novels

□4.下着
1ページ/1ページ

4.下着











ナミは豪華なベッドの中で目を覚ました。

隣には、鷹の目の男がその瞳を閉じて休息している。

シーツを手繰り寄せて胸元を隠し、朝日の差す窓の外を見た。

約束の日まであと3日。

3日経てば、全員が船に乗り次の島へ出航する。

彼に会わなければならない。


けれど、その時にはもう、大丈夫な気がしていた。

ゾロが誰を想おうとも、笑顔でそれを受け入れられるような気がしていた。

何故だろう。
本当に、魔法のように忘れさせてくれたんだ。

あんなに強かった気持ちが、過去のようになっている。

私はこの人が好きになったのだろうか?
この大人の男が私を好きになってくれることなんて、ないような気がするのに。


「くだらないことを考えているな。」

目を閉じたまま、ミホークが言った。

「....魔法みたい。何だかすっきりしてるの。」

さすがに、大人の男のセックスは気持ちが良かった。
じっくりと余裕があり、懇願しそうになるほど焦らされて、たっぷりと濡らされて。

そうか。
そして2年ぶりだ。
こんなことをするのも。
2年前は、ゾロと。

しかし、それを思っても、あんなに痛かった胸が、チクリともしなかった。
誰かが痛みを引き取ってくれたみたいだ。

「あと何日この島にいる。」

「3日後出航する。だからもう丸2日かしら。」

「お前を離したくない。」

ドキッと心臓が音を立てた。

「....あら、平凡な小娘にご執心ってわけ?」

「お前が稀有な航海の才さえ持っていなければな。」

攫ってでも、自分の洋館に置いて、ものにするのに。

「居れるだけ、俺の側にいてくれ。」

「...わかった。今日一日だけ、一緒にいる。」


自分を普通の男だと言ってくれた娘。

厚意に感謝すると、ミホークは幸せそうにナミの頬にキスをした。








夕方には船に送ってくれる約束になっていたので、さんざんスイートを満喫した。
猫脚のバスタブ、高級なブランデー。


「見れば見る程美しくなるな。」


自分の上に覆い被さる男に歯の浮くような台詞を真顔で言われて、動揺するが大人の男の愛情は居心地が良かった。

ふわふわと浮いているようで、現状に疑問すら感じさせず、まるで痛みのない夢の中にいるかのような。

暗示にかかったような微温湯の中。

ずっと、溺れていたいけど。

1日限りの関係でも、私にはこれが必要だった。








船へ送ってもらう道すがら、オレンジのつなぎを着た一団とすれ違った。

なんだろ、あのクマ...
チョッパーと同じ類かしら。

クマに見とれたナミは大量の荷物を持っていたので、適当にパッキングした服がポロポロとこぼれたのに気がつかなかった。


「おい。」

ミホークの後ろを歩くナミに、男が声をかける。ーー隈の深い男だった。

「落としたが。」

「あ、すみません」



ナミが受け取ろうとすると、



それは買ったばかりの下着だった。



(ギャーーーー!!!)
「すすすすみませんっっ!!!!」



男の顔も見ずに、先を歩くミホークに向かってナミはダッシュした。


「ちょっとキャプテン〜、今のおれが拾っても良かったのに、動きが速すぎるよ。」

「フン、下着じゃなければ拾ってねぇよ。」

「さすが下着マニア〜!変態〜!」

ヒュー♪とシャチが囃し立てると、ローはシャチの頬をむんずと掴んだ。

「黙れ。誰のせいで予定が大幅に遅れたと思ってる。」

「一回魚人島まで行ったのに、シャチが乗ってないの気づいて引き返して来たんだよね。
シャチ何してたの?」

「俺はちょっとその、下着を...」

「てめぇの言葉、そっくりそのままブーメランじゃねぇか。」


しかし、鷹の目を一目見れたのは悪くない。
もしいずれ計画に組み込み利用することがあるとすれば、鷹の目にもああ言う女がいることを知っていれば、計略に役立つ事もあるだろう。

ローは剣を肩にかけ直して笑った。










Next

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ