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□20.伝われ伝われ
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20.伝われ伝われ








んっ、と唇から漏れる声がする。

舌が絡んで歯列を舐めてもうどちらの唾液かどこから自分かわからない。

そんなキスを、ナミとする夢を見た。

ローはベッドから体を起こして、小学生かと悪態をつく。
よっぽど自分はナミとそういうことがしたいのだと、突きつけられた気がして目頭を押さえた。


時計はまだ深夜を指していて、寝つきの悪いローはすぐに寝るのを諦めて空気を吸おうと外へ出た。

月夜は明るくひやりとした風が心地いい。

甲板へ出ると信じられないことに、同じような先客がいた。

ナミだった。

向こうも丁度出てきたところのようで、こちらの船を見下ろして驚いている。

ローは逆にナミを見上げて思った。


会いたかった。



「...あっ、お、起きちゃって...眠れなくて....」

ナミは黙っていられず聞かれもしないのに言い訳がましく喋った。
会いたいと思っていたが、まさかこんな時に居合わせるとは思わない。
二人だけの深夜の密会など。


「会いたかった。」


思わずローは言った。

「え....?」

どういうこと?とナミは思った。
二人きりになるなと言って出て行ったのはローなのに。
でも、でも。


「お前に会いたかった。」

ローは切なそうだった。
その表情に、自分まで泣きそうになった。

ナミは手すりに手をついて、男を見下ろした。
ロミオとジュリエットと言ったような、舞台に立っているようだった。


「私も、会いたかった。」


初めて、お酒も薬の力も借りずに、素直になれた。

ちゃんと、言葉にしないといけないんだ。

自分がどんな気持ちでいるかを。

ちゃんと、彼は受け止めてくれるから。


ナミが体を乗りだして手を差し出すと、たちまちローが目の前に現れて、その手を取って抱きすくめられた。

冷んやりとしているのに、暖かい体だった。


「会いたかった。」

「うん....」

ナミはローの胸にすり寄って、しっかりと腕を回した。
伝われ、伝われ、と思う。


「俺はお前が好きだ。」

ローが、どんな表情かはわからないが、欲しかった言葉を呟いてくれた。


「私も、あんたが大好き。」

ごめんね、もっとちゃんと、話しを聞いてあげればよかったね。
最初の最初に。


「色々と...悪かった。あの薬も、そんなつもりじゃなかった。」

期待がゼロではなかったものの、あれほど媚薬としての効果を発揮するとは、本当に思っていなかった。


「いいの....いえ、良くはないけど、私も、ごめんなさい。あれ、どうにもならなくてね、ペンギンと関係しちゃったし。
ルフィとあんた二人で迫ってくるのは本当にめんどくさくてね...付き合ってるってウソついちゃったの。」

「それで更にややこしくなったんだろ。」

「あんたやルフィに振り回される私の身にもなってよ!あんたは私のカラダを弄んで放置したし、ルフィは勝手にキスしたり忘れたり思い出したりするし、ひどいもんだわ。」

「そうだお前....何勝手に麦わら屋にキスされてる。」

「知らないわよ!思いっきり捕まれてたんだもん!そりゃびっくりしたけど!」

「ちょっと目を離すとフラフラしやがって。俺の女としての自覚を持て。」

「わかったわよ!あんたも変態なこと、他の女にするのはやめてよね!今までどれほどおモテになったか知らないけど!」

「ほう、お前にはしてもいいってことか。」

「時と場合によるわよ!やめて、変態!」

ナミを抱きしめたローがお尻を触って来たので、ピシャリと手を叩く。
やめてと言われると本当にやめるのがローだ。

「....ああ言うの、他の女にもしてたの....?」

ナミは俯いた。
ベポが言っていた言葉が気になっていた。
言ったのは自分なのに胸が痛くなる。

ローがはーと息を吐いた。

「してない。こんな気持ちになるのも、こんなに悩んだのも、お前が初めてだ。」

「本当?」

「ああ。」

「良かった。」

ナミは幸せそうに笑って、ローに抱きついた。

「ロー、大好きよ。」

ローは幸福に息をのみながらナミの背中に手を回す。
しっかりとナミの背中に触れると、心が通った気がした。

「ん.....」

甘えたように相槌を打つローに、顔がほころぶ。

「はッ、くしゅん!」

ナミは恥ずかしそうにローを見上げて、ローはそれを見て笑った。
夜風が冷たいのだ。

「....一晩、俺の部屋でお前を看病したいが、いいか?」

「...うん、よろしくお願いします。」

ナミは少し赤くなって、笑顔で頷いた。









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