刀剣達と女審神者

□召喚
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「はぁ……。いかなきゃダメ…、だよね………………」
気分が急激に沈んでいくのが自分でも驚くほどによくわかった。
「やだなぁ……。行きたくない………」
(だいたい、なんで"特務"なんて依頼してくんのよ…。私の力量を認めて…なんて書いてあったけど、絶対に認める筈がないのにあんな事書いて…)
「わけわかんない…」
上体を後ろへ倒し、畳の上に横になり天井を見上げる。
この政府からの喚び出しに嫌な予感がして仕方のない雪華。
以前、演習に参加していた審神者たちがコソコソと噂話をしているのを聞いたことがある。
ーー特務では刀剣を二振りほど失う、と。
殺し屋をしている時は弱みになるからと大切なものをつくらないようにしていた。しかし、審神者となってからは自分を支えてくれる刀剣達が愛しく感じ、いつしか彼らは雪華の大切な、かけがえのない存在となっていた。
「あー……、どんどんネガティブな方に考えがいきそう…」
そして、雪華は徐に体を起こして立ち上がると、書状を引き出しに仕舞って部屋を後にした。




‡手合わせ部屋‡
「ん…?おや、ぬしさま。どうかされたのですか?」
「あ…子狐?そういえば今日は子狐と倶利ちゃんが手合わせだっけか」
「その呼び方やめろ」
「えー、別にいいじゃない。燭台さんだってそう呼んでるんだし」
「まあまあ大倶利伽羅殿落ち着かれよ」
「そうだよ!落ち着きなって倶利ちゃん。よっと!」
「あ、おい!」
大倶利伽羅の僅かな隙をついて背後から彼の首に抱きつき腕を回した雪華は、落ないようにぎゅっと腕の力を少しだけ強くした。
「…………あんた本当に自由だな」
そんなことを言いつつも、背にしがみついている主である少女が落ないように自分の本体である刀を雪華の尻の下に回し、支えている大倶利伽羅。
「あ。それで本題なんだけど、もしよかったら私と手合わせしてくれないかな?」
「?ぬしさまと…ですか?」
「うん」
「急だな」
「いやね、ここ最近はずっと書類仕事ばっかりやってて身体動かしてなかったし、審神者じゃなくなった後はまた審神者になる前みたいに生計立てなきゃならないからさ…。できるだけ鈍らないようにしておきたいんだ」
「…そういえばあんたは無所属の殺し屋やってたんだったな」
「うん。そういうことなんだけど…ダメかな?」
眉尻を少し下げて上目遣いにお願いすると、意外にもあっさりと了承を得られた。
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