Novel

□モモとショウブ
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【 モモとショウブ 】


誰が言ったのか、

3月3日は桃の節句で女の子の日
5月5日は端午の節句で別名菖蒲の節句
男の子の日

…じゃあ4月4日は?
男と女の中間でオネエの日♡

だなんて。


アタシは断じてオネエってのでも無い
んだけど、多分…ううん、多分じゃなく
確実に『この喋り』で多くの人が誤解
してると思う。

まぁ実際ずっと惚れてるただ一人の人は
男だし、ソッチと言えばソッチなのかも
知れないけれど。

彼女は居た。
2年? 付き合ってたし、ちゃんとHも
それなりにしてた。
そんなに肉食って訳でも無いけど、
アタシ、草食じゃ無いし。

それに女の子を喜ばすの好きだし。

でも、続かないの。
何故かしら。

大きな喧嘩もする訳じゃない。
浮気だってしない。

付き合ってる時はその人としかシないし
そもそもセフレとかそーいう刹那的な
関係は好きじゃない。
出来れば永遠。

好きな人なら、その人だけ居ればいい。

…なんて言いつつ、アタシも分かってる
どんなに好きな女の子が出来ても、
どんなにラブラブでも、ただ一人だけは
何時だって特別。

そう…彼だけは特別。

好きな人とか、
恋人とか、
そんな括りで扱えない
アタシの大切な男。

大学の同期で
今も同じ世界で働いてて

可愛いあの子を見い出した目利き。
ラビットプロモーションの若きエース
スカウトマンであり、有能マネージャー
山田 徹平。


アタシの好きな男。


先ずあの顔が好き。

派手さはないんだけど、
実は眼鏡を取れば端正な顔立ち。

芸能人向きじゃないけどね。
華がないから。

顔だけじゃないわ。
意志の強い瞳、力強い視線、それから
あの真っ直ぐな姿勢の良さったら。
いつもピシーッとしてるスーツもあの
姿勢の良さで、変な着崩れなんてして
ないの。年寄りに育てられたからかしら
正座も堂に入ってるし、やたら物知り。
…そう言えば昔剣道してたとか何とか
聴いた気がする。

中身もピシッとしてて、曲がった事は
大嫌い。陰口とかそーいうのも嫌いだし
大学時代もそんな連中を心から軽蔑して
いる様だった。

『堅物』
『ど真面目』
『面白味のない男』

周りにそう言われて、連(つる)んでる
友人もそう多くは無い。

だけどね、徹平ちゃんは誰よりも温かく
漢気があって優しかった。
分かりにくい優しさだったけど。

こんな喋りで、このデカイ身長で、
悪目立ちしていたアタシ。陰で色々と
変な噂されてるのは知ってた。
オネエキャラ装って女の子を誑かしてる
とか、実はバイで男女とも毒牙に掛けて
食い放題だとか…そうね、あの時代は
今ほどオネエキャラってテレビにも出て
無い時代だし。ちょっと明らかに特殊で
周りにザラに居るもんじゃ無かったし。

だから、仲良い友達は居たけど遠巻きに
色々噂されてて。ヤだったなぁ、アレ。

後ろからヒソヒソされて、振り向くと
ピタッて黙るの。

今なら軽く去なせる程度の事だけど、
当時…地方から出て来たばかりのアタシ
には、恐怖で、引け目で、人見知りを
更に助長させるものだった。

そんな中、たまたま同じ講義を取ってて
話す機会があった徹平ちゃんはそんな
自分を持て余してたアタシに、
『お前はお前らしくあればいいんじゃ
ないか? それが自然体で楽ならば
それがお前の本来の姿だろう。』なんて
軽く言ってくれちゃって。

しかも噂を聞いてもそれで色眼鏡で見る
なんて事もしなくって。
…まぁもしかしたら、あんな噂なんて
興味も無くて耳に入れて無かっただけ
かもしれないけど。

つまり、そんな偏見とかでアタシを
決めつけず、アタシをアタシの有りの侭
で受け入れてくれた徹平ちゃんに、
アタシは感謝と愛を感じたのだった。



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