刀剣達と女審神者

□召喚
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いつもの通りに任務を熟し、検非違使を討伐していたある日のこと。
この本丸の審神者、雪華の元に一通の書状が届いた。
「主、何やら政府より書状が届いたようだぞ」
「ん?あら岩融さん。有難うございます」
書状を受け取り、早速内容を確認すると……
「…………………………、うわ…マジか……」
「どうかしたのか主」
「……うん、ちょっと…ね………」
「?」
はっきりとしない主の様子に、岩融は疑問符を浮かべるばかり。
「岩融さん、もう大丈夫です。コレ持ってきてくれて有難う御座いました」
「あ、ああ」
書状の内容にはあまり触れない方がいいと判断し、岩融は雪華の頭をわしゃわしゃと雑に撫でると、口元にどこか優しげな笑みを浮かべた。
「え、い、岩融さん?」
「主は何でもかんでもひとりで抱え込むからな。もっと我らを頼ってくれていいんだぞ?」
「岩融さん…」
「主は我らを頼ることを"迷惑を掛ける"と勘違いしている節があるようだから言っておくが、今、我らは主の刀剣。主に頼られればそれだけでも嬉しくなるものよ」
「………そういう、もの…なのかな」
「ああ。だから、我らをもっと頼れ!主は独りなどではないのだからな」
「ふふ…岩融さん有り難うございます」
「じゃあ、何かあれば呼んでくれ」
「はい」
そして岩融が退室したのを確認すると、再度手元の書状に視線を落とした。


ーー審神者 雪咲雪華
前略
此度、この書状を汝に送ったのは他でもない。汝に特務を依頼する為だ。
此れは汝の力量を認めての事であり、また、この依頼に対する拒否権は無い。
水無月の二十日、巳の刻までに政府本部へ出頭せよ。


書状の内容は、6月20日に政府へ出向けという上からの命令だった。
顔には出さないようにしているが、雪華は極度の政府嫌い。
審神者になる前、彼女はフリーの殺し屋になり生計を立てていた。腕前もかなり良く、依頼の殆どが高難度の依頼ばかりではあったものの、報酬はそれなりに良かったし、何より自分のやり方にケチを付けられることもなく好きなようにできていた為、自分が誰かの下につく事になるなど夢ほどにも思っていなかったのだ。
上という従わなければならないものがいるというのは、雪華にとって苦痛でしかなかった。
政府に選ばれなかったら彼ら刀剣達と出逢うこともなかっただろうが、まだ16歳の少女には其れを許容することは出来なかった。
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