novels2

□大人にならないで
1ページ/1ページ

「あたし、しょーらいとらおくんとケッコンするの」


ガシャアァァァン!!!




「…ちょっと、サンジ君大丈夫?」
「う、うん平気だよナミさん!それよりおっかしいなー、パパ耳が遠くなっちゃったみたい。どうした、トランクに血痕があるって?」
「とらおくんとケッコンするの!!」


ガッッシャアァァァン!!!


2枚目の皿が犠牲になった。
完全に石化したサンジの横で、愛しい愛しい彼の妻、ナミがやれやれと皿の欠片を拾う。
一家団欒の楽しい夕食どき、その後片付けの場面に突如爆弾を投げ込んだテロリストの正体は、二人の間に生まれた愛娘である。


「なっなななんでなんで!?なんであんな無愛想で極悪顔のドクターハートスティーラー!?こないだまでパパと結婚するって言ってたじゃん!!!」
「だってぇ、パパはママとケッコンしてるからだめだって」
「言ったけど…!言ったけど、なんでよりによって…!!」


血の涙を流しのたうち回る父親の姿を気に留めることもなく、今年4歳になる長女は父譲りの金髪をふわふわと揺らしながら無邪気に駆けて行ってしまった。


「お医者様なら将来安泰だもんねーって言ってたわ。そういうとこしっかりしてるんだから…誰に似たのかしら」
「(確実にナミさん…!!)」
「あーぅー」
「!!どちたー?パパを慰めてくれるんでちゅか?」


ベビーチェアにちょこんと座ってまるい手足をぱたぱたさせていたのは、1歳になったばかりの次女である。


「この子はゾロが好きみたいなの」
「ぐはッ………!!?」


娘を抱き上げたサンジに、妻は笑顔で追い討ちをかけた。


「ゾロがだっこすると笑うし、お気に入りのおもちゃも緑だし」
「じゃ、じゃあ単純に緑色が好きなんじゃ…!?」
「違うと思う。だってこないだヨンジがだっこした時はギャン泣きだったもの」
「……どうしてウチの小さなレディたちは揃いも揃って仏頂面の剣士がタイプなの……!!」


入り交じる愛情と悲哀で爆発寸前のサンジは、にこにこしていた次女が泣き出すまで、どこにも嫁にはやらんと小さな身体を力いっぱい抱き締めたのだった。





大人にならないで
(もう少しだけ、おれだけの天使でいてよ)





END

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ