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□18.感触
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18.感触
触れられたところが熱くなっている。
ローは軽く叩かれた背中の感触を何度も反芻していた。
自分から触れることと、相手に触れられることは、全然違う。
正直、ああ言う女は苦手だと思っていたのに。
うるさくて乱暴で、男にも物怖じせず、言いたいことをはっきりと言い、頭の回転が速く、そのくせ怖がりで。
何故かむかついて、頭から離れなくなった女は、可愛くなかった。
可愛くないと思っていたのに、気になって仕方がなかった。
そして自分の腕で泣く姿に、守りたくなって、心を奪われて。
なんで自分のものでないのかと、むかつくくらい。
朧げに昨夜の記憶が思い出されて来ていた。
手のひらいっぱいにナミの体温を感じて、預けてくる頭を見下ろすとオレンジの香りがして、心臓が速くなり、酒が回って今度はこちらがもたれかかった。
一言、
「可愛い。」
そう言うと止まらなくなって。
「な、な、何言ってるのよ。酔っ払い。」
「うるせー。可愛い。」
「.....ほんと、酔ってる。」
「うるせー、バカ、顔が可愛い、話し方が可愛い、目が可愛い、口が可愛い、笑ったところが、可愛い......」
嘘でしょ。
真っ赤になってナミは思った。
なんで、こんなにドキドキさせられなきゃいけないの。
ローは言いながらずるずると倒れて来てナミの膝に突っ伏すとそのまま寝息を立てた。
ナミは短い黒髪を梳くと、笑みを一つこぼす。
笑ってしまう。
なんだかんだで、喜んでいる自分に気づいて。
そんなこととは露知らず、ローも島に上陸していた。
ドレスローザに近い島だ。
ジョーカーの犯罪シンジケートに属している可能性も多分にある。
麦わら屋に処断を下すナミを見て、船を離れるなと言おうとした。
あわよくば、また触れてくれないかと期待して。
そう思ってナミを見ていると、ナミを見るもう一つの視線に気づく。
ロロノア屋もまた、見ていた。
言いたいことの有り気な目で、女に興味を持たれることはあっても、興味を持つことはなさそうな男なのに。
切なげなそんな前の男は、ナミの元へ行こうと何度も試してはやめて。
剛胆な剣豪にもいじらしい面があるものだと、思った時にはナミの姿は見えなくなっていた。
ローは近くにいたチョッパーに声をかけた。
「ナミ屋はどこへ行った。」
「えっと、えっと」
チョッパーが狼狽えると変に罪悪感が芽生えてローは押し黙った。
「ナミ、カジノへ行くって言ってたぞ。もう行ったのかな?」
「カジノか。まずいな。」
言うが早いかローはその場からパッと消えて島に降り立った。
その後ナミがドレスに着替えて出てきたので、チョッパーはあちゃー、トラ男に悪いことをした、と思ったのだった。
「やめて!離してって言うか操るのやめて!自分で歩けるわ!!」
「フッフッ、離したらお前はこんな風にはしてくれないだろう?」
ナミとドフラミンゴは並んで歩いていた。
それもナミはドフラミンゴの慰み者のように大男に寄り添い、はたから見れば恋人のようにしな垂れかかっていた。
「そんなの何事も条件次第よ!どこへ行く気!?何する気!?男なら他の手で女を丸めてみせなさいよ!!」
「ニャーニャーとウルセェ猫だ。」
恐怖を振り切って吹っ切れたナミは、唯一随意に動く口を動かし続けた。
こうしていなければ、思い通り動かない体に自分を見失いそうになっていた。
「これでご満足か?」
ぱちりと操り糸が切れて、ナミは自由に動く手を凝視した。
そのままダッシュで逃げようとするが、すぐに大男の手に捕まる。
ナミはひょいと肩に引っ掛けられてドフラミンゴの背中をこぶしで叩いた。
何と言うこと。
操られても操られなくても結局捕まって終いだ。
「大切な人質様、だ。丁重に扱うさ。」
「おろしてーーー!!」
「もう糸は使ってねェよ。諦めるんだな。」
そう言うと、ドフラミンゴは肩にかけたナミの尻をペシペシ叩いた。
「やめてよ!!どこ触ってんのよ!お金取るわよ!」
「ほう、金で買えるのか。いくらだ?」
「.....っ!!うるさいわね!!そんな訳ないでしょ!!??」
「なんだ、船から降りるならあのカジノくらいお前にやってもいいのに。」
恥辱に顔が真っ赤になって、ナミは唇を噛んだ。
誰か、助けて...!
そう思った時。
二人の若い男が行く手に立ち塞がったのだった。
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