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□7.手続
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7.手続









なんであんなことを言っちまったんだ。

後悔先に立たず。


喧嘩別れをして、魚人島に入るともうそれどころではなく、ナミも普通に接して来るし、それに流されてすっかり二人に昔のような恋人の雰囲気はなくなってしまった。


終わりにしてもいいのか?

ゾロは自問する。

そんなわけない。
けれど。


鷹の目と.......

うそだろ。


そんなの、はいそうですかって、受け入れられねぇよ。

情けなさ過ぎてどうにかなりそうだ。


ナミがあんなに自分を想ってくれていたことがわかって嬉しかったのに、鷹の目の名が出てきて慌てふためく自分に嫌気がさす。
鷹の目は...駄目だ。
なんでそんな、男の矜持を傷つけるような相手に行くんだ。

俺が....浮気をしたと思ったからって。
あいつは卑怯だ。
被害者みたいな顔をして、無実の人間を地獄に突き落とすような真似をして。

でも、お前みたいな女はこっちから願い下げだと、あんな風に言うこともなかった。

自分は誤解のひとつも解いていないに関わらず。

話さなくてはいけないと思うのに、この船はすぐ、次の冒険に飛び込んでしまうのだ。

「パンクハザード?」

「何あの島!燃えてる燃えてる!」

「おまえら〜!ルフィのお供くじ作ったぞ〜!」

引け引け〜いとフランキーが言うので、クルーが8人寄り集まる。

ナミは当たらずにホッと安心顏だ。

ゾロは当たってしまったので、いよいよ話す時間もなくなってしまった。

「ナミ、この前のこと....」

話したい。

この島から戻ったら。

ナミはそれには応えずゾロに笑顔を見せた。

「行ってらっしゃい、ゾロ。」

大丈夫。ちゃんと笑えた。

突き放すように言って、ナミは手を振った。

付き合う前、こんな感じだったな、と思った。

胸の内なんて全く見せずに、顔はいつでも笑っていて。

ーーでも、幸せだったな。

今は、もう自分の心がグシャグシャで、どうしたいのか、どうなりたいのか考えることもできない。


ただ、ゾロの視線の矢面に立つのが嫌で、離れられることに内心ほっとしていた。

ちゃんと笑顔の仮面を被れているのは、鷹の目と一緒にいたから?

まあ、もう会うこともないだろうけど。

そうして、ルフィを見送ったナミたちも不本意ながら巻き込まれてしまうのだった。
パンクハザードの雪の中へ。






大きな子供を逃がそうと奮闘していたナミは、外への扉を開けて身震いした。

「なにこれーーー!!さー!むー!いー!!!」

スモーカーと話していたローは、ずるっと肩を落とす。

この女は、下着の。

「あーーー!!あんた見覚えある!!」

どこだっけ?とチョッパーの毛皮を握りしめるナミに、ローが静かに答える。

「確かに以前お前の下着を拾ってやったこともあるが、アレは俺の趣味じゃない。」

「ギャーー!!誰があんたの趣味を聞いたのよ!!とにかく!子供たち渡さないからね!!みんな戻ろ!!」

「ナミさんなに今のどういうこと!?俺と言うものがありながら...」

「そんな事実ないでしょ!押さないように!ゆっくりよ!」

わーわーバタバタと建物に引き返して行く団体に、七武海と海軍は少しの間黙りこくった。

「.......いるじゃねェか.......」

「.....いたな.......驚いてたとこだ...」


まさか向こうから飛び込んで来るとは。
麦わらの一味を計画に組み込めるなら、それ以上のことはない。


ーーしかし、今ちょろちょろされるのは始末に悪い。





そして、ナミはフランキーに入れ替えられたり、サンジと入れ替えられたり、ふつふつとトラファルガー・ローへの不信感を溜め込んでいた。



「あーー!!もう!思い出したら腹が立つ!!」

「ナミ、そんなに怒っちゃかわいい顔が台無し。」

仲良しのロビンとナミは、シーザー捕獲後G5との宴の折に並んで座って飲んでいた。

「彼と入れ替われるなんて羨ましい。ロボの体ってどんな感じかしらね。」

「そんなこと考える余裕もなかったわよ!私はサンジくんのいやらしさとフランキーの腕力のせいでたんこぶが出来たし、何故か今も肌がヒリヒリするのよ!あいつ、私の体で何したのかしら!それもこれも、全部トラ男が原因よ!」

イライラしている要因は、それだけではなかった。

ゾロが、たしぎという女海兵を抱え上げていた。

私には、したことないのに。

動揺した。
普通に接しようと、努力しなければならなかった。

ペローナと言い、たしぎと言い、何なの?
そうやってあんたはいつも、私の心をぐちゃぐちゃにして。

別れたと言っても、ナミの心にはまだゾロがいる。

でも、どん底に落ち込まずに済んだのは、トラ男に腹を立てるという選択肢があったからなのかもしれなかった。

だから、必要以上にナミはローに腹を立てていた。

自分で気づいてはいなかったけれど、それがナミには必要な手続きだったのだ。

元気を出すために。











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