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□WAVE!
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WAVE!










軍隊には規律がある。
ここ海軍ではより強い効力を持ち、誰も逆らうことのできない規律。

「次!おまえの名は!?」

「はっ、はいっ!ナ.....ナミゾウですっ!!」

やけにすらっとした細身の男が、帽子を深く被って言った。









シャボンディ諸島、上空。

そこに空島ウェザリアは浮遊していた。
風を操り、雲を生み出し、ジェルマにも引けを取らない科学力を持つ国。

「ナミちゃん、見えたぞい。あれがシャボンディ諸島じゃ。」

二年間共に過ごした老人達ともとうとう今日でお別れだ。

「寂しくなるのぉ〜〜」

「ナミちゃんの罵倒がもう聞けなくなるとはなぁ」

「あの怒鳴り声。」

「人を顎で使う人使いの荒さ。」

「わがまま。」

「...ちょっとおじいちゃん達、ぶん殴られたいの?」

双眼鏡から目を離して、ナミが言った。
老人は都合が悪くなるとすぐに耳が遠くなるらしい。
ワイワイと集まって口々に好きなことを言うのがお決まりだった。

「2年でまた随分きれいになって。」

「ナミちゃんのフォトブック作ったぞい。見る人〜〜?」

「ほぉ〜、2年前はこんなにあどけなかったかの?」

「あっ、これはみんなで海に行った時のじゃ。」

写真には女王のようにナミを囲み、大きな団扇をあおぐ老人たちが写っている。

「寂しくなるのぉ〜〜」

「たった2年で、よくこのウェザリアの科学を学び切ったのお。」

この2年のナミの努力は、ここにいる誰もが認めていた。
毎夜遅くまで、机に明かりが灯っていることも知っていた。
彼女には実践的で豊富な気候の知識と、新しいものを受け入れる柔軟さ、知らないことに教えを請う謙虚さがあった。
力になってやりたい、誰もがそう思う姿勢が。

「私も寂しいわ。今まで色々と、本当にありがとう。」

「飲み物に氷は入れない!」

「柔軟剤は無添加派!」

「万年筆はマーク社のミドリペンシル!」

2年も共に生活したので、嗜好もばっちり頭に入っている。
寂しいけれど、背中を押してくれている。
ナミは老人たちにくすりと微笑んで言った。

「じゃあね、みんな!行ってくる!」









久々に地に降り立ったナミの足取りは軽い。

さて、サニー号の様子も見たいし、港に行きますか。
そしてショッピングモールで買い物だ。これは外せない。
その為に早めに入島したのだ。
みんなにも会いたい。
ロビンが早く来ていたら、一緒に買い物に行くこともできる。

海賊船であるサニーがあるのは治安の悪いグローブだ。
ナミは危険がないか周りに目を配りながら2年ぶりの我が家を目指す。

するとぴくりと、反応せざるを得ない会話が耳に飛び込んで来る。
グローブに船を付けた、どこかの船乗りらしかった。


「じゃあこの船にそれが乗ってるってのか!?」

「しっ!声がでけぇよ。船長が取り引きするのを見た奴がいるんだ。2000年前のお宝だぜ。何でも昔王妃に献上された宝石だとか。」

「それ何万ベリーくらいだよ。何百万か。」

「バカ、何億何百億の世界だっての!失われし秘宝だぞ!古代から伝わる」

「すんげぇ....ちょっともらえないかな」

「な訳ねぇだろ。天竜人に献上されるか、博物館に展示するってとこだろ。だから旅程が複雑なんだよ。」

「へぇー」






な、な、な、なんですって....

ナミは武者震いした。

こんなことを聞いてしまうのは神のお導きなのだから、立ち止まらない訳には行かなかった。

聞こえて来る。
その宝石が私に言ってる。
ーー私を盗んで

それを盗らないなんて、泥棒猫の名が廃る。



約束の日にはまだ何日も猶予がある。

ショッピングモールでの買い物を諦める代わりに、ナミは迷わずその船に潜り込んだ。






久しぶりの金庫破り。
ナミは胸がわくわくするのを感じていた。

忍び込んだ船の構造を見て、どこにブツが隠されているのか推測する。
どんな宝石だろう。
見たことのないようなお宝。
王妃の宝石なんて、ロマンがある。

そううっとりしながら物陰に隠れていると、ぐらりと船が揺れた。

ーーーあれ?

ナミは焦って周りを見渡す。


出港しちゃってるーーー!!??


なんで!?さっきの男達の様子を見るに、まだ出港の準備は整っていなかったのに!

予想外の展開に冷や汗が流れ落ちる。

いや、でも。
宝石だけ盗って出港前に脱出する計画は崩れたけれども、ナミは気をとり直した。

ま、まあ大丈夫。
今の私ならすぐにお宝を盗んで、小船で脱出できるはず。


そう思っていると、上で厳めしい足音がしたので身を低くして隠れた。
1人や2人ではない。何十人かの、厳格な足音。

ーーーまさか、この船。


「G7第2小隊、これより商船の護衛任務にあたります!敬礼!」

「ハッ!」


海軍の船だったのーーー!!??


号令を聞いて確信し、ナミはとんでもないことになったと頭を抱えた。

私はちょっと立ち寄ってお宝をいただきたかっただけなのに。

船動いちゃってるし!
その上海軍乗ってるし!!

ついてない!
私のバカバカバカバカ!


焦るナミの内面をよそに、シャボンディの諸島を成すマングローブは後ろに遠ざかって行った。










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