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□第二話 それぞれの過去
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「……ん………」

アンナは、真っ暗な所に一人、立っていた。

「……此処は……?」

『お母さん!』

アンナが振り返る。
と、小さい子供と母らしき人物が居た。

『待ってよー。お母さぁん』

『早くいらっしゃい。
先に行っちゃうわよ?』

『駄目ぇ。追いてかないでぇ。』

小さな子供がとてとてと母に歩み寄る。
たまに転びそうになるのを、母が支えた。

『全く。「アンナ」は危なっかしくて見てられないわ』

『えへへー』

「………!?」

アン……ナ……!?
私!?
という事は……小さい頃の私…と…お母様……!

『お父さん止めてぇぇぇっ!!』

ハッ

アンナが考えている時、高い声が耳に突き刺さった。

『アンナ……逃げなさい!』

『嫌っ……お父さん……お母さぁぁぁんっ!!』








「!!!」

ガバッ

アンナは飛び起きた。

「はぁ……はぁ………」

アンナは胸を押さえ、呼吸を整えようとする。が、息が詰まって呼吸が整わない。

「はぁ………はぁ……………
どうして………!」

何故……あの時の夢が………今……出てくるの………!?

「嫌………嫌………」

涙が出てくる。
あの時の事、思い出したくないのに………
嫌な思い出なのに……
どうして今頃……!

「……くっ………ひっく……」

アンナが顔を覆い、泣きじゃくる。

「お母さん………お父さん………!」

お父さん、お母さん…………

「戻ってきてよぉ……!」

何も要らない。
私はお母さんとお父さんが居れば、それ以外の望みなんてない。
死んだ人は還らない。
そんな事……分かってる……。
だから……辛い………

「……どうして私は此処に居るの……?」

あの時、逃げなければ………私も死んでれば………
こんな辛い思いせずに済んだのに………

「ん………」

「!!」

アイルが呻いた。
アンナは驚き、慌てて目を擦る。

「……んー…………
アンナぁ…?」

アイルが目を擦り、片目だけでアンナを見る。

「……何?」

「何で起きてるの??」

「……別に」

アンナは冷たく言い放つ。アイルが不思議そうな顔をして、アンナを見た。

「アンナ………泣いてたの……?」

「……!」

「目……赤い……」

「五月蝿い。さっさと寝なさいよ」

「顔色も悪いよ……?」

「……るさい。寝なさいよ」

アンナがアイルから目を逸らし、冷たく突き放す。アイルは不思議に思いながらも、布団に潜った。

「……………」

アンナは布団から出て、上着を着、外に出た。

「……涼しい……」

アンナが髪をかきあげ、空を見上げる。
まだ夜中。朝も遠いから、風が冷たい。
この風が、私の心を鎮めてくれる。

「……私は……子供」

父親に見放された
可哀相な子供
とてつもなく悲しくて
辛くて
この気持ちはいつ消えるかな?
ひょっとしたら、消えないんじゃないか
そんな不安が心の中にあって
ずっと消えない
さぁ。この気持ち、癒してくれる人は現れるのか?
さぁ。今、この過去を抱え、私は生きてく。

「……生きてく………
この気持ちのまま…私は死んでいく……」

天を仰いだまま、小さな「詩」を呟く。
この詩は、母と父が居なくなった時に、自分の気持ちを表した詩。
だから、忘れない。

「……今、天に誓おう。
この気持ちを忘れず、私は生きる……」

天を仰いだまま、アンナは目を伏せる。
この事を知ってるのは……誰も居ない。
私だけが知る、私だけの過去…。
















「ふわ〜ぁ」

夜中に、アイルは起きた。

「……あれ?アンナ?」

アンナが居ない。
アイルは辺りを見回す。

「居ない……何で…?」

先程、アンナと話した。
だから、居ないのには驚いた。
あの時、アイルはアンナを見て疑問に思った事がある。

「………アンナ………泣いてた………?」

目が、赤かった。
記憶の隅に残る、泣きじゃくる声。あれはまさか……………

「……違う……よね…」

























「……お母さん。どうして死んでしまったの………?」

あの時、今も、私は神を恨んでる………。
これからも…きっと……
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