夢100 創作

□箱庭
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目を開けるとそこは真っ暗なへやだった。
足首に触れる冷たい金属の感触にシェミの心臓は異様な程高なった。
さっきまで自分の部屋にいたはずなのに。

「ーーーどこ、どこなの…ここ」

恐ろしくて震える声を上げると、物音がした。

「なに!誰かいるの!?」

「……ん……シェミ?」

「その、声は…………ウィル、さん?」

声がする方に顔を向けるが暗すぎて何も見えない。

「やっぱりシェミなんだね。
とりあえず声がする方に歩いてきて?
顔が見たい」

1歩2歩と歩みを進めると、自分以外の足音も聞こえてきてウィルに近づいていることを確信する。
それと同時にジャラジャラと金属が擦れる音がして、緊張感を生んだ。

「ウィルさんは、何か知ってるんですか?
ここ、何処なんですか」

震える脚で歩みを進めながら、今すぐにでも駆け出したい衝動を抑える。
ここがどういう場所か、何があるのか見えていない以上駆け寄るのは危ない。

「分からない、さっきまで眠ってたみたいで状況すら掴めてないよ」

靴音が近くなる度に早く、早くと気がせいてこの不安から解放されたくなる。

「……ウィル、さん…………はやく、はやく会いた……

何かに当たったような衝撃に顔を上げるとウィルがいた。

「ウィルさん!」

「良かった…普通に会えて。
若しかしたらガラス壁があったり、実は違う部屋に居たりするんじゃないかって冷や冷やしたよ」

ヘラヘラと笑いながら何でもないように恐ろしいことを言う。

「本当に清々しいほどホラー脳ですね!!!」

そんなことを言っていると急に周囲が明るくなって、シェミは目を細める。

「ーーっ」

目が慣れてきて辺りを見渡すとやはりそこは見慣れない部屋。

「……………………ここ……」

「ここがどこか分かるんですか!?」

「…………僕の、部屋?」

驚いたようにウィルはそう言って机まで行くと引き出しを開ける。

「ウィルさんの部屋?
どういう事ですか、なんで私がウィルさんの部屋に……」

「…………これ、なんでこんな物が」

ウィルはそう言うと机の中からある紙を取り出した。

「…………え…私の、写真……?」

家族しか持っていないはずの家族写真を目の前に突きつけられシェミは目を見張った。

「言っておくけど僕じゃないから」

ウィルはそう言うと引き出しにあったものを机の上にばらまいた。

「ーーっ」

「それにここ、僕の部屋に限りなく似せてあるけど……窓がない」

「何……どういうことなの」

震える声で絞り出すように呟いて顔を上げるとスピーカーのようなものに目が止まった。

「暇を持て余している君たちに私からのプレゼントだ」

「ーーー!?」

「スピーカーから声が…」

「ゲームは簡単、その部屋から出るにはどちらかが死ねばいい。
よく考えて決めてくれたまえ」

「死ねばいい、ねぇ…安直すぎて面白くない。
君、映画作りには向いてないね」

不快そうに眉を顰めてウィルは呟く。

「面白いとか面白くないとかそんな場合じゃあ……」

「君たちのことはよく知っているよ。
だからぁ……もし2人が運良く逃げれたとしても…………君たちの大切な人は

「「この世にいないかもしれない」

とか何のひねりもないこと言わないでくれないかな」

ウィルは声の主に被せるようにそう言ってソファーに座った。

「……完全に読み切ってますね」

「脚本がわかり易いからね」

とても恐怖を感じるシチュエーションの筈なのに、それほどの恐怖を感じないのはウィルのつまらなさそうな対応のせいだろうか。

「流石ウィル・ビートンだ。
私などでは相手になるまい。
……ただこれは映画の評論会ではない。
君たちが主役のホラーゲームだ」

声の主がそう言うとドアのポストから何かが投げ込まれた。

「……けん、じゅう」

「君たちへのプレゼントだ。
受け取れ」

その言葉を最後にスピーカーの電源が落ちる音がして、二人の間に沈黙が流れた。
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