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□の件
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ぽんぽんの件










さみしいな、と思うのはこんな時。

ナミに頭を撫でられるのは初めてではない。

いつも、安心するな、と思うけれどそれを言葉にしたことなどなかった。

撫でる手が終わる時、寂しいと思う。

もっとずっとして欲しいと思うけど、そんなことは、決して、言えないのだ。






ゾロは無言でナミの脚を持って開いた。

どこもかしこもみずみずしく、目は涙で潤んでいる。
少し焦らしすぎたから、こんな表情をしているのだろう。
その表情だけで、興奮が脳を突き抜ける気がした。
綺麗な服を着て、誰もが見ずにいられない姿を晒しておいて、自分にしか見せない顔を今しているかと思うと。

「あ」

「力抜け」

「や、こわい」

怖いってなんだ。
今まで散々して来たことだ。

そりゃ、たまには腰が砕けるくらいしたこともあったかもしれないが、怖い?
なにが。どこが。


「ん、なに、怒ってるの...?」

「あ?」

先を中に挿れながら首筋を舐めた。
理解できない言葉に喰らい付いてやろうかと思う。

「だっ....て、あん、ゾウに来てからあんた、怒ってるじゃない...んっ」



それは。

目の前でルフィに抱きついたから。
ぐる眉の為に泣いていたから。
ミンク族の連中にべたべたされていたから。


「怒ってねェよ。」

「うそ、ハァ、んっ、顔が、怖いもん...っ」


溶けるような顔が可愛くて腰は止められない。
嫉妬深い自分を説明することなどできないので、言わなくてもわかってもらえないだろうかと願うしかなかった。


ベッドがギシギシと軋み、更に奥に押し込みたくて細い脚を肩に掛けた。

ナミの高い声を聞くたび、嫉妬も怒りも消えて行くようで、ほっとしたのが素直な気持ちだった。
その代わり快感が波のように押し寄せて来て、分け合いたかった。



ーー怒ってても、優しく抱くのね


ナミは朧げにそんな事を思った。

明らかに怒っているのに、手は、唇は、私に快楽を与えようと優しい。

じゃあ、嫉妬かな。

もしかしたら、ベポたちにキスされたのを見られたのかもしれない。

それがこの土地の慣習だと頭ではわかっていても。

嫉妬してるんだ。

嬉しくなって思い切り男に抱きついた。
お互いの肌が熱くて気持ちがよかった。


「ああっ...!ゾロ、好き...っ」

「...っ」



ナミの声を聞いて顔に血が上った。

男だって女と同じだ。

愛がある行為の方が最高に決まってる。

あまりの快感に頭が沸騰しそうだった。



もっと気持ち良くしてやろうと思った。
もっともっと優しく抱いて、自分なしでは生きて行けないくらいに。

荒い息だけが部屋に響く頃にはもう何度絶頂を迎えたか、迎えさせたか分からなかった。

自分の首に巻きつく細い腕が嬉しかった。

好きだと言ったこともないし、愛してるなんて以ての外で。

なのに、どれほど好きか、伝わっていればいいなと希望ばかり抱いている。

好きだと言われてこんなに喜ぶくせに。




「ちょ、ゾロ、痛い」


ナミはゾロの胸を押して迷惑そうに言った。

抱きしめる力が強すぎて肋骨が折れそうだったのだ。

ゾロは驚いて腕を離した。

バツが悪そうにしている顔を見て、ナミが言う。

「やだ、離さないで。...はい。」

ゾロの手を取って腰に回した。
それだけで、今まで散々触った身体にまた照れた。
綺麗で滑らかなくびれに無骨な手が這う。

「もうちょっとぎゅっとしても大丈夫よ。」

言われるままにぎゅっと手に力を込める。

ナミは嬉しそうに笑った。

「そうそう。よく出来ました。」

ぽんぽん、と、頭を撫でる。

ゾロは赤くなって目を逸らした。

普段頭を触られることなどないから、違和感があるはずなのに、安心するのだ。
この手にだけ。

「嫉妬したの?」

「...する訳ねェだろ。」

「うそね。あんた嘘つく時眉が上がるもん。」

ナミがにやにやしている。
おもしろくねェ。
出来るだけ表情が変わらないように集中した。

「ベポたちにキスされたの見てたの?」

「...知らねェ」

「ふーん」

頭を撫でていた手が止まった。

さみしいなと思う。

もっと、ずっと撫でて欲しいようなそんな気が。


「私のこと、大好きなの?」

「.....さあ。」



ナミは眉が上がった男の顔を見てにっこりと笑った。



いつも、朝まで抱きしめる手を離さない男がどれほど自分を愛しているかは、よく、知っていたから。











End

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