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□人魚姫25
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人魚姫25
ローend
胸が痛い。
ローの気持ちに応えたい。
でも、出来ない。
自分だけのことなら、ナミは目的の為に自分の体を使うことも厭わないけれど、本当にローが自分を愛してくれているなら、ドフラミンゴに体を差し出したことは後悔なんてものでは言い表せない。
嫌だろうなと、思う。
今は好きでも、それを知れば、嫌に思う。
愛情が目減りするのが怖かった。
海賊なのに、そんなことを気にするなんて。
でも、私がローなら、嫌だもの。
起きたことは変えられないのに、起こってもいない事に怖くなる。
嫌われたくない。
抱きしめられた温もりだけが残れば、私はそれだけでいい。
ローを愛してる。
だから、ローの気持ちには応えられない。
「ナミ」
子供たちを下ろした後の船は、随分静かになった。
もう一度ドレスローザに上陸し、スマイル工場を破壊する機会を伺う一行は、ナミの航海術によって海原を進んでいた。
「...何?航海は順調よ。指示をくれればいつでも向かわせるけど。」
「秘密裏に入港できる場所が見つかるまでは危険だ。...そうじゃなく」
ローはナミの腕を引いた。
「何故おれを避ける。おれが何かしたか。」
「...そんなことない。避けてなんかないわ」
「じゃあ」
ローは細い手首を強く掴んだ。
「お前の気持ちを言ってくれ。危険を冒してまでおれを助けたのは何故なのか、説明しろ。」
キスをして、海楼石で自由を奪った。
昔慕う人がしたように閉じ込めて隠し、ドフラミンゴから守った。
「言ったでしょ...あんたに死んで欲しくなかったの。」
「何故だ。俺はお前の仲間でも何でもない。ただ同盟を組んでるだけだ。」
「だって、あんたは悪い人じゃないじゃない。」
「別にいい人間でもないつもりだ。」
「...あの夜話して、あんたのことを、自分の兄みたいに思ったわ。私のことを分かってくれるって。分かり合えるって。子供たちだって助けてくれた。だから、ローは大切な人だと思ったの。それだけ。他に理由は要らないでしょ?」
ナミは俯いた。
ドフラミンゴとの間に何があったか、知られたくなかった。
ローとそう言う関係になることは、それを知られると言うことだ。
二重スパイをした挙句、ローの側についた私を、ドフラミンゴは怒り狂って抱いた。
それはもう、ローに奪われるくらいならナミを殺そうと、何度も思われるほど手酷く。
きっとローは自分を責める。
そして離れて行ってしまう。
汚れていても、綺麗じゃなくても、自分自身は構わない。
全てはローを守るためにしたこと。
自分だけなら、そう思えていたから。
それは誇りだったから。
「俺はお前を愛してる。お前も、そう言っているように聞こえる。」
バレているのなら、誤魔化しは意味がない。
ナミは両手で顔を覆った。
「...うん、ローが好きよ。でも、諦めて。私はあんたとそう言う関係にはなれない。」
「なぜ」
ナミは涙を零した。
「愛してるからよ。嫌われるのが怖いの。」
「何をそんなに怖がってる。言えばいいだろ、全部。」
ーーそんなこと、出来ない。
ナミは涙を零すばかりで、小さく弱々しかった。
「お前が何を言っても、嫌ったりしない。怖がらなくていい。ずっと側にいたい、守りたいと思ってるだけだ。」
ローがナミを抱きしめた。
ナミは胸を押し返して抵抗する。
「やめて...!私、綺麗じゃないの。あんたに失望されるのが、嫌なの。私はあんたが好き。でも、私はドフラミンゴに何度も...」
ハッと目を開いたナミは口元を押さえた。
言ってしまったと思った。
ローの顔を見るのが怖いのに、刺青の手はナミの顔を無理やり上に向かせた。
ローと目が合って、戸惑う暇もなくキスされた。
強く強く唇を押し付けられて、抵抗する手から力が抜ける。
「そんな事を気にしてたのか。バカだな、お前。」
「なっ...」
「関係ねぇよ。お前が好きなのは俺で、俺もお前が好きだ。」
「私はっ、あんたが嫌だと思って...」
「お前が目の前にいて、お前に触れないなんて、無理だろ。」
「っ...」
目の前の女しか見えない。
ここにいるナミが、ナミの全てだ。
「....いいの......?」
「お前が欲しい。」
想像よりも奥ゆかしい女を、幸せにしてやりたかった。
喜ばせたい。愛している。
その気持ちは、何だって凌駕するのだ。
包帯を替えるとわざとらしく言い訳して、女部屋に二人きりになってベッドにナミを座らせた。
靴を脱がせてやった脚にうやうやしく口づけして内腿を撫でた。
ナミは真っ赤になって口を強く結んでいた。
「我慢するなよ。声、外には聞こえねぇだろ。」
「んっ...」
柔らかなシーツに押し倒して唇を合わせると、細い腕が首に巻きついて来た。
ふわふわと胸を触って髪に手を差し入れてその感触を楽しむ。
どんな声で鳴くのか。
我慢をさせたくなかった。
だってこれは恋人同士の行為なのだから。
「あっ...ロー...」
「なんだ」
「好き...」
ローは目を丸くして、より一層強くナミを抱きしめた。
キスしながら胸を揉みしだき、慌てながら自分の靴を乱暴に脱いだ。
ゴトゴトと靴が落ちる音が響いて、ベッドがギィギィと軋む。
柔らかい体をまさぐる手は性急に肌を露わにして行ったし、ナミの手もローの背中をゆるゆると撫でていた。
「あっ!あ...だめ...っ」
足の間に指が蠢くと、既に潤ったそこにナミが真っ赤になる。
下着の上からゆっくりと擦ると、女の腰が揺れた。
「やっ、あん、あぁ...っ!」
胸の先と同時に擦ると声は大きくなった。
頭のたがが外れ出し、胸を包む下着を上に押し上げて先を口に含んだ。
手は下着の中に差し入れて、濡れた指を擦り付け、指を挿れて中を擦った。
ナミはどうすることもできずに声を上げた。
「いや、ああっ!!いっ、ちゃ...!!ああん!」
びくびくと中が軽く痙攣したので指を出してキスした。
「んんっ...ろ、きもちい...」
とろりとした目がローを見て、逆にベッドに押し倒される。
女は乱れた服で男にまたがり、尻を突き上げて男の耳を舐めた。
「う...」
「耳が弱いの?可愛い。」
ナミは胸を弄りながら、股間に手を伸ばす。
服の上から触って、もう十分に猛っているそこに嬉しくなる。
「硬いね。」
「!!」
服を脱がせてモノを出した。
躊躇なくペロペロとそれを舐めて、赤い顔でとろりと笑う。
「んっ、んっ、きもちいい...?」
「う...、ああ...」
こんなことは、誰にもしたことがなかった。
初めての試みにも気持ちいいと言うローに嬉しくなって、また笑う。
するとローがキスをしてまた押し倒された。
なぶるような余裕のないキスに、首筋に腕を絡ませる。
胸を揉まれ、性器同士を擦られて、また声が出た。
「あっあっ...来て...っ!」
ズブリと吸い込むように合体して、ゆっくりと腰を動かされる。
気持ちが良かった。
隅々まで愛されて、心も満たされているようで。
ぎゅうぎゅうと抱き合って絡めた足で締め付けた。
もっと深く、深くつながりたかった。
ひとつになって溶けてしまいそうなほど密着して、声を抑えることも出来なかった。
男の腰が速くなり、二人同時に果てた。
ーー何も聞かないのね。
優しいなと、ナミは思った。
気持ちを確認し合ったあと、ローが背を向けて眠ることはなくなった。
「どうして」
向かい合ってじっと見つめて来る男にナミは何か話さなければならないような気がして、胸の刺青を触りながら言った。
「どうして私のこと好きなの?」
男が目を見開いた気配がした。
ナミはそれが気恥ずかしくて目を伏せ刺青をなぞる。
ローは細くあたたかい腰を両手に抱きながら言った。
「....似てると思った」
今度はナミが目を見開く番だった。
「お前と、おれは。大切にしているものが似てると、思ったから。」
ああ、だからか。
分かり合えると思ったのは。
何故だか、泣けた。
ナミはローの肩に唇で触れるほど近づいて、目を閉じた。
閉じた瞼から、涙が次から次へと溢れて来るのが止められない。
こんなに愛せる人と、出会うことができたなんて。
愛してる。
落ちた言葉は、どちらのものかわからないまま。
二人は幸せに暮らしました。
End