があった結果、っていうか。
言えるわけないじゃん。

『酔ったイキオイでメンバー同士で一線
越えちまって、しかもその後サカッた
翔に迫られてます』なんてさ。


――そう、迫られてる。

そうなんだよ!
翔のヤツ、サカッた猿みたいに俺に始終
付き纏ってベタベタしだしてさ!

いや、流石に皆に前でそうあからさまに
触ってきたり迫る感じじゃ無いんだけど
明らかに近い距離。

あの送ってった日からビフォーアフター

こいつ、完全にパーソナルスペースって
奴に入ってきてやがる。

元々あんまスキンシップを好まない俺。
だからこの距離感が落ち着かなくって
しょうがない。

なのに翔のヤツ、何かっちゃー俺の肩に
手を伸ばし、ペッタリとくっ付いて
きやがって。

しかもコレ、メンバーが席なんて外そう
もんなら、キスをしかけて来るわ触って
くるわ、お前解ってんのか?! 俺達は
国民的アイドルだぞ?!
その辺のキャバクラか何かで酔ってる
おっさんじゃねーんだから、デレデレ
鼻の下伸ばしてエロ視線満々でお触り
してんじゃねーよ!

しかもメンバーで男同士だっつの!

でも翔の勢いは止まんなくて。

今日なんて人気の無い別階のトイレに
連れ込まれてヤッちまって。

お前はDT(童貞)上りのDK(男子高生)
かよっ!

サカッちまって、見境無くなってんじゃ
ねーぞ!!!

そう消音で怒鳴ってやったら。


「ごめん。俺…亮太が好き過ぎて
止まんないみたい…。」


なんて怒られた仔犬みたいにシュン…と
しちまって…。


――待て待て待て…!
その手には乗らないからな!俺にはその
『仔犬作戦』通用しないから!

そう思うのに、
怒ってんのに、


何で俺、翔の手、振りほどけないんだ?

何か俺、いい様に転がされてる?
知らん内に催眠術掛けられてるとか?
いやいや、俺そもそも催眠術とか全然
掛かんないし!



勘弁してくれよ!




そんな俺に、泣きっ面に蜂。

グッタリと帰り支度してる俺にポンと
手渡された滋養強壮剤と軟膏。


――義人、お前…。


これ以上俺を…
居た堪れなくしてくれるな…。








end.

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