Novel

□モモとショウブ
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正直言って、男にドキドキしたのは
初めてで。

メイクなんてお仕事を生業にするくらい
元々綺麗なものは好きだから、綺麗な
男の子とか、顔立ちの整った子を見れば
目を奪われたりしたもんだけど、こんな
徹平ちゃんに感じるドキドキしたり、
彼の一言でウキウキしちゃったりなんて
のが心の底でエンドレスなんて初めて。

何度告白しようかと思ったか知れない。

でも彼は所謂『ノンケ』。
完全なる異性愛者で、女の子の好みは
家庭的で可愛らしい華奢な女の子。

…でも、可愛い感じ、ではあるものの
そんなに手厳しい審美眼では選んで無い
みたい。小姑みたいで申し訳ないけど
今までの徹平ちゃんの付き合った女の子
って、ブスじゃ無いけど及第点。
まぁまぁ可愛いって位?

しかも計算高いお嬢様っぽい子に弱い
みたいで、徹平ちゃんも唯の男ねぇ…っ
なんて何度思ったか。

しかもアタシと同じく1〜2年は何とか
続いても、振られちゃうの。
大事にしてる様なのに。

馬鹿な女たち。

あんなに大事にされてんのに分かんない
なんて。確かに仕事の鬼で彼女よりも
仕事を優先してるけど、それって家庭を
持っても、ちゃんと自分で養える様に
って頑張ってるんじゃない。
1〜2年も付き合ってて彼のそんな面も
理解して無いんじゃ幾ら付き合ったって
時間の無駄よね。

そんな事を思って憤ってた。
内心、徹平ちゃんが別れる度にほんの
少しホッとしながら。

失恋すると…徹平ちゃんは珍しく、
いつもはしない深酒をした。
お供はアタシ。

アタシはザルだから。
かなりの一定量を越えれば途端に大虎
だけど、其れまでは殆ど酔わない。
あまりお酒の強く無い(あくまでアタシ
と比べての話、ね)徹平ちゃんとしては
連れとしては安心みたいで。

記憶を無くすまで飲んで潰れて眠る
徹平ちゃんに、したキスは数回。
初めはそれとなく。
背におぶった徹平ちゃんにぶつかった
フリして頬にキスをした。
それに味をしめ、泥酔した徹平ちゃんに
数度。前々回なんて直接唇に。
前回は少し長く。

何時だって気付かれやしないかドキドキ
もんで。…でも、ほんの少し気付いて
欲しいなんて思う自分も居て。

気付いたら徹平ちゃんはどうするだろう

友達としても終わってしまうだろうか。
それとも、冗談として流してしまう?
…実る事は、あり得ないわね。

そんな事を思っては苦笑する。

これは徹平ちゃんが彼女と別れる度に
繰り返す、アタシのジレンマ。
悪い癖。女の子しか好きになんない人
だって知ってんのに。しかもタイプは
アタシと真逆。

…ホント、見る目無いんだから。
スカウトの見る目は確かなのに。


そう、でもとうとう徹平ちゃんは
見つけてしまった。

彼の運命の女性、
ファムファタール。

咲ちゃんと言う、ピカピカの
ダイヤモンドの原石を。

この芸能界でも稀有なる光、
彼の道を照らす光、
彼が全てを差し出す、女の子を…


悔しいけど彼女はとても可愛らしくて、
それは見た目だけじゃ無い。
気立ても良く、家庭的で。
正に徹平ちゃんの理想の女の子。
しかも純粋、初心で天然。

アタシだって男の部分を擽られる位。
可愛い咲ちゃんは本当に愛らしく
肌もツルツルピカピカ、心も素直で。

流石はあの徹平ちゃんが半年も通って
落とした金の卵。

彼女の引力は半端無くて、徹平ちゃんや
アタシ所か、日本一と言われるロック
バンドJADEの神堂くんやら折原くん、
更には共演した男たちを次々と夢中に
させて。

アタシはそれを見て、また内心ホッと
したのだ。自分でも何て嫌な奴、と思う
けども。


ハタチのあの子じゃ目に映るのはきっと
金ピカな彼ら達。
一見華の無い徹平ちゃんには見向きも
しない筈、だなんて。



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