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「さて、何故こんなことになったのか、説明してもらいましょうか?」


寄港した島は、至って普通の島に思えていた。

食糧や必要なものを揃えるには十分な規模の町があったし、人々も温厚で争いとは無縁の。
ただ、島の人間はあの場所にだけは近づかない。この島には、そこに行くと悪いことが起こると、まことしやかな迷信があった。

そんな情報をロビンが得て帰って来たのは事件が起こる直前で、ただ1つ島の人間が寄り付かない海岸で遊んでいたルフィがやはりことの発端だった。


「おーい!なんか変なのがいる!!変な生き物!飼おう!」

なんだなんだとウソップが寄って行く。
二人は腕まくりをしてその生き物に近づいた。

「うおー!ぷにぷに!!」

「冷んやりしてきんもちいー!!」

スライムのような生き物。
青だか紫だかの色をした、ぷにぷにのーー

「おーい、ナミ!見てみろこれーー!」

船にスライムを持ち帰ったルフィはナミに見せようと両手に持ったスライムを差し出した。

しかしちょうど、床で寝ていたゾロにつまずいてこける。

その拍子に、ナミの胸にぷるーんとスライムが飛んできた。

「なにこ、れ...?」

ナミは飛んできたものが自分の服を溶かしているのを見た。
触っても痛いとか痒いとかは感じないので危害はなさそうだったが、身につけた衣類が触れたところから溶けていた。本当に。

キャァァァア

ちょうど、ブルックお気に入りの本に出てくるような。






「いやーまさか本当にいるとは思いませんでしたね。都合よく女性の服だけを溶かしてしまうスライム。」

「お黙りなさいブルック。全身の骨を折られたいのかしら。」

現場を見た男共がロビンによって一列に正座させられていた。

「すびばせんでした...」

主犯のルフィは既にビンタが顔中を腫らしている。

「....なんで俺まで...」

ルフィに躓かれたゾロも巻き添えをくらった。

「ゾロくん、ここは黙って謝った方が身のためだぞ」

ウソップとチョッパーは既にルフィのビンタを見て震え上がっていた。

「さあ、あなたたち記憶を消しなさい今すぐに。できないならお手伝いしてあげるわ申し出なさい。」

トータルバウンティ、ん億にも及ぶ土下座は壮観だったが、ロビンの余りの怒りように着替えたナミが汗を垂らしている。

「ろ、ロビン、もういいから...」

「すみません!ロビンさん!私脳みそないんです!だから記憶は消せません!骨だけに!」

「お黙りなさいブルック。全身の骨を砕かれたいのかしら。」


ギャァァアアア


ブルックの断末魔を聞きながら、ナミは呆れて船を降りた。

サンジは買出しに出かけている。
多分、3日でたまるログの間、少しでも一緒に過ごせる時間が多いように努力してくれているのだと思う。

ナミは町をぶらぶらした。
その人々の暮らし、土地の隆起、海風、経済状況。
色んなことを見て回るのは自分の為にもなる。


すると突然、腕を引っ張られた。
訝しんだナミは、それをしたのが見知った金髪だったことにホッとして背中を追う。

ああ、好きだなぁと思いながら。



どこに行くのかと思いきや、サンジは手近な安宿に入った。

「サンジくん....?」

「ナミさん」

サンジの表情は固い。
部屋に入るなりナミを当たり前のようにベッドに横たえてブツブツと言った。

「噴水前に2人、道で3人、店で3人、大時計前に2人、」

言いながらナミの服を脱がせて行く。

「?何言ってるの?」

「君が歩いてるだけで、声をかけようとした男の人数だよ。」

現した鎖骨にキスをして、鋭い目がナミを見上げた。
強い眼光にドキッとして、ナミの顔が赤くなる。

「んっ、そうなの?」

「まあ声かける前に俺が蹴散らしたけど。」

首筋にかぶりつくと高い声が上がった。

「だからナミさんは一人で歩いてちゃダメです。町へ行く時は必ず俺と。いい?」

「えっ、うーん」

困ったように笑いながら言葉を濁すナミに、サンジが怒って指先で胸の先をひねる。

「ひゃん!」

「約束は?」

「....しない。〜〜〜っ!!!」

一段と強く両胸を責められて、ナミは声にならない声を上げる。

「こら。なんで。」

「だって....」

背中を向けて枕に顔を埋めるナミが言った。

「また焼きもちやいてくれるでしょ?」

責めるような手が止まる。

「あんたこそ、二度と私を避けないでよね。次やったら浮気するから。」

「...!!やだ!!」

「じゃあ、避けないでね」

横顔でじろりと見てくるナミに、どうしようもなくなる。

なんでこんなに可愛いのか?

この問題は一生解けないのか?という気持ちになる。


「もう、ナミさん...可愛いすぎ...」

「...わかっ、てるわよ。やっ、もう...」

ナミが身をよじるのを捕まえて、顔中にキスをした。
おでこに、鼻に、頬に、顎に、どうしたらこの想いが伝わるのか、試すように。
試行錯誤を繰り返して、それでも足りないのだ。
愛が溢れて追いつかなくて、言葉や行動はいつも後手後手だ。

一瞬前よりも今、いつも君を最高に愛している。


「わかってるわ。」

どれほど想われているか。

安心しなさいよ。伝わってるから。


そう思って、ナミはサンジの胸倉を両手でつかんでキスをした。












ロビンは男たちに一通り技をかけ終えた後、ナミが行ってしまったことに気づいて息を吐いた。

今はまだ、唯一の女同士と言う立場に甘んじるので、いいかと思う。

それだって、ナミの後姿を見てつまらなそうにしている、こちらもまた恋敵の剣士よりは恵まれていると少し優越感に浸った。

気を取り直して、船を降りたロビンはスライムを瓶の中に入れた。

いつかこれをナミに使う時が来るかもしれないし、念のため。











End

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