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□デッドマンズハンド
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16.エースサボ共闘
「「ナミ!!!」」
闇の波はごっそりと周囲のものを奪って行く。
オレンジ色の光が、かき消されるように黒に覆われた時、サボとエースの頭は怒りに叩かれたように揺れた。
「テメェ⋯⋯!!!」
「なんだ、インペルダウンの警備はザルか?エースが出て来てるじゃねぇか。」
「お前がレベル6を解放すると言うから警備諸々抜け穴を使っておいたのさ。そこから出てきたらしい。」
黒ひげの問いに、シリュウが刀を肩にかけてため息を吐く。
エース奪還が容易だったのはその為か。
確かに手薄だったと、サボはギリと歯をくいしばった。
シリュウの傍らに闇がうねる。
うねった黒は形を変え、人が通るほどの暗黒の円になり、中から人間が出てきた。
闇から吐き出されたナミは息も荒く、その場にへたり込んだ。
ナミ。
2人はオレンジ髪が上下に揺れるのを凝視する。
───無事か。
エースとサボは顔を見合わせ、頷き合った。
炎と龍が、闇と雨に対峙する。
炎は燃え上がり、闇は蠢く。
血を降らせるのは、龍か、雨か。
「エース、お前とまた戦うことになるとはなァ」
黒ひげが笑いながら言った。
シリュウは気怠げに上階を見上げる。
「やれやれ、マゼランが足留めされてるせっかくの好機が⋯⋯」
「⋯⋯」
体重を床に押し付け、地面を蹴る。
重心が真上に上がる。
革靴の音は響かなかった。
男たちが踏み出したその初動。
エースとサボは、各々が対する相手に向かって行くものだと思われた。
しかし、2人はそうはしなかった。
エースとサボはシリュウだけに向かって行ったのだ。
ナミの側にいた為である。
ナミを人質に取らせない。
傷つけさせはしない。
思いがけない一手に、二打をかわさなくてはならなくなったシリュウが一瞬たじろぐ。
同時に、エースが飛び込んで来ると思っていた黒ひげも、刹那の出来事に判断を奪われた。
黒ひげは一瞬の差で気付けなかった。
2人の攻撃を受けて退くシリュウを尻目に、もう一つの脅威が迫ったことに。
取り返しのつかない一瞬、明暗を分けるその刹那に。
「あんたの相手は私よ。」
ナミが黒ひげに向かって飛び込んでいた。
───闇が海に負けた。
ナミは持っていたのだ。
海楼石の錠を。
看守が誰でも持つ訳ではないそれを、探して、隠し持っていた。
ここだと言うところで出す為に。
「テメェ⋯⋯」
能力者はこれに触れるだけで無力になる。
どんなトリックを使おうが、どんなに強かろうが、この事実だけは変えられない。
ガチャリと黒ひげの後ろ手に手錠をかけ、ナミは息を吐いた。
上手くいった。
エースとサボは自分の意図をわかってくれていたようだ。
闇から這い出た時、ナミは2人に合図を送った。
シリュウを足留めした2人は主犯の確保を気配で感じているだろう。
ナミが戦っている2人に目をやると、突如自分の体が浮いた。
「ようやった!」
そう言った誰かに担ぎ上げられている。
「誰!?」
「儂の名はジンベエ。エースさんの友人じゃ。お前さんに何かあってはいかんとあの2人に言い含められておる。」
「ジンベエって⋯⋯七武海じゃないの!!」
「もう元じゃ。儂らで退路を確保する。」
ナミはすぐさま思考を未来に転換させる。
「軍艦が10隻よ?バスターコールより多い。」
ジンベエは鋭い眼光で言った。
「策があるわい。」
黒ひげ海賊団の船員達が合流し戦ったが、エースとサボは劣勢にはならなかった。
強い。
背に兄弟を感じることが、こんなにも自分を強くする。
体は驚くほど軽くて、指の先まで力が行き渡り、相手の動きが手に取るようにわかる。
自分を解き放つように、2人は戦った。
怖いものなど、何もない。
自由に。
前に向かって、光に向かって、この手を伸ばすだけ───
ひゅるるるるる
ドカ───ン!!!
「ヒーーーハーーーー!!!」
地面を突き破って、何かが現れた。
その勢いのままに飛び出した人間が、空中から降ってくる。
サボとエースは同時に叫んだ。
「イワンコフ!?」
「クロコダイル!?」
「「ルフィ〜〜〜!?!?!?」」
爆煙と、土埃の中に
世界は輝いていることを確信する。
ルフィが砂塵と共に地面に着地した。
背後の追っ手を気にしながらこちらへ向かって走ってくる。
「レベル6まで行ったのにエースはいなかった!!リフトでマゼランは下りて来ちまうし!!
どこにいるんだエース⋯⋯っておる───!!!!!」
ルフィの目玉と舌が飛び出る。
「よ!ルフィ!」
エースは快活に笑って手を上げた。
「なななななんで!?よかった!おれたすけようと⋯⋯!!さがして⋯⋯!!」
涙を流すルフィに、エースは親指でサボを指した。
「⋯⋯⋯⋯え?」
ルフィがサボの体に飛びつく。
ペタペタとサボの顔を満遍なく触る。
「でかくなったな、ルフィ。」
横でイナズマが言った。
「ルフィくん、早くしなければマゼランが来る。」
「サボ!!あんたが直々に乗り込んで来てるとはね!
エースボーイは強運っチャブル。」
「麦ちゃん!!よかったわねいっ!!」
「目的が果たされたなら次は脱出だろうが。ボヤボヤしてねぇで進め。」
「⋯⋯」
ダズ・ボーネスが黙っているのを尻目に、エースが手際よくラフィット達を縛り上げている。
再会を喜ぶのは一先ずお預けだ。
エース、ルフィ、サボは迫り来る毒に対峙した。
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