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□8.探すから見つからない
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さがみつ








ああ、そんなつもりじゃなかったのに。

見張りしないといけないのに。



自分のものになったことがまだ信じられず、サンジはナミに集中していた。

どうしたらもっともっと、この人に幸せになってもらえるか。

きっといつまでも、信じられないのは俺の方だ。

こんなに大好きな人が自分を好きになってくれるなんて、幸福が大き過ぎて受け止め切れない。

だから、肌を合わせて、嬌声を聞いて、やっと安心できるんじゃないかと言う気がしていた。


「私ね、サンジくんのセックスも好き。」

キャミソールの紐を肩から外していると、耳を疑うようなセリフが飛び込んで来た。

ハッとしてナミの顔を見ると、自分が失言したと思ったのか一瞬で赤くなった顔があった。

「い、今なんて.....」

「....!言わないわよ!もう!」

「え、お願いナミさん....」

今なんて。

自分から背ける真っ赤な顔を両手でこちらに向けさせると、こういうとこ、と小さい声で言った。

「サンジくんは、普段は全身全霊で下僕のくせに、え、エッチの時は...けっこうぐいぐい来るって言うか、私の好きにさせてくれなくて、こんな感じでちょっと動きを制限されたり、してくるのが、なんか意外で...」

それが、好きだと。

何だか嬉し過ぎて舞い上がってしまいそうだったが、真っ赤になって教えてくれる彼女もかわいくて、それならともっと意地悪してやりたくなる。

「それで感じちゃうの?」

羞恥心をいっぱいに煽る言葉を囁いて、ナミが言葉を失うのを楽しそうに見る。

あーーー可愛い。

「へー、ナミさん、Sな男が好きなんだ。」

楽しい。
楽し過ぎる。

自分の中のサディズムが頭をもたげて、びくびくと責められる快感に震える彼女を抱きしめた。

「命令されるのも嫌いじゃないんでしょ。」

そうだ。その通りだ。

「じゃあ、俺を脱がせて。」

とろりとした目をして頷いたナミがサンジのベルトに手をかける。

金属がカチャカチャ立てる音に、興奮で頭がどうにかなりそうだった。

半裸の男女が見つめ合って、ナミが次は、次はどうすればという目で見てくる。

愛されている。
求められている。

体は興奮しているが、心も幸福で満たされていた。

サンジは思わずナミにキスをして、じゃあ次は、と言った。


「俺を、ずっと好きでいて。」


その目が余りに真摯で、ナミは胸が震えるのを感じた。


「ああ、サンジくん...!」


大好き。


あなたの特別になって、あなたの側にいたい。









ーー結局寒かったので、一回しただけで服を着て毛布に逃げ込んだ。


サンジの足の間に座って、物言わぬ海を見る。
背中があったかくて、指先まで温もっている。

毛布にくるまるが、ナミの足先だけは外に出ていて、サンジがナミの靴を見て言った。

「ナミさんその靴も素敵だね。似合ってる。」

まるでレースのように繊細なデザインで、華奢なヒールはお世辞にも歩きやすいとは言えないが、勝負の日にしか履かない程度にはナミもこれを気に入っていた。

何てったって17万もしましたから。

手入れも怠らず、滅多に履かない。

「この靴はね。」

ナミは目を閉じてふ、と笑った。


「どっかの誰かさんがデート中に他の女を抱き上げて、この私を後ろからついて歩かせるという許しがたい暴挙に出た時に、泥だらけになった服と靴を替えるために買った靴よ。
これが17万、ドレスが30万、ショールが20万、その日のホテル代が6万ベリー。しめて73万ベリーにちょっと色をつけて、100万ベリーあなたに請求します。」

「おおお....」

突然27万ベリーも色をつけられたこともそうだが、ナミのふつふつとした怒りを感じてサンジは戦慄した。(ホテル代も払ってないって言ってなかったか?)

あの時は相当ヤケになっていた。

機嫌を取るようにナミの髪を梳くと、息を吐く気配がしたので恐る恐る口を開く。

「...分割でお願いします。」

「いいわよ。利息がトイチでつくけどね。」

それどんな悪徳金融?

そう思いながら、ナミになら借金を返し続ける人生も悪くないな、と思って、サンジは恋人の後頭部にキスをしたのだった。












探すから見つからない。
答えはいつも心の側にあるというのに。



End
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