夢100 創作

□雪とマカロン
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「お前雪似合わねぇな」

「よく言われる」

同じ職場の彼は私といることが多い。

「それめっちゃ分かるー」

「ハロウィンのイメージ強すぎて」

「ほんとそうですね」

けれど会話をかわすことすら稀で近いようで遠い。

そうかな
私は意外と似合うと思うんだけど

その一言が伝えたいのにどうしても口が動かない。
でも彼と話したいから……

「……わたしは」
「えー?意外と似合うと思うんですけど、私」

この子みたいな明るさがあれば

「まじ?本気?」

「ほら雪のなか佇むのイケメンの破壊力やばいっしょ」

「それイケメンだったら誰でも当て嵌んじゃねえか」

「えへっ」

……私はそんな理由じゃないのに

「僕の話はいいから仕事仕事」

「はぁい」

散り散りになっていく様を見ながら小さくため息をついた時椅子がこちらに向いた。

「ごめんね?うるさくて」

若しかするとうるさくてため息をついたと思われたのかもしれない。
であればかなり感じが悪かっただろう。

「……ちが…その、楽しそう、だったから…………羨ましくなっただけよ」

「確かにみんな面白いよね」

会話、してる
彼と……

「ずっと聞きたかったこと聞いても?」

「な、なに」

小首を傾げこちらを見る彼はシェミには眩しくて思わず目をそらしてしまう。

「僕、君に何かした?」

「…………なんで?」

「いや、僕にだけ怯えてるみたいだし」

“怯えてる”
彼にはそう見えるのか。

「最初は普通だったのに、いつからかよそよそしいし」

そうだった最初は普通だった。
割と話していたし、今ほどよそよそしくもなかった。

「……何も」

彼は何もしていない。

「……そう?ならいいけど」

何も変わってない。

「…………」

変わったのは私。
あのことがあったあと、日常のあなたが優しいことに気がついてしまっただけ。

「…………雪」

「え?」

「似合うと思う」

ほんの少し顔を上げると彼の視線を感じてやはり俯いてしまう。

「私の中のウィルは雪みたいな人よ」

「…………それはどういう意味でーー

「あ、そうだ、ごめんなさい。
私資材の最終チェックに行かないと」

「あ…わかった。行ってらっしゃい」

言った
彼を想う様になってから初めて
自分の思いを

「…………」

あなたのあの言葉は私の心に触れた泡沫のように消えた
積もることなくあなたの言葉は溶けていく

「……これじゃあ電車止まるかな」

外を見ると真白な世界が広がっていてとても美しい。
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