夢100 創作

□DEAD OR ALIVE
1ページ/8ページ

死のう

そう決めて家を飛び出して3時間が経った。
どうやら自分はなんだかんだと言って死ぬ勇気がないらしい。
同じ場所でずっと米粒のような人々を眺めている。

「…………」

なんで死にたいか

そう聞かれるとなんと答えていいか分からない。
いじめられているんけでもないし、虐待を受けている理由でもない。
ただ孤独に耐えられなくなった、というのが正しいのかもしれない。
こんな時少しの異変に感ずいて電話を掛けてきてくれる友達もいない。
皆友達と言うには遠すぎて、彼らと関わり合う度にシェミは余計に孤独を感じた。

「そんな所で何してるの」

「…………」

どうしてこの人がここに

そう思って振りかけると、やはり見覚えのある彼。

「…………御機嫌ようウィル王子」

これが意図して来てくれたのであればどれだけ嬉しいか。
別に彼だから嬉しい訳では無いが、こんなふうに来てくれる人がシェミが欲しかった。
ああこんな時に来てくれるなんて彼は本当に王子様のようだ。

「いつまでそこにいるつもりなの?」

「……いつまででしょうか。
気持ちが追いつくまで、というのが正しいのかもしれません」

「死にたいという気持ちに?」

なぜ彼はそんな事が分かるのだろうか。

「まさか」

ああ、気づいてくれる人がいる……でも、この人じゃない。
否定すればこの人だって勘違いだと思うのだろう。

「……そう?
僕には死にたがってるようにしか見えないけど」

こんな状況で笑っているウィルにシェミはぞくりとする。

「……私が死ぬ瞬間を看取ってくれるんですか?」

それも悪くないかもしれない。
最後を看取ってくれる人がいるなんて幸せなことだ。
なんといったって孤独じゃない。

「ねぇ」

「はい」

「僕とゲームをしよう」

彼はそう言うと封筒とペンを取り出した。

「君の人生最後のね」

「ゲームですか」

「君が僕の一つの嘘を見破れたら君の勝ち」

こんな状況で彼は何を言うのだろう。
そんなの受けるわけが無い。

「見破れなかったら僕の勝ち」

「……おことわ

「かけるものは君の心臓」

“心臓”

「君が勝てば僕は君の最期を看取ってあげる」

「…………」

「僕が勝てば僕が君を殺してあげる」

なんだ
このゲームはなんの意味もない
どちらの結果でもシェミの勝ちだ

「良いですよ」

そう言って笑いかけるとウィルは微笑んだ。

「君は絶対に負けない
君にとって実に都合の良いゲームだよ」

「…………」

この人はシェミのことを分かっている。
もっと早く出会っていれば何かが変わっていたかもしれない。
否、やはり何も変わりはしない。
もっと早く出会っていればきっとこれ程までに歓喜しないし、彼と関わっていないだろう。

「期間は三ヶ月
もし君が嘘に気がついても君は三ヶ月の間僕のゲームに付き合って」

「わかりました」

「せっかくだしお互い楽しもう」

内容に合わない明るい笑顔でウィルはそう言った。
私を殺したいがためにこのゲームを提案した彼がどんな嘘をつくのか楽しみだ。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ