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□8.露骨
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8.露骨









ナミ屋に睨まれているな、とは思っていた。
しかし、そんなもの気にもならないし、何故そんなに腹を立てられなければならないのか、と言う気もする。

シャンブルズはすぐに元に戻してやったし、危険な目に合わないよう最善を尽くしたし、ガスを風で吹き飛ばした時も、バッファロー達を撃墜した時も、天候を操る鮮やかな手腕に感心すらしていたのに。


「チョッパー、いる〜?ちょっと赤切れが....あとたんこぶも....」

ナミ屋がよろよろと船医を探してこちらへやって来た時は露骨だった。



チョッパーがいるはずの診療室にはローがいて、ナミは目を泳がせて頭を掻いた。

「.....と、思ったけど、また後にするわね!そうそう!私書きかけなの、海図が!」

「トニー屋は俺が依頼した論文を探すので忙しい。よかったら俺が診てやるが?」

「.....!いーです!遠慮しとくわ!」

ぷい!と子供のように明後日の方向を見るナミに、ローが血管をピキッと言わせた。

なんだこの女、かわいくねぇ...!

「...医者を蔑ろにするとはいい度胸だなァ?また入れ替えてやってもいいんだぞ」

「いやよ!何言ってるのよ!だいたいあんたのせいで私は赤切れたんこぶなの!全身ヒリヒリしてるんだから!」

「それは俺のせいじゃねェだろ。」

「あんたのせいも同然なの!」

ナミは小さな子供よろしく舌をべーっと出した。

またピキッと音がする。
血管か、血管だな。
ドキッと音がした気がするのは、気のせいに決まっている。

「...!?何するのよ!?」

ローがナミの胸倉を両手で掴んだ。
合わせの襟を、ぐっと開くと真っ白な肌が見えて、ゴクリと喉が鳴った。
しかし、それは気取られないように、悪い男の顔で笑う。

「全身赤切れなんだろ?見てやろうと思ってな。」

もはや診て、ではなく見て、になっていることにナミも気づいた。

「はぁ!?馬鹿じゃないの!?なんであんたに!」

「俺は医者だぞ。」

「外科医でしょ!変態!....あ、外科医でいいのか。」

外傷だものね、ときょとんとするナミ。

こいつ、かわいくね、かわいくね.....かわ.....

動きが止まったローに、ナミが慌てて胸元を直す。

「と、とにかく、私用事があるから、お暇するわ!」


パタパタとその場を後にするナミ。


夕食の後は海図を描くのが日課だが、そこにもトラファルガー・ローが現れた。


「何、あんた!わたし仕事中なんだけど!」

「お前んとこの船医が医学書はここにあると言ったんだ。文句ならトニー屋に言え。」

「ちょっとチョッパー!!!この外科医連れて帰って!!」

ナミは階下に向かって大声で叫んだ。

「うるせェな....でけー声で...」

「あんたが言ったんでしょ!?」

がるるとナミがローに牙を剥くと、ローはふん、と鼻から息を吐いた。
態度も何もかも嫌な感じだ。

「ちょっとなんなのあんた、私のやることなすこと文句ばっかり。」

「鷹の目の女になんて興味はない。」

ローは居候にしては大きな態度でソファーに座って分厚い本を開く。

「...別に女じゃないけど...」

ナミがぶつくさと呟くと、その体を上から下までジロジロと見て、ローが笑った。
今日もまたいつにも増して、はち切れんほどの身体の出っ張りを披露している。

「しかしそのエロい身体には大いに興味はあるがな。」

「...........サイッテー.....」

この男の前で露出するのは止めようと心に決めるナミだった。


「あと、お前が今描いてる海図、同じものを同盟船に提供してくれ。」

「は!?なんでそんなこと...!」

「潜水艦の航行には海図が重要だ。いつこの海をまた潜行するとも限らん。揃えられる資料は揃えておきたい。」

「それはあんたの都合でしょ!?」

「二年前、俺はお前らの船長の手術を何日にも渡って行ったが、その時の医療費を請求されたいのか?」

ナミは目を見開いた。

「それをお前の労働力で免除してやろうと言うんだ。....それとも、出来ないのか?」

フン、と鼻を鳴らして意地悪く笑う男に、ナミのプライドが音を立てて凍りついた。


「....失礼ね!できるわよ!!言っとくけど、私を使うと高いわよ!?」

「自信を持つのは結構だが、実力が伴っているのか俺にはまだわからねェからな。」

失礼なことをしれっと言うローに、ナミの怒りが頂点に達したのだった。










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