本
□音階
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「えー、今日も行っちゃうの?」
「だって学祭近いし、みんな力入れてるんだって。だから私ものんびりしていられないんだもん。」
HRの終わりを伝えるチャイムが鳴り、教室が一気に騒々しくなる。
生徒が次々と席を立つなか、恋愛相談を持ちかけてきた友人を振り切り、私も他の生徒と同様に立ち上がった。
「とかなんとか上手いこと言ってるけど、長谷川先輩に会いに行くんでしょう。」
「ち、違うって!」
じゃあね、と言って慌てて教室から出てきた私は、友人の言う通り同じ軽音部の先輩である、長谷川正に恋心を抱いていた。
まぁ会いに行くという理由も一理あるかもしれないが、今年の学祭に軽音部が出ることに決まったので、連日音合わせに追われている。
一分一秒が勿体なく感じて思わず廊下を小走りしてしまう。
急がなくては。
肩から掛けたスクールバックにぶら下げたキーホルダーが腰に当たってそれに気をとられてしまい、次の瞬間、私は何かにぶつかった。
ドンッ
「ぶわっ、」
「うわっ、xxxさん?」
何かに思いっきり顔面をぶつけ、頭上から降ってきた聞きなれている声に顔を上げた。