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□24.you are mine
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21.you are mine
ドフィEND
「さ、じゃ、幸せパンチとやらを見せろ、ナミ。今すぐに。」
「こんな状況で何言ってるのばかじゃない本気?」
ナミはどこかの部屋に連れ去られて磔にされている。
長い手足をさらけ出して、蜘蛛の糸に捕まった蝶のようだった。
三つ巴よりもっと悪いにらみ合いの折に、ドフラミンゴは早々と戦線を離脱して空を飛んだのだ。
こんな風に連れ去られるのは、金獅子やルフィでも経験があるが、ドフラミンゴの飛び方はまた違う。
まるで、雲に糸でもかけているかのような。
「言っとくけど、私は何人もいるだろうあんたの囲い者になる気はないわ!だから操るのやめて!」
「ほう。そんな口上でお前の状況が好転すると思うか?」
ドフラミンゴは椅子に腰掛けてニヤニヤしている。
「....思わないわね....仕方ないわ.....私の秘密を話すわね。」
ナミは項垂れてほろりと嘘泣きをしながら言った。
「実は私、男なの。だから無駄よ。解放しなさい。」
「フッフッフッ、では確かめさせてもらおう。」
ドフラミンゴがナミのドレスのコルセットをひとつひとつ外して行く。
男が近づくと、少し腕の拘束が緩んだ。
ナミはすかさず武器を取ってドフラミンゴに雷を打つ。
バリバリッ....と音をさせて、男の身体中を電気が駆け巡った。
意識が遠のいたのかフラリと煙を吐くドフラミンゴに、ゆるんだ胸元を押さえて急いで部屋を出ようとすると、鋭い痛みが腕に走る。
「痛っ...!なに...っ!?」
目の前には豪華な部屋の空間だけがあるように見える。
扉に向かって走ったナミは腕を切って立ち止まった。
ーー危なかった。
肌には汗を垂らし、腕からは鮮血が滴っている。
この部屋にはからくりがある。
まさかと思ったナミは息を飲んで、寝台の横に置いてあった白粉を掴んだ。
粉を思い切り飛ばすつもりで息を吹きかけると、部屋に張り巡らされた鋭い糸が、白粉を纏ってキラキラと光った。
見える。
まるで出口までの道を閉ざすように、糸が張り巡らされていた。
蜘蛛の巣が、獲物を出られないようにするかのように。
「スパイの才能があるな。上出来だよ、ナミ。」
ドフラミンゴが背後で笑っていた。
部屋を縦横無尽に張られた糸は、出口まで人が通れそうな隙間もない。
「だがこれは減点だ。わけのわからん言い訳もな。」
ドフラミンゴがナミの腕を引き掴むと、糸に切られたその傷を見た。
「ドレスローザに帰れば跡形もなく治療できるんだが。全く、詰めが甘い女だ。」
なぜか責められるように世話を焼かれて、気づけば腕に布が当てられて包帯を巻かれた。ガタガタに。
不器用すぎるそれは、今までそんなことをしたことがないと物語っていて、ナミは混乱する。
「首のは黒曜石だが、まさか鷹の目からのものか?そうなら捨てろ。あいつのことだ、何か変な呪いでもかかっているに違いねェ。新しいドレスを用意させるから、脱げ。」
「....なっ、なっ....!」
「早くしろ。脱がされたいのか。」
「いやっ....あの....っ」
なんで!?
ナミの頭に大量のクエスチョンマークが浮かんだ。
命の危険さえ感じていたのに、そう思うことの方がおかしいみたいに。
ナミはホックをいくつか外されて緩んだ胸元を、しっかり両手で押さえて目を丸くしていた。
ドフラミンゴの巻いた包帯はもうヘロヘロと取れそうになっていて、それに気を取られて後ずさるとピンヒールの足元が縺れた。
転げそうになって、大きな体に支えられた。
ーー誘っているのか、と耳元で言われて。
「ちがっ!」
ボッと顔が赤くなる。
何故かそんな反応になってしまって、こんなはずじゃないと思うのに、耳元がこそばゆくて熱くなる自分を抑えられない。
その様子を見たドフラミンゴは、さっと顔色を変えた。
高級なドレスのまま、ナミを奥の部屋に引きずってベッドに投げ入れられる。
皺をつけていいような安物のドレスではない。
ナミはそれが気にかかるのにそんなことはつゆ知らずと言った風情でドフラミンゴが被さってきた。
ナミは四つん這いになってベッドを這って逃げる。
「あっ....!」
「男を煽る心得もありそうで何よりだ」
露わになった太ももの裏を指でなぞられたナミは顔を真っ赤にした。
「そんなのな、ぃ....っ!!」
「そうかな?」
「....ぃやぁ...っ」
今度は剥き出しの背中をツーと指の背で撫でられると、ぞくりと悪寒が走った。
逃げることを考えていたはずなのに、この体たらくではスパイで言うなら任務失敗だ。
しかしまだ、貞操を守ることを諦めていない。
祈るように、ナミはぎゅっと目を閉じて開いた。
ナミはくるりと体を反転させて上を向いた。
ドフラミンゴの表情の見えないサングラスと目が合う。
男の肌蹴た胸板に触れて、白い手のひらと甲で何度か往復して撫でた。
「.....もう。操らないでよ。いじわるね。」
「?」
どうやら猫は操られているていで行くことにしたらしい。
糸は一筋も出してはいないけれど、趣向がきいていて悪くないとドフラミンゴは笑う。
操られたつもりで、何をしてくれるつもりなのか。
ナミの豊かな胸元を思い切り引き下げると、申し訳程度に胸を隠した下着が現れたけども、同時に大量の宝石がバラバラと出てきてシーツに落ちた。
「あ?」
「あ、バレちゃった。」
ペロッと舌を出して笑う。
「これは俺のじゃねぇか。」
「いいじゃない。くれるんでしょ?」
ナミはドフラミンゴの首に手を回した。
自分の武器は部屋の隅に投げ捨てられている。なんとかあれを。
「.....何でもやるよ。その代わり」
耳元で囁かれた言葉にナミは耳を疑った。
それはもう、何とかして、多少は体を捧げてでもこの場を逃げようと思っていた気持ちが挫かれるくらい。
「.....お前をくれ。」
ナミは息を飲んだ。
その言葉に、真剣さを感じ取ってしまって、思わず黙ってしまった。
目を丸くして見ると、いくつも年上の男が少し、頬に朱を走らせて、あの余裕のある、人を手玉に取る雰囲気もなくて、あるのは切実さだけで。
絆されやすい自分に驚く。
自分への言い訳だってある。
操られているんだから。
じゃなければこんなこと。
ナミは高鳴り出した心臓を悟られないように手で押さえた。
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