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□15.三角関係の隠れ蓑
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15.三角関係の隠れ蓑









「....と、言うわけだから。」

「おいおい.....」

二人の船長から逃れて真っ直ぐペンギンの横に来たナミは、話、聞いてたんでしょ?とばかりに隣で壁にもたれた。
ペンギンは驚いて息を吐いた。

「...もう、俺には会いたくないだろうと思ってた。」

「会いたくなかったわよ!でも、それよりも会いたくない奴が来たの!二人も!」

見てたんでしょ、と言ってナミはため息を吐く。

「全部聞こえてた。」

「あのルフィの大声じゃね....騒がしいからあの辺の人達には聞こえてないと思うけど。」

甲板の先ではウソップやチョッパーがジャンバールに向けてクラッカーを鳴らしているところだった。
ブルックが演奏して、ハートの面々も酒盛りに参加している。

「.....良かったのか?」

あらゆる意味でペンギンは聞いた。
ナミはうちのキャプテンが好きなのだと思っていたから、本当は想い合っている二人が関係を拗らせていいものかと。
そして隠れ蓑にするのが自分でも良かったのかと。

「別にサンジでもゾロでも誰でも良かったけど、あんたがこっち見てたから。とにかく、あの二人に振り回されるのはもうごめんなの。あんたは常識的だしわきまえてるから、信用できるし。別に彼女とか嫁とかいないなら、名前だけ貸しときなさいよ。ね、かわいいから許して」




あーーー切ねえーーー

ウインクするナミにペンギンは表情一つ変えずに心の中で悪態をついた。

こんなの、死刑宣告みたいだ。
おいしいのに、美味しい立場なのに対象外宣言。

俺がナミを本気で好きな可能性とか、全く考慮されていない。

きっと、心よりもまず体の関係を持ってしまったから、俺の恋愛対象に自分は外れていると思っているような気がする。

そういう真面目さが、この娘にはある。
うちの船長に似ていて、律儀で生真面目なところが好きなのに。

ーーまあいいか。
名目だけでも、この娘の役に立てるなら。
役に立てるなら、立とうと思った。


「....船長のこと、好きなんじゃないのか。」

ナミは俯いた。

「ローのこと?....もう、あんたに隠しても仕方ないから言うけど、私、断られたの。散々その気にさせて、もてあそばれたの。私勘違いして...でも、俺の女にしたいとか言うんだもん。なのに、手は出さないの。私、もう自信ない....女として魅力ないって言われたみたいで」

ナミはちょっと目尻を拭って言った。

「ルフィだって、私のこと好きとか言うくせに、次の日にはそんなこと言ったっけ?って。今さら思い出されても、困るのよ。ローに振り回されてルフィに振り回されてもううんざり。
どんどん自信なくなって来ちゃって...ああ、私ってそんなもんなんだって。あんたは優しいから、その、あの時してくれたのかもしれないけど.....」

真っ赤になって俯くナミに、心臓が痛くなった。

違う。

俺がお前を好きだからだよ。

でも、こう言ったらもっと困るんだろうから、言えねぇんだよ。



「船長がお前を断ったのは....お前のことが本当に好きだからじゃないのか。」


本当に、心が欲しいと思ったから。


ぽつりと呟いたペンギンの言葉に、え?とナミが聞き返そうとしたその時、酔っ払ったシャチが二人に絡んできた。

「おいおいお二人さん!なに親密に話し込んでるんだよ〜!さてはデキてんのか!?」

「いやいや違...」

「うん、そうよ。」

さも当然のようにナミが頷いた。

「え、うっそ、マジ!?お前それ、船長から女盗るってどんだけ〜!」

「私ローとは何もないって何回言ったらわかるの?」

ナミが眉をぴくぴくさせてシャチを殴りそうになるが、酔っ払いの戯言とペンギンが諌めた。

「えー!じゃぁ媚薬の件はなんだったんだよ!あんなこととかこんなこととかしたんじゃないのかよぉぉぉ!」

酔っ払いは妄想が現実にならなかったことに地団駄を踏んで言った。

「そっ、それは!そういうプ、レ、イ、な、の!....げ、現実にそんなのあるわけないじゃない、バカねっ!」

「お前も看護師のはしくれなら夢見るのはやめてもう少し大人になれ。」

ナミの身を守ると言う意味でも媚薬の件はもう揉み消した方がいいので、二人は口裏を合わせた。

シャチの後ろでもハートのクルー達がブーブー言っている。
プレイはプレイで気にはなるが、そんなミラクルな薬があるのならおこぼれに預かってみたいと思う男心はもう、しょうがないのかもしれなかった。

「男ってほんとバカね...」

頭を抱えるナミを見て、ペンギンはその華奢な手をつないだ。

そしてシャチたちに言う。

「とにかく、これは俺のだから。お前ら変な気起こすなよ。」


ナミはつながれた手を見て真っ赤になった。
それが逆にリアルでシャチたちはブーブー言いながら酒盛りに戻る。


「はあ、ありがと。もういいわよ。」

「ん。」


そう言われても、手は離さなかった。

少しでも、自分の気持ちが伝わればいいなと願って。










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