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□19.年嵩VS若人
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19.年嵩VS若人
「ほお、面白そうな奴らが来たな。」
ドフラミンゴは楽しそうに笑った。
ナミは後ろが見えないので必死で腰を捻り、その姿を確認する。
ゾロとローがそこにいた。
ドフラミンゴの前に立ち塞がり、二人とも柄に手をかけて。
ゾロは、真っ赤になって何も言えなくなったナミをカジノに送った後、その場に留まっていた。
迷ってしまう自覚はなかったが、どうせここを離れてもすることはなかったし、ナミを守るべきだと考えたのだ。
そしてローも、カジノを見つけてまさかと思った。賭博には、それなりにやくざ者が絡むもの。
もしドフラミンゴがこの島にいれば、カジノは最も危ないと。
すぐにでも飛びかかりたかったのはゾロもローも同じだった。
しかし、ドフラミンゴの覇気がそうさせない。
覇王の気は肌を震わせ、間合いに入らなければ命取りになることを感じさせた。
「久しぶりだな、ロー。お前に会えて涙が出そうだぜ。」
そう言うとドフラミンゴは荷物のように抱えていたナミを地面におろした。
「ゾロ!ロー!」
胸を撫で下ろしてすぐに二人の元へ逃げようとしたナミは、二人に半ばまで駆け寄ったところでその体勢のままぴたりと止められてしまう。
またアレが来たのだ。
「やだやだまた....!!」
「どこへ行くつもりだ?お前は俺のものだと言ったはずだ。」
ナミの足は勝手に後ろへ下がり、くるりとドフラミンゴに向き直ると、そのまま男に抱きついた。
ゾロとローの血管が切れる。
ブチブチと音がするのは気のせいではなかった。
「おいナミ!!テメェ何やってる!!」
「知らないわよ!!体が勝手に動くんだもん!!操られてるの!!」
振り向くことも出来ずにナミはゾロに叫んだ。
「こいつの能力はイトイトの実だ。糸で人間を操っている。」
「ロー。いつからお前は俺に楯突くような男になっちまったんだ。」
ドフラミンゴが悲しそうに言うと、ローは剣を抜いた。
しかし戦おうにもドフラミンゴにナミが引っ付いているのは上手くなかった。
「くだらねぇお喋りはいい。そいつを離せ...!!」
「なるほど。お前もこの女に骨抜きか。」
「やだ!何するの....!?」
「お前を俺の女だと見せてやるのも一興だろう?」
ナミがドフラミンゴの首に手を回した。
意思とは無関係だったが、その仕草はまるで恋人にするような。
ナミがドフラミンゴに顔を寄せる。
そしてその唇が触れそうになった時、粉塵が舞った。
「つまらぬ物を斬らせるな、天夜叉よ。」
「なっ.....お前は....!!」
「鷹の目か。戦争以来だなァ。」
ナミは糸が切れたのを感じたが、風塵にまぎれて気づくと鷹の目の腕の中にいた。
まさか。
何でこんな所にミホークが。
「怪我はないか。」
ナミの顔を見る鷹の目の男に、ナミが狼狽する。
「は、ハイっ、あの」
「それを身に纏っているとは、喜ばせてくれる。」
ミホークは感情の読めない目でナミの豪奢なネックレスに触れた。
「鷹の目、なんでテメェがここに!」
「...久しいな、ロロノア。闘志が剥き出しだが、修行を忘れたのか?」
しゃあしゃあと言う師匠に、また何本かの血管が切れる音がする。
鷹の目はナミの手を握って肩を抱いている。
ゾロは怒りを通り越して頭の奥が冷え冷えとしていた。
長きにわたって七武海を張りつづけ、その中でもトップクラスの実力を持つ二人の男を見比べる。
鷹の目とドフラミンゴの間でナミが揉みくちゃになり、またドフラミンゴがその体を抱えあげていた。
ゾロは冷静になって状況を考えた。
ーーどうやら隣の若い男も同じらしかった。
「...まさかお前と組むことになるとはな。」
「同感だ。不本意だが、ロロノア屋。」
「ああ、仕方ねぇ。」
「「そいつを離せ。」」
二人は引き抜いた剣を男たちに刺し向けて言った。
「フッフッフッ、聞いたか、鷹の目。」
「お前はその手を離せ。ナミは少し離れるがいい。」
「フッフッ、お優しいねぇ。どういう風の吹き回しだァ?」
「若造にくれてやるのも惜しいのでな。」
「フッ、お前とまた肩を並べることになるとはな。戦争を思い出すねェ。」
「気を抜くな。窮鼠は猫を噛む。」
ミホークはすらりと黒刀を抜いて構えた。
自分にも、女の為に闘える日が来るとは。
そのことを少し楽しく感じて。
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