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□3.バルトロメオ
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3.バルトロメオ







「君は...バルトロメオ!?」

会うのはドレスローザを脱出して以来だ。
見知った人物の登場に、邪魔をされたことの憤りに、キャベンディッシュは混乱した。

ナミはピュッと柱の影に隠れてしまっていて、小心者の猫のように気配を消して出てこない。

何なの、ナミ先輩ってなに?
敵かしら。
こうなったらキャベツくんを囮にしてでも、こっそり逃げるしか...!

そんなことを考えていると、バルトロメオと呼ばれた人物は涙を流して床に膝をついた。

キャベンディッシュと知り合いなのだろうか。
そして何故そんなに項垂れているのか。


「ううっ.....遂に、遂に、ナミ先輩とお会いできるなんて....!!!オラは夢を見てるんだ...きっとそうだべ...」


うっ、バレてる。
柱に背を預けて横目で見ていると、大の男の涙の劇場が繰り広げられる。

「おい、キャベチ!オラの頬を引っ叩いてくれ!それか強く抓ってけろ!これで痛くなかったら、これは夢なんだべ」

「思いっきりしてやりたいところだが、生憎ぼくは今拘束されてるんだっ。
まあ、助けが来たことはありがたいが...ナミ、大丈夫だ。バルトロメオは盃を交わした君達の子分だよ。君に仇なすようなことはない。」

ナミはそれを聞いて恐る恐る姿を現した。

バルトロメオが口を大きく開けてハラハラと涙を流した。

光。

暗いはずの部屋に光が射す。

ナミが現れると、眩しくて目が見えなかった。

さ、さすがだべーーーナミ先輩、発光しておられるべ...!!

女神。女神だ。

そうでなければ、こんなに光り輝く理由がない。

もはや白く抜けた光源しか見えなくなっているバルトロメオに、ナミが声をかける。

「...ねぇ、船で来てるの?」

オラに声をおかけになったべーー!!!
意識を手放すな、耐えろオラーー!!

「な、ナミ先ぱ...!!そうです!そうです!宜しければうちの船にご乗船頂いて...!!か、か、か、かみ」

神の雫(サイン)も欲しいべーーー!!!!

「かみ?」

「放っておけ、それよりぼくの錠を解いてくれ。こいつらがいるならひとまず安心だ。」

「え、ええ....」

「あっ、ナミ先輩!!そんな雑用はオラに!」

バルトロメオはナミから鍵を取り上げてキャベンディッシュの手錠を解いた。

どうせ解かれるならナミが良かったとキャベンディッシュは不満気に手首を摩る。



バルトロメオの船にナミは大口を開けて絶句した。

じゃじゃーん!と手を広げるバルトロメオ、後ろで喜びと緊張に震えるクルーがナミに挨拶をする。

ゴーイングルフィ先輩号と名付けられているのだと言う。
この船を憧れの先輩たちに見てもらうのが生き甲斐だと言った様子のバルトロメオに肩の力がズルズルと抜けた。

「驚くのも無理はない。ぼくはドレスローザで見たことがあったけど。」

ぽん、と肩を叩かれてキャベンディッシュを振り返ると、美術品に触れるな!と、バルトロメオのクルー達にバシバシと叩かれていた。

連れ去られた船を乗り捨てて、ルフィ先輩号とやらは発進したが、ナミが驚くのはここからだった。

「あられだー!!おばあちゃんに電話しろー!!」

「いてっ、いてっ、ピチピチ体に当たって痛てーよー!」

「もしもしばーちゃん!?あられが降って来たんだけど、どうしたらいい!?」

ナミは慌てふためくクルーたちに震えた。

「おばあちゃんに聞いてんじゃないわよ!この、おばかどもがー!!」

もう!と言ってナミは手近にいたクルーから望遠鏡をひったくる。

「一時の方向に逃げるわよ!キャラヴェル船には慣れてるから幸いだわ!」

「「「.....!!ハイッ!!」」」

クルー達は麦わらの船の航海士のあまりのたくましさに涙しながらいい返事をした。

みんなの気持ちが一つになり、金米糖のような霰からやっとのことで逃げ出すことができた。
晴天の空にほっと息をつく。


「この船をナミ先輩に導いてもらえる日が来るなんて...もうオラ死んでもいいべ...」

「死ぬな!そんなことで」

床にひれ伏して泣くバルトロメオにナミがツッコミを入れる。

全く、変な男だ。

よくよく聞けばキャベンディシュともども、ドレスローザでルフィと共闘したらしいが自分はその場にいなかったのでバルトロメオの熱い視線に焦るばかり。

どうしても見せたいものがあると言うので船長室に着いて行くと、ごちゃごちゃとした色紙と麦わらの手配書がずらりと飾られていた。

「うちの新しい手配書じゃない。」

ドレスローザの一件で賞金が上がってしまった。
写真は可愛く撮れてるからいいけど。

「....なんで私の手配書にだけ黒幕が貼られてるの?」

一つ一つ額に入れられた手配書は均等に並んでいるのに、ナミのであろう一つの手配書には黒い布が掛けられていた。
どういうこと?と気を悪くする。

「いえ、その、オラたちこれを1日に何度か拝むんだけんど、その...ナミ先輩があまりに美し過ぎて...」

誘うような妖艶な眼差しに、バルトロメオを始めとするクルーたちは耐えられなかったのだ。
セクシー過ぎる表情は、ただ尊敬と羨望だけを注ぐはずの女神を穢すような思いを抱かせてしまう。
変なことを考えてしまうのを防ぐ為に、その写真は早々に隠してしまった。


「不埒な輩が見ないように、ナミ先輩のだけは黒幕を貼ってるんだべ。」

「なんかお葬式みたい...」

なんじゃそりゃ、とナミは思った。
男の事情など預かり知らないナミは、バルトロメオの話がどういうことか想像もつかなかったが少し顔を赤くした。

「違うんです!!決して、ナミ先輩が見たくない訳じゃなく、それはそれは神聖なものとして...」

「うん、なんかもう、信用するわ...」

とにかく、好かれていることだけは分かった。
助けてくれようとしていることも。


「じゃあ悪いんだけど、バルトメロン君、私の船まで送ってくれない?お礼はちゃんと、す、る、か、ら。」

ナミがバルトロメオに肩を擦り寄せてウインクした。
おねだりの時に胸の谷間を見せるのは標準仕様だ。


ギャーーー倒れるーーー!!
踏ん張れオラーーーー!!!

何とか気絶だけは回避して、(転倒はした)バルトロメオが足をがくがくさせながら頷いた。

「もももも、もちろんですだ!!!ナミ先ぱ...でも服!!!服を着てけろ!!」

そう言えば下着の上にキャベツの上着を羽織っただけだった。

ここは船長の部屋なので、バルトロメオが必死にナミが着られそうな服を探す。

こんなものは着せられない、とか、もっと手入れをしとくんだった、とか一人で頭を抱える男の肩にぽんと触れる。

「ねェ、そんなに慌てなくても...」

(ギャーーー!!!女神がオラの肩をお触りになったべーーー!!!)

一々うるさいが悪い気はしないのでナミは息をついた。
タンクトップを一枚掴んで言う。

「これ借りるわ。ちょっと大きいけど。」

くるりと背を向けてバルトロメオの服を着るナミに、ついに鼻血を噴出させて気絶してしまったのだった。





「確かにその服はまた刺激が強いな。」

「そうかしら。慣れなさいよ。」





キャベンディシュとナミは腕を組んで、泡を吹いたバルトロメオが運ばれて行くのを見ていた。










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