最終回ありがとう特設ページ

□初めてのひとり旅
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 「ふう…」
 心からのため息を付いた後、いつもの様に手を伸ばす。

カラン
カラン

「…あれ?」
 軽く虚しい音とともにわかったのは…


「紙がない…」
 よりによって、すっきりさっぱり、用を足した後、紙がないことに気づいたのだ。

「アル〜〜!!紙!紙取って…って、…今オレ一人じゃねぇか…!」

 身体を取り戻す旅が終わり今は新しい目標に向かって新しい旅を始めた。
 今度の旅はアルと二手に分かれて右回り、左回りで旅をしている。


 取り合えず、使えるものがないかポケットの中を確かめる。

パンの包み紙(ケチャップ付き)
研究手帳
万年筆 
緑色をしたカンカン石
電車のチケット
電車のダイヤ表

「…テッシュもハンカチもねぇ…」
 以前は毎日洗った綺麗なハンカチもちり紙も弟に持たされていたものだった。
 あまりに口うるさく言うものだから、『おまえは母親か!』と内心罵っていたが、
今そのありがたみが身に沁みる。


「使えそうなモノ…」
 パンの包み紙は…
「だめだ…」
 ケチャップと塩胡椒…たっぷりかけた

‘タバスコ’

 …これは危険。大層危険。

「後は…ダイヤ表と…研究手帳か…」
 ダイヤ表はセントラルなどの大都市でしか手に入らないアメストリス全土を詳細に網羅したもので、土砂災害などアクシデントが起こったとき乗り継ぎにかなり重宝する。

 お尻拭きになんて論外だ。

 後は…

「研究手帳…」
 白いページが半分以上を占めている。
 旅も始まりのため覚え書きもあまり書かれていないのだ。


ここは…空白ページをちり紙に錬成して…
「って…錬金術…使えねぇんだった…」
 手帳を手に持ち考える。


 手帳の紙は水に濡れても大丈夫な紙で”過酷な環境にも安心して使用できる”のがウリのディーゼル社の0254。
 旅の相棒としては心強いが、いかんせんかなりゴワゴワしている。


右手を見る。
…素手で使用後を拭く地方もあるという。
 実際砂漠越えだは「これを使え」と、砂の入った小さなバケツを渡された。
…貴重な水の代わりに砂漠らしく無尽蔵にある砂を使って後始末をしろと言うことらしい。


その時は良かった。
錬金術が使えたから。


でも今は…

両手を見る。
かの地方では左手が専用の手だった。
しかし自分は左利き。
その手でご飯を食べる。

…いや…

手で拭く前提になってるぞ?

でもこの紙で拭いたら絶対血が出る。痔になる。
…それはなんだかオトコの沽券がカンベンしてくださいと言っている。


手を見る。
手帳を見る。

もう一度、

手を見る。
手帳を見る。


…どうする!?
どうするよ!!
俺ぇぇぇっ!!!



***
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