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□着せたつもりで引き裂く
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着せたつもりで引き裂く












「お前、ちゃんとわかってんだろーな。俺はお前が好きだからな。」

「うん。うん。ありがとう、ゾロ。」

優しくベッドに横たえられて、ナミは涙を流した。

「いいのか?」

細い体を下に抱きしめて、耳元で囁く。

「うん。あんたと、したい。」

ナミは応えるように分厚い背中に手を回して、言った。

私、悪い女だ。あなたが欲しい。

「あんたは、いいの?」

こんな、ふらふらしてるわたしで、いいの?

返事は返って来ず、キスがナミの唇を塞いだ。


切ないセックスが癖になってしまったと思っていたのに、愛されている実感があるセックスは今までで一番気持ちがよかった。

乱暴ではないゾロのセックスは、優しく、温かかった。

無理やり抱かれた時の引き裂かれるような胸の痛みはもう昔の記憶になっていて、自分の芯が熱く高まっているのがわかって、羞恥心で頭がおかしくなりそうだった。

優しく身体中を撫でられて、撫でられたところから蕩けていきそうな感覚に襲われて。

もっと前に、こうなれたらよかった。
自分の心のどこかで、2人の男への申し訳なさがある。

誰が悪かったのか。
どうすることが正解だったのか。

そんな思考を振り切るように、嬌声を上げて。
目の前の男に溺れて行く。

一回、二回、三回、四回と


「ちょっとあんた!バカじゃないの!?」

「ハァ!?誰がバカだ」

「何回すんのよ!!死んじゃうわよ!!」

「いい言葉だな。喘ぎながら言わせてやるよ。」

「あん!もう、やめて、ほんとに死んじゃ....!!だめっ...」

遠慮なく胸を堪能するように揉みしだいてくるゴツゴツした手。

執拗にお尻を触って、色んな体位を試されて、もう何度イッたのかわからない。

味がするのか、と思うくらい体じゅうを舐められて、まるで獣とセックスしているみたいに。

「...お前、上になれよ」

「う、ん....」

もっともっとと自分を求めてくる男が愛おしくて、それでやっと、自分が立てる気がする。

その想いに応えたいと思う。

「ナ、ミ....その動き、エロすぎだろ...」

何回もだしているからそれなりにもつはずなのに、ナミの腰の動きが艶めかし過ぎて、視覚的にも、感覚的にも限界が近づく。
グラインドするようにうねる腰に我慢できず、自分の上に乗る尻を思いきり掴んで揉んだ。

「あっ、ゾロそれだめ...!」

自分の与える快楽に耐えながら、自分の下で息を漏らす男を見て、ナミは愛しさが込み上げて来るのを感じていた。

相手を支配する感覚に背筋がぞくぞくする。
自分の胸の先で相手の胸の先を擦って、首筋を舐めていると、息を我慢しきれない男はナミごと体を起こした。

入ったまま抱きしめ合ってキスして、目がとろんとする。

貪欲に求められてまた、女は美しくなった。

イきたくて腰を振ってねだれば、男は堪らないという様子で敏感なところを突き上げた。




求められなければ、弱くなる。
臆病な女は特に。







結局朝まで抱かれ続けて、ナミがゾロの腕の中で起きたのは、もうすっかり太陽の登った頃だった。

裸の逞しい胸板を見て、深かったのだろう傷痕に触れる。
アーロンパークで、これを蹴ったこともあったな、と思った。まだこの傷が塞がらないうちに傷口を殴ったことも。
それでも、何も言わなかった。
私への信頼に、命をかけて海に飛び込んだ。

憎まれ口しか叩かないから、わからないわよ。

どうして、こいつの愛情はこんなにわかりにくかったんだろう。

どうして、気づけなかったんだろう。
ずっと見ていたのに、臆病で。

男の肌を指先で堪能するのは楽しかったが、そろそろ起きようと腰が砕けそうな体を起こす。


太陽が照らす街を見下ろしてシャワーを浴びようとすると、テーブルの宝石が目に入った。
光を受けてキラキラと光っているのが、上物だと主張している。


あの2人は、どうなったんだろう。
何かあったかもしれないし、何もなかったかもしれない。

ナミはまだ寝こけているゾロを見てからシャワーを浴び、バスローブを羽織って昨夜のドレスを着ようとした。

ナミはポケットから名刺の束を取り出す。
昨日隣に座った男、リーガル・ベンジーの懐からスったものだ。
酒場に不似合いなスーツで金をばら撒いた男は、いくら女を口説くと言っても、行動が怪しい。

金持ちには情報が集まることが多いので、声をかけてきた金持ちそうな男の素性はいつも調べることにしているナミは、歯ブラシを口に突っ込みながら名刺に目を通した。

トミー・レディング
フランツ・ボナパルタ
アンディー・ヤンソン....

ロキシー・ヘイワース

聞き覚えがあるな、とナミは思いながら名刺を改めた。
どこかおかしい。
電話番号が全て一緒だ。
改めると同じ名刺を何枚かずつ持ち歩いている。自分の名刺の束でないのなら、関係者の名刺を取ったはずだったのに。

ーー偽名だ。

そして、ヘイワースの名。


ロキシー・ヘイワースだけ、名刺の枚数が多いこと。

リタ・ヘイワースの夫?
死んでいない。
仮に、もしそうだとして、

ーー私にぶつかって来たのは、偶然じゃない?

じゃあサンジがリタを運んだのも偶然じゃないと言うこと。

私たちは、賞金首なのだ。
それも高額の。


まさか。

細い指で口元を覆う。

私のせいで。


ナミは急いで着替え、しっかりと武器が太ももに装着されていることを確認すると、慌てて部屋を後にした。









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