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□カイドウ討伐☆プロジェクト
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カイドウ討伐☆プロジェクト
ルナロ1
カイドウ討伐プロジェクト☆に取り組んでいる真っ最中の麦わらの一味、及びハート海賊団の同盟船たちは、大海原を並走して航海していた。
やっと合流できた、と息を吐くのは麦わらが誇る凄腕の航海士だ。
もう何年も、離れていたような気がする。
ーーもう離れたくない。
普段は動物で子供のような船長を見て、ナミは顔を赤くした。
我ながら可愛い乙女だと思う。
何度もルフィの強さを目の当たりにして来て、故郷を解放してくれたあの日から、ルフィは自分の中で特別な存在になった。
それが愛なのか、恋なのかはわからない。
しかし、特別であることは間違えようのない事実だった。
離れたくない。
現に、何かある度に、何もなくても、ナミは自然とルフィの側にいた。
それが、一番自分らしくいられる場所だから。
さて、船長の側にいると言うことは、向こうの船長と接する機会も多い。
情報を共有し、進路を決め、だんだんローがどういう男かがわかってきたような気がする。
ハートの海賊団のクルーたちは船長があんななのにウチに似てお気楽陽気なメンバーだし、ベポとチョッパーは気が合っている。
ジャンバールとウソップは話が合うようだし、私は潜水艦の動力や海流を捉える仕組みに興味があった。
また深海をコーティング船で航海しないとも限らないし、学ぶことは多い。
何らかの因縁をつけた宴の折に、シャチにその話をすると、じゃあ見に来れば?と話がまとまった。
「ちょっと待て〜い!潜水艦の仕組みのことなら、俺も興味があるぜ。」
「あ、おれもおれも!」
フランキーとウソップが手を挙げる。
チョッパーも医学誌を見たいと言い、そう言うことならとシャチが張り切ってハートの潜水艦見学ツアーを開催したのだった。
ちなみにルフィはお医者さんの匂いが苦手だし、内装(と言うかダイニング)は戦争時助けられた際に知っているからと言ってまさかの不参加。
ブルックはお医者さんの白衣がコワイと言って不参加。(自分も白いのに...)
サンジは綺麗なお姉さんがいないと忙しいし行く意味ないと言い、ゾロは寝ていたし、ロビンは軍手にスコップを持って行ってらっしゃいと言った。
そんな訳で船と船に渡された橋をツアーコンダクターのように旗を持って先導するシャチに引き続き、チョッパー、ナミ、ウソップ、フランキーが何の緊張感もなくこんにちは〜!と言って船にお邪魔するのを、何故か肩をずりっと落としたローが見ていた。
「お前、船長の言質は取ったのか?」
ペンギンが小さい旗を持つシャチに寄ってきてこそこそと喋った。
「言ったよ。ナミが船見たいから連れて来ていいかって聞いたし。」
「それにしては何であんなコワイ目で見てんだよ。」
「あれはいつも通りだろ。」
「いや、俺なんか嫌な予感するんだよな。」
「まさか〜。キャプテンああ見えて優しいし、大丈夫だって。」
シャチはお気楽に笑っている。
結局そのまま船内に入ると、ナミは潜水艦の構造に感嘆の声を上げた。
木造の船とは違う質感がある。
「これは、やっぱり相当投資が必要だったでしょうね。海賊始める時どこから資金を調達したのかしら、トラ男くんは。」
「あー、わかんないけど、キャプテン賢いし、色々あってこうなったんじゃないかな?隠形もし易いし、死の外科医だし。ほら、ロッキーポート事件って知ってる?」
「よく知らないの。ねぇ、換気とか、湿気の調節とかはどうしてるの。潜水艦だと空調大切よね?」
「ああ、それはこっちの部屋に...」
あべこべな返答を返すシャチに、ナミが更に質問をし、推進装置や空調を含む、システム部屋らしき場所を見せてもらう。
「なるほどね....ウチの船の財務担当としては、いい空調入れたかったけど、予算がね...」
「オウ、ナミ、ちょっと待て!俺を誰だと思ってる。ちょっと構造を理解すれば、空調設備だってお手の物だぜ!手伝えウソップ!」
「さすがね、フランキー!」
やった!お金を使わなくて済んだ!とばかりに親指を立てるナミ。
するとチョッパーが約束の医学誌を持って現れたローに気づき、パァっと表情を明るくした。
「持って来てくれたのかー!ありがとな、トラ男〜!」
「.......」
相変わらずチョッパーとの接し方がいまひとつわからない様子のローが、黙って本を差し出す。
きちんと両手で受け取ったチョッパーは、ペラペラとページをめくり始めた。
するとローが航海士であるナミの方を見る。
「お前が見たいのは操舵系統だろう。こっちだ。」
「あ、うん。」
ナミはローに従って続いた。
思わぬところで思わぬ人物と二人になってしまったが、それなりに過ごした時間も長いのでナミはなんの危機感も持っていなかった。
もうほとんど仲間のような気安ささえある。
狭い廊下を歩いていると、ローは思い出したようにぴたりと止まり、振り向いて海図は見たいかと聞いた。
「え?」
「この船は海底追随航法と言って、海図と慣性航法装置を使って潜行する。この航法には海図の精度が何より重要で、お前も海図を描くなら興味があるかと思ったんだが?」
「ある!あるわ!見たいです!」
挑むように言って、ナミは手を上げた。
私だって、自分の描く海図の精度には自信がある。
でもローが言うようにこの船では潜行中、命にも関わる重要な地図なのだから、それにどれほどの精度が求められるのか興味があった。
ナミはメモを取りながら部屋に入り、その資料の膨大さに愕然とした。
「こんなにたくさん...」
「世界中の海を潜行するなら必要だ。」
ナミはすぐに地図を広げさせてもらい、その横に両手をついた。
「うん、いい仕事してるわ。」
「これを調査する、或いは集める、燃料を補給する、破損部位を点検する、ソナーも使う生活空間も確保する...まあ潜水艦は問題が多い。」
「ウチが今すぐ潜水艦を持つのは無理だわ、絶対」
はは、と笑ってナミが言った。
「麦わら屋の船の方が快適だろう。なんでウチが見たいと思ったんだ?」
ローが腕を組み、壁に背中を預けながら言う。
ナミは少し考えて言った。
「....海で生きるのは」
琥珀色の瞳の奥が光った気がした。
「私がこれと決めた道だし、海に関わることで知らなくていいことなんか、ないかなって思って。」
ローはナミの横顔を見た。
初めてこんなにまじまじと。
「まあまたコーティング船で深海に行かないとも限らないし、海流の捉え方とか、きっと参考になるわよね。」
地図をめくりながら笑って、私は航海士だからと言う女を見ると、後光が射すほど美しかった。
ローにとって好ましいと言う気がした。
そうだ。今まで何故かずっと目が離せなかった。
麦わら屋の隣にいる時、雨を予報する時、みかんの木に笑う時、漠然と見ていた気持ちが形になって現れた気がした。
その時、電気が消えて部屋は真っ暗になる。
潜水艦はそう、窓もないので電気が消えれば光はない。
火器も厳禁なので頼るものが何もない。
「と、トラ男く....」
ナミが心細そうに暗闇で声を上げた。
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