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□22.嫌よ嫌よも好きのうち
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22.嫌よ嫌よも好きのうち
朝、寝ぼけ頭にそう言われて、ナミは訳がわからなかった。
今まで誤解していたと。
女の嫌は、嫌じゃないんだなと。
「え.....一概にそうとは言えないでしょ。」
たっぷり首すじにキスをされながら、ナミはされるがままになっている。
もうそろそろ起きなければならない時間だが、攻められ過ぎた体はだるくてやる気が出ない。
たこみたいだ。
身体中に吸盤という吸盤で吸いつかれているみたい。
心の中でタコ呼ばわりした彼氏に毒づく。
「....やめてよね、それを他の女で試すのは。」
「なんでそんなこと俺がしなきゃならん。」
お前がいるのに、と言うので、ナミは甘いため息を吐いた。
「なんでそんなこと言い出したの?もしかしてルフィかしら。」
ローはムッとしてナミの耳に噛み付いた。
「あん!」
「他の男の名を出すからだ。」
「でも図星ね。」
ナミが少し目尻に涙を浮かべて振り返る。
「あのね、ルフィはやめてって言ってもやめない奴だわ。本能のままに生きてるから。でもあんたは、優しいから...本当に優しいから、私を思って、やめてくれるの。嫌がることはしないと努力してくれるの。だから、好きになったの。」
ローに向き直って、胸板に触れた。
「私は、あんたには嫌と言わない。もし言ったとしても、それは嫌じゃないから....だから、私だけにしてね。」
俯いてぽつりと言うナミはかわいかった。
「お前以外いらねぇよ。」
悪戯心が湧いて、また耳を噛み、睨みつけて来るナミの目を見ながら平然と胸を揉んだ。
ナミはぺしっとその手を叩いた。
ベッドに膝立ちになって、ローの上にまたがる。
「あんまりおいたしてると、お仕置きするわよ。」
ローはごくりと唾を飲んだ。
「もう朝だが...誰か来たら....」
「知らないわよ。あんたが何とかしなさいよ。」
見下ろす猫の強い目に、興奮する。
「おいナミ....」
「何よ。」
「お前今日一日、ここに入院してくれ。」
「いやよ。仕事もあるのに....」
「あとこれも飲んでくれ...!!」
「これあのマタタビじゃない!!イヤよ!!絶対!!」
「お前嫌じゃないって言ったろ今!!」
「....!!言ったけど....!!」
結局分厚い医学書の角でローの頭を殴って、ナミは逃げ出した。
しかしどこへ逃げてもどこへ隠れても、スキャンして探し出されて捕まった。
これは物凄い男を敵に回して(?)しまったとナミは思った。
「あれ?ナミ〜こっちに来てたの?」
ベポがふぁぁとあくびをしながら廊下の先にいた。
「ああっ、ベポたすけ.....」
パッとナミの姿が消え、船長室からドンガラガッシャーンと言う音がした。
ナミが部屋から転がり出てくるのを遠目に見て、ベポはほのぼのと言った。
「結局そうなったんだ〜よかったね、キャプテン。」
うんうん、と頷くベポ。
ナミはハァハァと息を切らして廊下に倒れている。
「ナミ頑張ってね。キャプテンちょっとクルーをたまにバラしたりするような変態なとこあるから。」
「ハァ、ハァ、あんたの言ってた変態って、それだったの...!?」
ナミが言うか早いかまたパッと消えてローの部屋に戻された。
ベポは部屋に向かって呼びかける。
「朝食はどうするの?二人とも食べない?」
「食べな...「食べる!!!すぐ行くわ!」
ナミはドタバタと出て来て、ローを置いて食堂に向かった。
人がたくさんいる所なら、あの男も手出しは出来ないだろう。
とにかく、マタタビだけは回避したい。
あの自分の醜態を忘れてはいない。
ナミは思わずペンギンを探してしまった。
「あっ、ナミだ〜!どうしたんだよ、朝から。」
「おはよう、シャチ。ペンギンは?」
「あいつ確か昨日夜は見張りだよ?そういやさー!昨日麦わらのルフィと話が合っちゃってさー!」
「あぁ、あんた合いそう。脳みそ使ってないもんね。」
「おいおい、それはヒドイだろ!」
「褒めてんのよ。」
朝食をよそって席に着く。
水とワンプレートのお皿を乗せたお盆を目の前に置いて、水が奇妙に揺れたのを見た気がした。
「シャチ、この水飲んでみて。」
シャチは訝しげな顔をしたがごくごくと飲んだ。
すると、さっと顔が赤くなり、ナミに襲いかかった。
「キャァァア」
「しゃ、シャチ何してるの!?」
「シャチがナミを襲ったー!麻酔ー!!!」
そして次の瞬間、朝食のお盆ごとローの部屋に呼び戻されるのだった。
「ちっ、シャチに飲ませるとは」
「あんたもうこわいわ!!」
結局ナミが解放されたのは、昼を回ってからだったと言う。
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