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□20.幸せパンチ
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20.幸せパンチ









ナミは高いヒールを響かせて出来るだけ四人から離れた。

四人中三人が七武海で、もう一人も一億を超える賞金首だ。

どれほど被害があるのかわかったもんじゃない。

闘気に砂塵が巻き上げられて、目が痛いほどだった。


「なにこの状況......ど、ど、どうしたらいいの私....!!」

ナミは草むらに隠れてその様子を見ていた。
覇気のぶつかり合いで空気が震えている。
地面はビリビリと振動しているし、男たちの視線はバチバチと火花を散らしている。

その時、にょきっと横にロビンの半身が生えてきた。


「ナミっ。こうなったら、あの技を出すしかないんじゃないかしら。」

「わ!ロビンっ!なんでここに!?」

ナミはびっくりして後ずさった。

「この状況なら、あの技なら効くかもしれない。」

「あの技って...!?」

ロビンの真剣な様子に汗が滴り落ちる。

「サンジが言っていたわ。あの技より強い技はこの世にないって。」

「サンジくんが...!?」

この世で一番強い技を自分が持っているとは思えなかった。
ナミは焦って口を開く。

「一体何のこと...!?まさか幸せパンチとか言うんじゃないわよね。」

「そう、それよ!」

大真面目に首を縦に振るロビンにナミは開いた口が塞がらなかった。

「...バカじゃないの....!?」

わなわなとするナミに半身だけ生えているニコ・ロビン。
草むらは闘気で騒めいていたはずなのに揺れる草木がぴたりと止まる。







「なんだ、やらんのか」



ぴたりと覇気が止んで、4人の男がこちらを見ていた。


ナミはゆらりと立ち上がって、怒りに任せて震えた。

正直、ここまで意味不明なことに混乱して頭に来たのは初めてだった。







「そんなの......






やる訳ないでしょーが!!!!」











「「すみませんでした」」

ずかずかと迫って来たナミはとりあえずゾロとローを殴り、あまりの剣幕に若人2人は思わず謝った。

背が高すぎる為か殴られなかった年かさの男2人はマイペースに話を続けている。




「七武海の半数を手玉に取る女が、ケツの青いガキの船に乗ってるのも惜しいもんだなァ?」

「同感だが、まあお前にもやらんがな。」


「ちょっとあんたたちいい加減に...」

ナミの言葉なんて聞いちゃいないドフラミンゴは、遮って続ける。

「ではロー。そろそろシーザーを返してもらおうか!」

ドフラミンゴがローに斬りかかろうとすると、ミホークが黒刀を抜いてその斬撃を受け止めた。


「やめろ、天夜叉。この娘に傷でもついたらどうしてくれる」

「あぁ?笑わせるな」

「ミホーク!私逃げたいの!!」

ナミが叫ぶのに背中で答えて鷹の目は言った。


「ーー何の因果があるか知らんが、この男は俺が止めてやる。早く行け。」


「フッフッ、鷹の目も人の子か。お前が相手になる方が面倒なんだがな。ビジネスの邪魔をしないでもらえるか」

「若人にも、機は平等にあると思い直したのでな。」

「....!?」

「何言ってる鷹の目、テメェ!!」

「フン、礼は言わねぇぞ、ジュラキュール屋。」



ローはナミとゾロの体を、忽然と消した。









少し離れた雑林の中に現れたナミは、慌てて声を荒げる。

「やばいやばいやばい!!とっととこの島から脱出よ!!」

「金はなんとかなったのかよ!?」

「ボロ勝ちよ!なめんじゃないわよ!でも途中でドフラミンゴが来たの!だから持ち出せたのはこれだけ!」

「.....チップじゃねぇか。換金しなけりゃクソ以下のオモチャだな。」

「あああ〜...こんなコワイ思いしたのに、タダなんて!!」

「.....こういう奴だよ。」

「....恐ろしい亡者ぶりだな。」

2人がげんなりとして言うと、キラキラとピアスを揺らしてナミが振り返った。

「あんたたち、そんな口の利き方をしていいのかしら?」

ナミがニヤリと笑う。

「ドフラミンゴは財布なんか持ち歩いちゃいなかったけど、宝石はこんなに持ってたわ。」

ナミは胸の間にハサまった貴金属を二人に見せつけた。
それを見た男たちは一斉に口を開く。


「「他の奴がいる所で見せんじゃねェよ」」



まさかこれほど綺麗にハモるとは思っていなかった男たちは、気まず気に顔を見合わせたのだった。








三人は、海岸が封鎖される前に急いで船に戻った。

食材を買い込んだのでゾロだけでなくローまでもが大きな袋を背負わされて、突然船の上に現れたのでチョッパーが後ろに転んだ。


「みんないる!?すぐ出航の準備して!ドフラミンゴがこの島にいる!」

「大丈夫。私が状況を知っていたから集めてあるわ。」

「さすがロビン!あとサンジ!ちょっとこっち来なさい!」

「ハーイ!ナミさーん!」

「ロビンに変なこと吹き込むのやめて!!!みんな信じちゃうでしょうが!!」

「ブベバ!!!」

「準備できてるからな、出すぞ〜!」

マイペースに言うウソップにハッとして、ナミは海風を受けながら手すりに掴まる。

計画を成功させる為にも、ドレスローザに急がなければならない。夜通し走れば、私の腕ならなんとか1日でも、航海を短縮できるだろうか。

挑むように海を見るナミに、心臓を奪われた男が二人いた。




様々な思惑を乗せて、船は進んで行く。










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