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□The Halloween
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The Halloween





1.バンパイアルフィ


「ねールフィ、本当にやるの?」

ハローウィンとは、異国の地のお祭りだ。死者を鎮めるために異形に扮して健勝を願う子供の祭り。

子供の祭りと言うからには、ルフィがやりたがるのも無理はないなと思うが、(どうせお菓子がもらえるとかそんな情報を聞きつけて言い出したのだろう)何せここは船の上なので、用意できる仮装にも限度がある。

そう言ったイベントが好きなウソップが有り合わせで衣装を作ってくれたけれど、シーツのおばけや簡素なかぼちゃ、ドラキュラ伯爵のマントなど、子供のお遊びに毛が生えたようなものだ。

それでもルフィが楽しそうなので付き合うナミなのだったが。

「おれこれ!絶対これ!マント!どうだ!?」

「はいはい、かっこいいかっこいい。」

犬歯に鋭い牙をつけた笑顔のルフィをちらりと見て、ナミは男児をなだめすかすように声をかけながら、髪の色と同じオレンジだし、カボチャのおばけに扮しようと袖を通した。

普段体の線が出ない服なんて絶対に着ないナミは、たまには新鮮かもなんて思って布を纏う。

色んな衣装を着るのは嫌いではないから、ルフィの気が済むまでちょっとサンジやロビンからお菓子をもらうのを付き合って...

そんな風に考えていると、ルフィが必要以上に近くにいたので、ナミは思わず後ずさった。

「なっ、なに!?」

「よし。ナミ、お菓子。」

「あんたおばけにもお菓子を要求する気?!」

いたずらされては敵わぬと、胸元に手を伸ばすと、一応忍ばせていたはずの飴玉がない。
さっきかわいいおばけのチョッパーにあげてしまったのだった。

「なんだ、そこか。」

遠慮なしにルフィの手が胸の谷間に伸びる。

「....!!あんた何ヒトの胸元に手突っ込んでんのよ!!!」

「ん、ないぞ。」

胸もとをごそごそまさぐるルフィの手。
その手は最初から遠慮なんてなくて、下着の中に侵入して胸の先を摘んだ。

「お、あったあった。」

「んぁっ!なにがよ!!」

「お前かぼちゃだし、おれに食べられても文句言えねえからな。お菓子くれねーし、これはおれのせーとーなケンリだ!」

「何もっともらしいこと言ってんのよ!ばかじゃないの!?」

まさか最初からこれが目的で...!?
ナミの呟きは真っ黒なマントに隠されて消えた。







2.フランケンゾロ


「アハハハハ!!あんたそれ似合いすぎ!」

頭に太いネジを刺された風貌のゾロは、クルーみんなにハマっていると揶揄されてうんざりしていた。

祭りだかなんだか知らねーが、くだらねえ。
笑いながらすれ違って行くナミに憮然とした表情を返して思う。

しかし、ゾロは見つけてしまった。
ネコに扮したナミの、セクシーな尻からぴょこりと伸びる尻尾。
ふわふわの黒猫の毛は胸と腰しか隠していなくて、相変わらず他の男に見られでもしたら大変なことになる格好を好む女だ。

くだらねえが、これはエロくて悪くねえ。

ゾロは尻尾をむんずと掴むと、突然行く手を阻まれたネコはびっくりして振り向いた。

「なに!?」

「その格好でコックやらの前に行くのを許可することは出来ない。」

「え?」

「猫は猫らしく」

尻尾を引かれると、尻尾とくっ付いたパンツがピンと張って声がでた。

「あっ、」

「ニャーニャー言っとけ。」

その晩2人が現れることはなかった。








3.ゾンビサンジ




「サンジくんってほんっと何やらしても器用よね。」

ゾンビメイクに余念のないサンジのクオリティはもはや本物かと見紛うほど。

「え、そう?」

「料理はもちろんだけど、掃除洗濯一定以上のレベルでこなすし、何でもできちゃうじゃない。それもすごいリアル。」

サンジの頬の裂けたようなメイクを指差して、ナミが身を乗り出すので悪い男の顔が覗きそうになる。

「えー、そんなに褒められると、照れる。ご褒美くれる?ナミさん。」

「ないわよ、バカ。」

笑いながらあしらうナミ。

「ゾンビの演技させてもリアルで怖そうだし。夜になったら私に近寄らないでね、コワイから。」

「ヴオー!!」

「だからやめてって!」

机に頬杖をついて、悪戯に笑うナミに、完全に悪い男が顔を出す。
だってナミさん、夜になったら近寄らないでなんて、殺生な。

「ヴ、ヴア」

「なに、ちょっとこわい!」

ゾンビメイクのサンジはいつもの清潔感のある風貌と違って、野性的でワイルドだ。
色んな意味でドキッとしたナミは迫ってくる男の肩を押し返そうとするが、ゾンビに扮したサンジはびくともしてくれない。

サンジはナミの肩を噛んで、しゃぶった。
ゾンビがするように人間の肉を甘噛みし、舐めるというよりはなぶるように肌を吸い上げて、柔らかな肌を噛みながら堪能していく。

「あんっ、もう、ふざけないで...」

言葉は通じない設定なので答えてもくれない。
いつもと違う刺激にぞくぞくとした興奮が、無力な人間の女を襲った。

ゾンビはナミの体を余すところなく噛み尽くそうとして、太ももにかぶりついた辺りで丁度ダイニングに入って来たゾロに中断させられ、サンジは泣きながらゾロと交戦したのだった。







4.マミーロー



「はいっ、ローはこれね!」

幅広の包帯をムチのようにビシッと持ったナミは、笑顔でローの部屋にやって来ました。

「は...?なに言って....」

「厄除けなのよ?郷に入っては郷に従いなさいよ。それに包帯は慣れてるでしょ?」

郷って同盟のことか...?それではその言葉は当てはまらないと思いながら、ローは寝転んで本を読んでいた手を止めた。

いや、とんでもなくいいことを思いついた。

「条件が2つある。」

「聞いてあげましょう?」

珍しく聞いてくれそうなナミにニヤリと笑う。

「自分では巻きにくい。お前が巻いてくれ。」

「そんなこと?いいわよ。」

「よし。」

そう言うと重かった腰を直ぐに上げてローは服を脱ぎだした。

「なっ、何してんの...!?」

「何がだ?」

上半身を脱ぎズボンを脱ぎ、果ては下着まで手をかけようとした男の手をがしりと掴んでとめる。
こうしなければそれまでの脱ぎっぷりからして間に合わないと思った。

「待って待ってストップ!!なんで下着まで脱ごうとするのよ!?」

「肉を薬漬けにして保存するのがミイラなんだから全裸が当たり前じゃないのか。」

「いやいや!誰がそこまで本格を求めたのよ!」

下着を取ろうとするローとさせまいとするナミがせめぎ合っている。
露出狂だ。変態だ。もしかしなくても見せたいのか。

見せたいローと見たくないナミの仁義なき戦い。

そのままベッドに倒れることになり、色んなtoラブるがあった結果ナミは目の前の光景に真っ赤になった。

結局ローに下着を履かせることには成功したが、ナミに真っ赤な顔で包帯を巻かせると言うプレイが見事に実現したローはご満悦だった。

ナミは大分憔悴したが立派なマミーになった男は、さて、と言って引き出しから医療用の自前の包帯を取り出す。

「もう一つの条件は、お前にも包帯を巻くことだ。」

サーと顔が青くなったナミの衣服を剥ぎ取り、いやらしくねちっこく包帯を巻いたが、結局2人が部屋を出てくることはなかった。





5.魔女ロビン




「ねえ、今年はお揃いにしましょうよ。」

ナミが笑顔で言い、ロビンはお揃いと言う響きにワクワクした。

「お揃い。いいわね。」

「魔女の衣装かわいいし、2人ともセクシーだから似合うと思う!じゃあ用意しとくからね。」

そしてあっと言う間に当日が来た。

「んナーミすゎーんとるぉびんちゅわーん!かわいいいいいぃぃ!!!セクシー!!!2人とも俺のそばに!!」

「ふふ、ありがとう。」

無視するナミに笑顔のロビン。
2人とも魔女の帽子を被って、網タイツに黒いマントをつけている。

お揃いなんて、なんて楽しいの。


「キャーーー!!」

そう思っていたのに、居候のキンエモンとルフィがやらかして、被害を受けたのはまさかのナミだった。

ナミの衣装が狐火に焼かれ、皮膚は無事だが全裸になっている。

慌ててロビンが胸や腰を覆うように手を生やして隠したが、彼女は怒っていた。

せっかくのお揃いだったのに。

ひどいことするわ。

ロビンはキンエモンをサブミッションでキめ、ルフィを捕まえて往復ビンタした。
ナミのことになると容赦がないと、クルーが心に刻んだ日だった。

「すびばぜんでした!!!」
「もうしませんでござ、る....」

謝られても、お揃いはもう戻らない...

ロビンはがっくりしてナミの方を見ると、隠す手も肌色だし、あまりお見せできない格好のナミが困っているのが目に入った。

ロビンは困っている顔を見るのも好きなので、いくらか慰められて、試しに生やした手で胸を揉んでみた。

「ひゃっ!?」

「サンジが鼻から出血し過ぎて倒れたーーー!!医者ーーー!!っておれだーーー!!」

「さすが手練手管の花魁でござる」

「ちょっと!!ロビン!!なにす...あっ!」

「サンジーーー!!死ぬなーーー!!」

ナミが自分にだけは本気で怒らないことをわかっているロビンは、にこにこと笑ってハローウィンを楽しんだのだった。

(服は着ました。)






6.うさみみドフィ



この島の金の流れを仕切るのは、あのクラブのオーナーだと言う情報を仕入れ、裏口から日雇いの女に混じって潜入したナミは、ジロジロと見てくる女たちに道を譲られるのを見られて、直ぐにVIPルームへ行くよう指示された。

今日はハローウィンなので衣装も様々だが、マネージャーに渡されたのはまさかのバニーガール。

あ、でも可愛いから嫌いじゃないと思いながら、金の匂いの出どころを探すために部屋に入ると。

そこには鮮やかなピンクのフラミンゴのようなコートを羽織った男が、相当の美女を何人も侍らせていた。

カツカツと後ろからその男に近づくと、男の方がナミに気づいて首だけで振り返った。

「.....あ?お前......」

そしてナミも気づいた。
この男、ドンキホーテ・ドフラミンゴだ。
現七武海、ドレスローザ国王の肩書きを持つ、闇のブローカーその名もジョーカー。
これがナミの知るこの男の全てだった。

「お前らはもういい。しばらく人払いさせろ。」

ドフラミンゴがそう言うと、お尻丸出しの美女などが消えて部屋にはナミと男の2人になった。

こんな馬鹿馬鹿しい格好をしている場合じゃない。
素性がわかればどうなるかわからない。

ナミは平静を装うが通用するかどうか。

「お前、麦わらの一味の泥棒猫ナミだな。」

闇の売人たるもの、自身の持つ情報量が命だ。
あっさり顔を割られて、ナミは頭を抱える。

どうしよう。手っ取り早くお金持ちからお金をいただきたかっただけなのに。

「何が目的だ。一人で潜入とは随分肝が据わった女だな?」

肝なんか据わっちゃいないが、船には金がないのだから仕方がない。
ナミはいいように話が転がることを信じて正直に話した。
大物相手に小細工は無用だと心得ている。

「ウチ、貧乏なのよ。略奪もしないし、お金が必要なの。ここなら島中の金持ちが集まるだろうから、ちょっと頂こうと思って来たの。」

「それはそれは....」

ドフラミンゴはフッフッと笑った。

「ご苦労なことで、泣けてくるなァ。」

「私は海賊専門の泥棒なの。よろしくね、ドフラミンゴさん。」

「金が稼ぎたいなら仕事を紹介してやろうか?お前ほどの女なら一晩で幾らでも稼げるだろう」

楽しそうに笑うドフラミンゴにナミは急いでこの場を殺されずに逃げる方法を考える。

「生憎体は売らない主義なの。でも、賭けは好きよ。乗らない?」

ドフラミンゴに近づいたが、サングラスの奥の瞳は見えない。

「賭けるものを聞かずに乗るバカはいねぇだろう。」

「私が勝ったら、この場を生きて帰れることと、1億ベリー欲しい。」

「フッフッ、強欲な女だ。」

「俺が勝ったらお前の一晩をもらうぞ。俺は無欲な男だからな。」



コインを投げて、シンプルに裏か表に賭ける。
私は賭けにも強い。大丈夫。

ドフラミンゴはニヤニヤ笑って、不正を防ぐためナミが渡したコインを弄びながら、その格好は、似合ってないなと言った。

正直滅茶苦茶似合っているし可愛くてセクシーだと思っていたナミは、不満気な顔をしたがその次の言葉に驚く。

「お前は頭が空っぽな女と違って、知的で気位が高い。そんな女にウサギは似合わない。」

何故か顔が赤くなってしまって、ナミは俯いてドフラミンゴの手元を見た。
ーーコインをすり替えたところを見てしまった。


がし。

すり替えた手を掴んで上目遣いする。

「あら、そんな甘言耳が痛いわ。あと、賭けはフェアに行かなくっちゃね?」

「フッ、フッフッフッフッ!」

「負けだよ、ナミ、俺の女にならねえか?」

「何人もいる女の一人になるほど、私は自分の人生捨てちゃいないの。」

でも、とナミは言う。

「あんなに女を侍らすなんて、意外とあんたの方が、これが似合うんじゃないかしら。」

ウサギの耳を、自分の頭から外してドフラミンゴにつけてやる。

ウサギはさみしいと死んでしまう生き物だから。

ぽかんとした、さみしがり屋のドフラミンゴに勝機と逃げるナミ。

結局一文にもならなかったが、部屋に残された男は残念ながら、泥棒猫に心を盗まれてしまったらしかった。








End





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