『題名を無くした物語』

□第一章
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「これでいいか…」
アリシアは青色の長い髪を整え、ネクタイを締めて身なりを整えると、ドアノブに手をかける。

ギィーーー

今にも壊れてしまいそうな音を立てて扉はゆっくりと開き、いつもと同じようにじめじめとした薄暗い通りに出た。

街灯の一つない、下手すると足元を見ることすら危うい道を歩いていると、周囲に光が指し闇になれた目が痛む。

「まぶし‥」

反射的に腕で目元を覆い突然の強い光に耐える。

少しして目が慣れてくるといつもの風景が見えてきた。

なんてことは無い。

いつもの道だ。

人が忙しなく行き交う中をぶつからない様に避けながら“あの場所“に向かっていると、歩き始めて数分がたった時誰かの視線を感じた。

少し歩くペースを早めると同じようにペースをあげ誰かがついてくる。

敵意にはなさそうな気がするのだか、決めつけるには早急すぎるだろう。

ここで大事にするのは避けるべきだろうと思い至ったアリシアは大通りから進路を変えて脇道に入る。

先ほどと同様じめじめとした辛気臭い雰囲気漂っている脇道だ。

あまり気の長くないアリシアは脇道に入って数分後、人が居ないことを確認して常時装備しているナイフに手をかけると、軽い牽制もかねて背後にいる人物に向かって投げつける。

ナイフは背後にいる人物のいる電柱にあたり、カランと甲高い音を立てて道に転がった。

「いきなりナイフを投げるなんて危ないじゃないかアリシアちゃん。そう言うのは先に敵か味方か確認してから投げないと」

アリシアをつけていた人物…彼は場違いな陽気な声音でそういうと柱の影から 姿を現して微笑んだ。

その彼は今まで飽きるほど見てきた、見慣れすぎた人物であった。

「‥‥セシル?」
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