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□テヘペロ
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テヘペロ
ルナロ3
「やだっ....」
体を丁寧に撫でられている。
言質が得られないなら、得るようにするまでだ。
非合意は望まない。
時間はたっぷりある。
膝に座らせているので少し捲り上がったスカートから伸びる太ももを摩る。
名目上は、熱を発生させる為の動作だと感じさせるギリギリの手つきだ。
剥き出しの腕、くびれた腰、髪に埋もれたうなじ。
丁寧に丁寧に触れて、それでもカラダの芯には絶対に触れない。
相手が請うまでは必ず。
事を急きたいのはやまやまだが、自分の上に座る尻を眺めているのも、なかなか気分がいい。
じっくり、じっくりと、相手が手の中に堕ちてくるのを待つのだ。
手術台に堕ちてくるのを待つのだ。
ーーこれはもう、勝負なのね。
腕や足、腹を触るのに、胸に触れてくれない。
背中に唇を寄せるのに、うなじにキスしてくれない。
腰に手を回すのに、お尻を触ってくれない。
ーー私、一体何と闘ってるのよ。
だんだん腹が立ってきて、でもやっぱりローの言った通り、寒さではなく熱さが体にやって来ていて、ナミは眉を寄せた。
私が欲しいと言えば、ローの勝ち。
私が我慢できれば、私の勝ち。
何それ、私、不利だ。
だってもうずっと濡れてるのに。
体に温もりが伝わって来た時から、体が勝手にそうなり始めた。
だって、ローが変なこと言うから。
俺の女になって欲しいとか。
私、なんなの、どうしたらいいの。
体がぽかぽかする。
芯がうずうずする。
逃げないと、と思うのに。
このまま座ってたら大変なことになるのに。
「ロー、ねえ、」
「なんだ」
「なんで触ってくれないの?」
ローの脳が揺れた。
こいつは人に火を点けるのが本当に得意らしい。
「....なんのことだ?」
とぼけるローに、口角を上げて笑った気配。
「他に触りたいとこ、ないの?」
「は.......」
こいつは俺に勝とうとしている。
不利な状態を五分に持って来ようとして。
私が欲しいと言えばローの勝ち。
ローが欲しいと言えば私の勝ち。
こうでないと。
ナミは髪を片側に寄せて、うなじを見せ、少し振り向いてにっこりした。
私が勝つなら、かわいそうな敗者に施しをしてやってもいいという気分だった。
「...お前はないのか?」
ナミの腹をさすりながらローが言った。
「例えば、どこ?」
「例えば......」
「言って。」
有無を言わせないトーンでナミが言うと、ローの心臓は早鐘を打った。
何だこれ。負ける。
「例えば、これ?」
ナミがローの股間を指差す。
状態はご想像にお任せする。
「これに、触るとか?」
ナミが触るふりで指で空に円を描く。
「舐めるとか?」
プイと振り向くナミから視線を外すと、ナミが強いトーンで言った。
「ロー、私を見て。」
「ねぇ。」
「......っ...!!」
負けそうで、悪足掻きでナミの頬に触れた。
顔を良く見る為に顔にかかる髪を耳にかける。
すると、
「.....ぁっ、」
きつく閉じた目と、口から漏れる声。
何だ?耳か?
タイムラグがあって、かーっと真っ赤になるナミの顔。
しまった。
声が。
ばっと背中を向けるので、太ももを触ってやると、今度は目に見えてビクリとした。
平静を装わなきゃと思うのに、思えば思うほど耳に触れた手がきっかけで反応してしまう。
ローの手が、腹を、脚を触ってくる。
絶対に芯に触れてくれないのに。
もうやだ。
負けでいい。
もうどうなってもいいから、気持ちよくなりたい。
胸も、どこも、触って欲しい。
キスして、体の奥まで犯して欲しい。
「ろぉ....ねぇ、もうお願い、触って、お願いだから。」
両手で顔を覆って、体温を殊更上げたナミが恥ずかしそうに言った。
男として最大の高揚感があった。
可愛くて可愛くてしょうがなかった。
よく今まで我慢したと、褒めてやりたい。ナミも、自分も。
「いいのか?」
「うん、いい....!は、はやく、ロー」
「どこを?」
俯くので落ちた髪をまた耳にかけてやる。
「...っぁ、!ぜ、全部!もう負けでいい!お願いだから、いじわるしないで」
そう言われると、もっと意地悪くしてやりたくなる。
「....冷たい。」
「...!!」
「濡れてるな?ナミ」
「〜〜〜!!」
ずっと膝に乗っていたのだから、もう布越しに温かい水分が浸透していた。
羞恥心でおかしくなりそうなナミは、俯いてプルプル震えている。
「顔を見せろ。」
もう素直なもんだ。
涙ぐむ顔を見せて、体を捻るので胸の先端を摘んだ。
キスを我慢したのは、感じる顔が見たかったからだった。
既に硬くなっていた胸の先は、触れられた途端、電気が走ったように快感を伝え、目をきつく瞑ったナミはビクビクと痙攣した。
胸だけでいったのだ。
ビクビク震えるナミを見て、男にとてつもない満足感がもたらされた。
「んぁあっ、ダメ...!」
「何がだめだ。胸だけでいったな。淫乱なやつだ。」
楽しくて楽しくて仕方がない。
言葉だけでも羞恥に震える女を、今度は前を向かせて、自分に跨らせる。
そして髪に触れ、キスしようとした瞬間。
バチン!
パッ
電気が灯って部屋が明るく照らされた。
『おーい、お前ら、生きてるか〜?』
フランキーの間の抜けた声が響く。
ナミは誰かに見られた訳でもないのにローから飛び退き、どーんと両手を突き出してローを椅子から転げ落とした。
「ふ、ふ、フランキー!!!直った!?直ったの!?」
『直ったって言うか〜、老朽化でもなんでもなく、俺とウソップが配線引っこ抜いちゃっただけでした☆スーパーすまんかった。』
またもや管の向こうでテヘペロしている気配があり、ナミはわなわなと震えた。
ローはあまりのバッドタイミングに茫然自失の状態だ。
これで終わりか?
そんな殺生な。
ナミの首根っこをがっと掴むと、船全体をRoomで包んで自室へ移動した。
パッ
「....は!?なに!?」
どこ、ここ!!と叫ぶナミにローがさも当たり前のように言った。
「俺の自室だ。」
そう言うと、上半身を覆う服をがばっと脱いで、暖をとるために布団に潜り込んだ。
「さあ、来い。」
ポンポン、と布団を叩くローに、ナミがわなわなと震えた。
「さあ、来い。じゃ!!なーーーーい!!!!」
潜水艦に、ナミの絶叫がこだました。
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